18 / 78
本編
18
しおりを挟む
「あなたを探していた」
「リアム様……?」
また、あの時と同じだ。体の奥からマグマのように熱が湧き上がる感じ。
呼吸が荒くて、まともに酸素を吸えない感じ。
血液の流れが急速に早まる感じ。
「お、俺……また……発情……?」
「マヒロ!!」
ジェイクが走り寄る。
「お客さま、申し訳ございません。従業員の体調が優れないようですので、こちらでお引き取り致します」
ジェイクに助けを求めるように手を伸ばす。
他の騎士団員や女性客にも、完璧に俺がΩだとバレてしまった。
もう、こんな遅くにリアム様が来るなんて誰も思っていなかったのだ。
俺も、ジェイクでさえも、気を抜いていた。
「マヒロ、大丈夫?」
「なんで? 今日は、薬……飲んだのに……」
抑制剤が弱かったからか。
それでもこれだけの人数のαの中で過ごして、体に触れてダンスをして……。それでも発情なんてしなかったのに。
「君、この人は私が運ぶ。すぐにホテルの部屋を手配してくれ」
「いや、しかし……」
「早くっ!!」
「っ! ……かしこまりました」
ジェイクがフロントへと案内する。
俺は周りからの不安そうな視線を浴びながら、リアム様に抱かれてパーティー会場を出た。
これから、俺はどうされるんだ?
リアム様は本当に俺を探していたのか? なぜ……。
俺が発情したから? 子供みたいな容姿で浮いていたから?
なんだ……なんでなんだ。
考えようとしても、頭がクラクラして何も考えられない。
今自分のことで分かるのは、ヒートの症状が酷くなっていってるということだけ。
「このまま部屋へ行く」
「承知しました。すぐに部屋の鍵をお持ちします」
ジェイクが素早くルームキーを持ってきた。
「お客さま、申し訳ございませんが、従業員用通路からご移動をお願いいたします。この状態での移動は危険ですので……」
「ああ、むしろ助かる」
ジェイクが他の客に見られないよう配慮してくれたのが嬉しかった。
案内された部屋は、四階の一番奥であった。
部屋に入るなりジェイクは医務室の先生を呼びに走った。
こんな広い部屋で二人きり……。リアム様ともなると、こんな豪華な部屋で泊まるのか。
これが普段の俺なら、開き直って楽しもうとか思うんだろうけど、今はそんな余裕は微塵もない。
「すぐにベッドに寝かせよう」
リアム様の胸に抱かれ、ヒートは益々酷くなっていく。
俺がこんなにヒートに苦しんでいるのに、リアム様は平然としている。
ジェイクでも、αの本能に抗うのにだいぶ苦労していたというのに。
それに……俺だけがΩの本能に抗えなかったみたいじゃないか。
俺のほうがリアム様が好きみたいじゃないか。
リアム様は呼吸の一つも乱れず、奥の寝室のベッドに俺を寝かせた。
「大丈夫か? すぐに医務室の先生が来てくれる。それまで頑張れるかい?」
リアム様は、俺を襲う気もないみたいだ。
じゃあ、なぜそのまま医務室へ運ばなかったんだ。
俺はヒートが治れば帰れるのか。
今度ばかりは客全員の前で発情してしまった。
「俺……。もう……終わりだ……」
「リアム様……?」
また、あの時と同じだ。体の奥からマグマのように熱が湧き上がる感じ。
呼吸が荒くて、まともに酸素を吸えない感じ。
血液の流れが急速に早まる感じ。
「お、俺……また……発情……?」
「マヒロ!!」
ジェイクが走り寄る。
「お客さま、申し訳ございません。従業員の体調が優れないようですので、こちらでお引き取り致します」
ジェイクに助けを求めるように手を伸ばす。
他の騎士団員や女性客にも、完璧に俺がΩだとバレてしまった。
もう、こんな遅くにリアム様が来るなんて誰も思っていなかったのだ。
俺も、ジェイクでさえも、気を抜いていた。
「マヒロ、大丈夫?」
「なんで? 今日は、薬……飲んだのに……」
抑制剤が弱かったからか。
それでもこれだけの人数のαの中で過ごして、体に触れてダンスをして……。それでも発情なんてしなかったのに。
「君、この人は私が運ぶ。すぐにホテルの部屋を手配してくれ」
「いや、しかし……」
「早くっ!!」
「っ! ……かしこまりました」
ジェイクがフロントへと案内する。
俺は周りからの不安そうな視線を浴びながら、リアム様に抱かれてパーティー会場を出た。
これから、俺はどうされるんだ?
リアム様は本当に俺を探していたのか? なぜ……。
俺が発情したから? 子供みたいな容姿で浮いていたから?
なんだ……なんでなんだ。
考えようとしても、頭がクラクラして何も考えられない。
今自分のことで分かるのは、ヒートの症状が酷くなっていってるということだけ。
「このまま部屋へ行く」
「承知しました。すぐに部屋の鍵をお持ちします」
ジェイクが素早くルームキーを持ってきた。
「お客さま、申し訳ございませんが、従業員用通路からご移動をお願いいたします。この状態での移動は危険ですので……」
「ああ、むしろ助かる」
ジェイクが他の客に見られないよう配慮してくれたのが嬉しかった。
案内された部屋は、四階の一番奥であった。
部屋に入るなりジェイクは医務室の先生を呼びに走った。
こんな広い部屋で二人きり……。リアム様ともなると、こんな豪華な部屋で泊まるのか。
これが普段の俺なら、開き直って楽しもうとか思うんだろうけど、今はそんな余裕は微塵もない。
「すぐにベッドに寝かせよう」
リアム様の胸に抱かれ、ヒートは益々酷くなっていく。
俺がこんなにヒートに苦しんでいるのに、リアム様は平然としている。
ジェイクでも、αの本能に抗うのにだいぶ苦労していたというのに。
それに……俺だけがΩの本能に抗えなかったみたいじゃないか。
俺のほうがリアム様が好きみたいじゃないか。
リアム様は呼吸の一つも乱れず、奥の寝室のベッドに俺を寝かせた。
「大丈夫か? すぐに医務室の先生が来てくれる。それまで頑張れるかい?」
リアム様は、俺を襲う気もないみたいだ。
じゃあ、なぜそのまま医務室へ運ばなかったんだ。
俺はヒートが治れば帰れるのか。
今度ばかりは客全員の前で発情してしまった。
「俺……。もう……終わりだ……」
21
お気に入りに追加
1,490
あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです
チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》
歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。
ほのぼのです。よろしくお願いします。
※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる