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本編
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「マヒロ、さっきはありがとう」
パーティー会場へ戻った時には、既にたくさんの来場客で溢れかえっていた。
「やっぱり、リアム様目当ての客だった」
ジェイクも片方の眉を歪め、やっぱりか、という表情になる。
「何から手伝おうか?」
さっさとさっきの女を忘れたいから、がむしゃらに動いてやると意気込む。
そこからはジェイクの指示に従い、空いた皿を回収し、出来上がった料理を運び、騎士団員の取り合いを始めた女性客の喧嘩を止め……。
今ようやく食事の時の従業員があれだけ必死で食べ込んでいたわけが分かった。
(ここは戦場だ!)
それでもジェイクは要領よく、俺にも水分補給ができるよう配慮してくれていた。
「マヒロ、来たよ」
ジェイクが目配せをした視線の先、一目でリアム様だと分かった。
会場に入る前から女性の輪が何重にもできている。
その真ん中から高長身の綺麗な顔をした男性が歩いていた。
「———あれが、リアム様……」
遠目からでも分かる。『容姿端麗』とは、彼のために生まれた言葉ではないだろうか。
広い肩幅は、軍服の上からでも鍛えられているのが分かる。
「仕事帰りに来られたようだ」
ジェイクがヒソヒソ話で教えてくれた。
リアム様の軍服姿は珍しいらしく、今日の女性はさらに熱気に包まれていた。
その人集りに気づいた他の女性客も、リアム様に気付き次第駆け寄る。
バランスよく散らばっていた会場は、その周りだけ人口密度を増していく。
「さあ、これもホール係の仕事なんだ。行こう、マヒロ」
「行こうって何するの?」
「他の騎士団員の人たちに、女性を行き届かせるんだ。途中で帰られれば、この後ホテルを利用してくれないだろう?」
なるほど、この会場で出会った女を誘ってホテルに宿泊してもらう。最初からそれが目的のパーティーなんだな。
「それに、騎士団員はαばかりだから、皆プライドが高いんだ。機嫌を損ねて帰られて、もうこのホテルを利用してくれなくなっても困るだろう?」
ジェイクは隅々まで気を配る、素晴らしい従業員だと感心した。
「お客さま、あちらの女性がお話したいと申されております」
「そうか。まあ……なかなか可愛い娘じゃないか」
「女性からは声をかけるのがお恥ずかしいとのことで、よろしければ私からご紹介いたしましょうか?」
「いいね、そうしてもらおう」
スマートな対応でジェイクは次々とカップルを誕生させていく。
「そうか、全員がリアム様目当てってわけでもないし、近づきたくてもそれができない女もいるんだ」
よしっ! と気合を入れて適当な女性客に声をかけた。
「今日は! よければ騎士団員さんを紹介しようかと思っていますが、どうします?」
女性の目付きが変わった。
……違ったらしい。目の前の女は俺の顔を、呆気に取られた表情で見てきた。
ジェイクと同じようにしたつもりなのに……。何か間違っていただろうか。
女性は俺を睨みつけながら立ち去った。
(そんな睨まなくてもいいじゃん)
気取り直して別の女性客にも声をかけたが、やっぱり同じように俺を睨みつけながら立ち去った。
そんな怖い顔するからモテないんだぞ! と、モテない男からの言葉を送ってやりたくなる。
そして三人目に声をかけようとした直前、ジェイクに首根っこを摘まれ壁際まで連れていかれた。
「マヒロ、やっぱりドリンクを補充してもらってもいいかな?」
……人には向き不向きがあると、経験が教えてくれた。
パーティー会場へ戻った時には、既にたくさんの来場客で溢れかえっていた。
「やっぱり、リアム様目当ての客だった」
ジェイクも片方の眉を歪め、やっぱりか、という表情になる。
「何から手伝おうか?」
さっさとさっきの女を忘れたいから、がむしゃらに動いてやると意気込む。
そこからはジェイクの指示に従い、空いた皿を回収し、出来上がった料理を運び、騎士団員の取り合いを始めた女性客の喧嘩を止め……。
今ようやく食事の時の従業員があれだけ必死で食べ込んでいたわけが分かった。
(ここは戦場だ!)
それでもジェイクは要領よく、俺にも水分補給ができるよう配慮してくれていた。
「マヒロ、来たよ」
ジェイクが目配せをした視線の先、一目でリアム様だと分かった。
会場に入る前から女性の輪が何重にもできている。
その真ん中から高長身の綺麗な顔をした男性が歩いていた。
「———あれが、リアム様……」
遠目からでも分かる。『容姿端麗』とは、彼のために生まれた言葉ではないだろうか。
広い肩幅は、軍服の上からでも鍛えられているのが分かる。
「仕事帰りに来られたようだ」
ジェイクがヒソヒソ話で教えてくれた。
リアム様の軍服姿は珍しいらしく、今日の女性はさらに熱気に包まれていた。
その人集りに気づいた他の女性客も、リアム様に気付き次第駆け寄る。
バランスよく散らばっていた会場は、その周りだけ人口密度を増していく。
「さあ、これもホール係の仕事なんだ。行こう、マヒロ」
「行こうって何するの?」
「他の騎士団員の人たちに、女性を行き届かせるんだ。途中で帰られれば、この後ホテルを利用してくれないだろう?」
なるほど、この会場で出会った女を誘ってホテルに宿泊してもらう。最初からそれが目的のパーティーなんだな。
「それに、騎士団員はαばかりだから、皆プライドが高いんだ。機嫌を損ねて帰られて、もうこのホテルを利用してくれなくなっても困るだろう?」
ジェイクは隅々まで気を配る、素晴らしい従業員だと感心した。
「お客さま、あちらの女性がお話したいと申されております」
「そうか。まあ……なかなか可愛い娘じゃないか」
「女性からは声をかけるのがお恥ずかしいとのことで、よろしければ私からご紹介いたしましょうか?」
「いいね、そうしてもらおう」
スマートな対応でジェイクは次々とカップルを誕生させていく。
「そうか、全員がリアム様目当てってわけでもないし、近づきたくてもそれができない女もいるんだ」
よしっ! と気合を入れて適当な女性客に声をかけた。
「今日は! よければ騎士団員さんを紹介しようかと思っていますが、どうします?」
女性の目付きが変わった。
……違ったらしい。目の前の女は俺の顔を、呆気に取られた表情で見てきた。
ジェイクと同じようにしたつもりなのに……。何か間違っていただろうか。
女性は俺を睨みつけながら立ち去った。
(そんな睨まなくてもいいじゃん)
気取り直して別の女性客にも声をかけたが、やっぱり同じように俺を睨みつけながら立ち去った。
そんな怖い顔するからモテないんだぞ! と、モテない男からの言葉を送ってやりたくなる。
そして三人目に声をかけようとした直前、ジェイクに首根っこを摘まれ壁際まで連れていかれた。
「マヒロ、やっぱりドリンクを補充してもらってもいいかな?」
……人には向き不向きがあると、経験が教えてくれた。
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