【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
44 / 78
本編

44

しおりを挟む
 俺は少し緊張しながらもリビングに着き、閉まっているリビングの引き戸を開けると……

『パァ~ン』
『パァ~ン』

 俺の方に目がけて、クラッカーが鳴らされる。

「比叡君! ようこそ~~私たちの町へ!」

「比叡さん。今日は沢山楽しんでくださいね!」

 鈴音さんと稀子がそれぞれ声を掛けて来る。
 クラッカーを引いたのもこの2人だ!

「2人ともありがとう!」
「美少女ゲームの主人公の気分だよ!」

「美少女ゲーム?」
「なにそれ?」

 稀子はそう言う。どうやら意味を知らない見たいだ。知らない方が良いけど……

「さぁ、比叡さん。こっちに座って下さい!」

 俺は鈴音さんにダイニングに案内されて、テーブル席の奥の方に座る。ぞくに言う上座かみざの席で有った。
 テーブルの上には唐揚げ・フライドポテト・白身のフライ・ピザ・クリームシチュー・野菜サラダ・おにぎり等がテーブル一杯に並んでいた。

(わぁ、色々な料理が有るな!)
(滅茶苦茶、豪華なわけでは無いけど、何だか温かみの有る料理だな…)

 俺が色々な料理に目を奪われていると、俺の右横に座って居る山本さんが声を掛けてくる。

「比叡君は飲める方かね?」

「えっ!?」
「ああ、お酒の事ですか?」
「まぁ、多少なら…」

「じゃあ、注いでやろう!」

 山本さんはそう言って、瓶ビールを俺の方に差し出す。
 俺はコップを持って、コップにビールが注がれる。注がれたので、注ぎ返そうとすると……

「今日は君が主役だから!」
「注いで貰うのは明日からだ!」

 山本さんは言うが、別の意味で捉えれば『明日からは注げよ』に成る。

「じゃあ、みんな乾杯しようか!」

 山本さんの音頭でみんながコップを持つ。
 俺と山本さん以外はソフトドリンクで有る。

「比叡君の未来を願って、乾杯~!」

「乾杯~~」

 みんなでコップを鳴らし合って、俺の歓迎会が始まる。
 俺はコップに注がれたビールを一気に空ける。

「おぉ~。良い飲みっぷりだね!」
「ほれ、比叡君」

「あっ、すいません…」

 空になったコップにビールが新たに注がれる。ビールも良いが何かを摘まみたい。
 俺は目に付いた唐揚げを箸で掴み食べる。

「あっ、美味しい!」

 思わず口に出してしまう。
 そうすると稀子が言って来る。

「美味しい。比叡君?」
「揚げ物は、私が全部揚げたのだよ!」
「鶏肉の唐揚げは、もちろん手作りだよ!!」

「すごく美味しいよ、稀子ちゃん!」
「幾らでも食べられそう!!」

「どんどん、食べてね♪」
「今日の主役は比叡君なんだから♪」

「ありがとう! 稀子ちゃん!!」

「さて、私は白身のフライ食べよ!」

 稀子はそう言って、白身のフライを食べている。
 みんながみんな、和気あいあいと楽しんでいる。

(何か、子供の時の誕生日会を思い出すな……。あの時も、こんな風に楽しんでいたな)

 俺がそう感慨に浸っていると、鈴音さんが声を掛けて来る。

「はい! 比叡さんどうぞ!!」

 鈴音さんは、クリームシチューの入った器を手渡してくれる。

「稀子さんは揚げ物担当で、私はクリームシチューの担当!」
「温かいうちにどうぞ!」

 そう言われたのなら、早速食べるしか無い!
 スプーンでシチューをすくって口に運ぶ。

「わっ。このシチューすごく美味しい!」
「自分で作るよりも遙かにコクが有って、野菜の旨味と鶏肉の相性がバッチリだ!」
「すごく美味しいです。鈴音さん…」

「比叡さんに喜んで貰えて何よりですわ!」
「デザートに、私と稀子さんの共同作業で作ったプリンも有りますからね♪」

「デザートまで用意して貰って、ありがとうございます」

「比叡さん。今はお礼を言うより、沢山食べて楽しんでください!」
「その方が、私や稀子さんも嬉しいですから!」

 鈴音さんがそう言うと、山本さんも声を掛けてくる。

「僕の担当はおにぎりだから、沢山食べろよ!」
「余ったら、君の明日の朝食に持ち帰れば良い!」
「後、しっかり飲めよ! ビールが飽きたら日本酒やウィスキーも有るからな」

 そう言って、まだ空に成っていないコップにビールが注がれて行く。

「あっ、はい。今日は沢山楽しみます!」

 俺はそう言って、ビールの入ったコップをグッと空ける。

「いや~、良い飲みっぷりだね!」
「意外に酒は強いのかね…?」
「地元の日本酒飲んでみるか。辛口で旨いぞ!」

「じゃあ、少し頂こうかな!」

「孝明さん!」
「歓迎会だからと言って、あまり比叡さんに飲ませちゃ駄目ですよ!」

「孝明……。あんたも飲みすぎては駄目だからね…」

「まぁ、母さんに鈴音。今日は良いじゃないか!」
「比叡君の歓迎祝いだ!」
「これから前途多難な人生が待ち受けているのだから、今日位は好きなだけ飲ませてやらないと!」

 そう言って、俺のコップにはビールから変わって、日本酒が注がれている。

(前途多難か……。まぁ、その通りだよな…)
(今は目の前の道しか見えてない。でも、突き進むしか無い!)

「さぁ、グィッと行け」

 暗い気持ちに成り掛けた所を酒の力で打ち消す!
 日本酒だから、そんな一気には行けないが、飲むと俺好みの日本酒の味がした。

「うん……。美味しいです。すっきり系ですね!」

「おっ、流石だね! 当たりだよ。旨いだろ!」
「ほれ、どんどん飲んで、食べて、楽しめよ!」
「僕はそう言った人間が好きだ!!」

 何か普段の山本さんとは違うような気がする。山本さん酔い掛けて居るのだろうか?
 今日は絶対に飲みすぎに成るのは確定だが、俺のために開いてくれた歓迎会を楽しむ……

 稀子を始め、鈴音さんや山本さん家族。みんなこんなに優しくしてくれる。今までの環境とは大違いだ。
 俺は酔い潰れないほど飲んで、お腹が一杯に成っても、温かい気持ちのこもった料理を食べ続けた。

 ……

 楽しい歓迎会も終わりを迎えて、俺は少しフラつきながらも、みんなにお礼を言って、お土産のおにぎりと唐揚げ等を貰って、自分のアパートに戻るために玄関に向かおうとすると……

「比叡君!」
「お家帰る前にちょっと、お話しよ!!」
「こっち来て!!」

 稀子は俺を引き留める。何か話でも有るのだろうか?
 俺は家に戻る前に稀子と話しをする事と成った。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...