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本編

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 リアム様が唇を塞ぐ。

 たったこれだけの行為で、時が止まったような感覚に陥った。

 ジェイクの時はなかった感覚。これが運命の番の作用なのか。

 甘く蕩けるような熱い口付けで、もう何も考えられない。

「……んっ、……んっ……」

 唇が重なるほどに、αのフェロモンで苦しさから解放されていく。

 どうしようもなく湧き上がる熱が治まっていく。

 キスだけで、『この人が運命の番』だと思い知らされたような気がした。

 リアム様は何も言わず、ただひたすら唇を重ねる行為に集中している。

 リアム様も俺と同じように、気持ちいいと思ってくれているだろうか。

 こんな幸せな気分は初めてなんだ。唇を重ねるという行為で、涙が出そうなほど嬉しくなるなんて。

 強張っていた体が脱力するのに、そう時間は掛からなかった。

 Ωはヒートを起こすと、手当たり次第αを誘う淫乱ではしたない奴だと、前世で先輩に言われて過ごしていた。

 だから襲われても仕方ないと、俺が全て悪いんだと思い込まされていた。

「ごめ……。ごめんなさ……」

「何を謝っている」

 リアム様がキスを止める。

「俺が、発情したから……。誘ったから……」

「マヒロがフェロモンを出してくれたから、探し出せたんだ。謝る必要はない」

「でも……Ωは悪いやつだって……言われて……。周りに迷惑をかけるからって」

 リアム様は俺の言葉に「訳がわからない」と言った。

「なぜΩが悪い? Ωが発情してくれるからαは番を見つけられる。子孫を残せる。Ωあってのαじゃないか。マヒロが私にフェロモンを届けてくれなかったら、私は番を見つけられないまま一生を終える可能性だってあったのだ」
 
「リアム様は素敵な人だから、俺がいなくても大丈夫だよ」

「私は運命の番意外に興味はない。自分の番は他の誰にも決めさせない。私はマヒロと番うと決めたのだ。その為ならどんな手段でも使うよ」

 リアム様の手がシャツのボタンを外していく。

「マヒロ、私は君が好きだ。言っただろう? 一目見ただけで世界が変わったと。あの感覚に確信を持っている。間違いなく、君は私のものになる」

 しっかりと目を見て断言した。その瞳は自信に満ちている。

 ずっと怯えてきた俺のΩの性を必要だと言ってくれたのが、本当に嬉しかった。

「さあ、マヒロも覚悟を決めるんだ。私の番になるという覚悟をね。このシャツを剥ぎ取れば、もう最後まで止まらないよ」

 挑戦的な視線を絡ませる。

 勝手なことを言っているのに、その言葉の一つ一つが俺をリアム様から離れられなくしている。
 過去のしがらみを解き放ち、強ばった心が懐柔されていく。
 運命の番というくさびは、想像以上に二人を強く繋いでいる。

 逃げられない。俺の心は既にリアム様の中に存在している。
 リアム様に愛されたいと、本能が叫んでいる。

 この人はそれを承知で言ってるんだ。

────答えなんて一つしかない。
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