【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
20 / 78
本編

20

しおりを挟む
 いつの間にか、俺はしばらく仕事を休むことになっていた。

 聞けば五日間は休む手続きがされているらしい。そんなに休めば給料に響いてしまう。俺は日当で稼いでいるんだから。

 しかし、そんな話はリアム様には全く通じなかった。

「ならば、直ぐにでも私のところに来るがいい」

 なんて言い出す始末だ。

 思わずため息が漏れる。

「リアム様。元を正せば、リアム様がいなければ俺はヒートを起こさなくても済みますです。そしたら、仕事も休まなくていいんだわよ」

「そんなに仕事が大事かい?」

「仕事しないで、どうやって稼ぐますか?」

「だから、私のところに来ればいいと言っている」

「……話が通じない……」

 ガックリと肩を落とす。

 だいたい俺はこんなだだっ広い豪華な部屋で、丸いテーブルに向かい合わせで座り、ナイフとフォークで摂る朝食なんて性に合わない!

 料理長が焼いてくれるパンに、柑橘系のジャムを塗って齧り付くのが好きだ。

 お給料がもらえた時は、近くのパン屋さんへ行ってフワッフワの白いパンを買う。それとヤギのミルクが相性抜群なんだ。

 それが楽しみで、また次の給料日まで頑張ろうと思える。

 今、目の前に並べられている魚のムニエルに、ポタージュ。ハードな食感のパンにつけるのはオリーブオイル。

 リアム様について行けば、毎日こんな朝食の時間を過ごすのだろう。

(あーーー、無理無理無理。今日だけで降参だ)

 早く自分の狭い部屋に帰りたい。

「あの、これ食べたら帰ってもいいのですかね?」

「ダメだと言ったら?」

「帰るます!!」

 リアム様は俺がどんなに断っても、離さないつもりだ。

 余裕のある笑みも崩さない。

「それに、もうこの部屋を五日間押さえてある」

「はぁぁあああ!? 勝手に決めないでくだされ!! 俺はそんなこと許した記憶もなっ……」

 慌てているのは俺ばりで、リアム様は常に穏やかな佇まいだ。

 こんなエレガンスな俺様男はどこを探しても見つからないだろうな。

「あの……。その目的は……何か……」

「勿論、最終的には番になってくれると期待している。でも、まずは……そうだな。その妙な敬語をやめて、あの従業員とのように親しく喋ってくれるようになれば満足だ」

「んぐっ!」

 人が頑張って喋っているのに。失礼な。敬意を払ってのことだろう。

「食べたら近くのパークに散歩にでも出かけるかい?」

「行かないのですよ。リアム様と俺が一緒にパークにいらっしゃるなんて、周りの視線が怖いでしょう」

「なぜそこまで番を拒む?」

 リアム様は、自分の立場が分かっていないのか?

 周りには選びたい放題、女が集まってくる。リアム様を見て発情する人なんて、俺の他にもいるはずだろう。

 それに……正直、街中の女を敵に回す未来など俺はごめんだ。

 番なんてもういらない。必要ない。あの厨房で、一生皿洗いでもいい。

 それで平和に過ごせるなら。

「……俺は……番なんて、いらない」
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月
BL
 男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。  それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。  ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。  ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。 ★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★ 性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪ 11月27日完結しました✨✨ ありがとうございました☆

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》 歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。   ほのぼのです。よろしくお願いします。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...