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伊央は覚悟を決めていたつもりではあったが、やはりこの時を迎えると緊張する。自分のものよりも太くて硬い雄のそれが隘路に捩じ込まれる。しっかりと解された孔は、叶翔の男根を待ち構えていたように飲み込んでいく。それでもその圧迫感には思わず力んで息を止めてしまうほどだ。
「伊央、大丈夫?」
「だい……丈夫」
叶翔は一回抜くと言ったが、伊央はそうしなくていいと言った。
「でも辛いだろ?」
「やだ、せっかく叶翔が僕の中にいるのに……出てかないで」
「伊央、煽らないでって言ってるんじゃん。それに、体に負担かかったら困る」
「本当に大丈夫だから。奥に欲しくて、体が火照って仕方ないんだ。だから、止めないで」
オメガの本能が、腹の奥にアルファの性を注いで欲しいと疼いて仕方ない。
ヒートの熱を奪って欲しい。目の前のアルファが欲しくて欲しくて堪らない。
伊央は肉胴に力を込め、叶翔の男根を締め付ける。叶翔は「うっ」と小さく唸り、再び腰を揺らし始めた。
「んっ、あっ……這入ってきてる……」
体内に叶翔を感じる。今度こそ、この体に全てを刻み込みたい。大好きな幼馴染から恋人に、そして将来の旦那様。伊央のフェロモンになんとか自我を保っている彼の汗が、今にも尖った顎から弾け飛びそうだ。
「かなと、かなと」
何度も名前を呼び、彼を求める。
「叶翔も、気持ちいい?」
「あぁ、伊央の中、あったかくて気持ちいいよ」
叶翔もそろそろラット状態に入りそうだった。気配が変わってきているのを、お互い感じている。それでもまだ叶翔は慎重に、伊央の体を気遣いながら律動する。
叶翔がオーバーなまでに優しくしてくれたから、伊央はさっきまでの緊張もあっという間に解れ、叶翔を受け入れられた。
「全部、這入ったよ。俺ら、一つになってる」
叶翔が嘆息しながら、腰を押し付ける。最奥にぐいぐいと先端が押し当てられ、伊央は嬉しくて、それだけで白蜜を飛沫させる。
叶翔は伊央が達している間も注挿を止められない。
「待って、今、イッてる……ひゃん……あっ、や……」
「ごめん、気持ち良すぎて……腰止まんない」
「ぁあっ、んんっう、ん……僕も気持ちい……んぁあっっ」
孔の中で叶翔の肉塊が蠕動する度、伊央の先端からは白蜜が迸る。身体のどこにも力が入らず、叶翔にされるがままを受け入れた。
もう絶頂を味わいすぎて、何をされても気持ちいいとしか思えない。
早く叶翔の精液を注いで欲しい。
頸を噛んで欲しい。
叶翔は仰向けになっている伊央を横たわらせ、自分が背後から伊央を抱え込む。片足を持ち上げ、力強く長大なそれを打ちつける。
叶翔はもう頸にだけ意識を注いでいる。海星が付けた噛み痕もすっかり消え、傷ひとつない伊央の首を啄み、鼻先を擦り付け、何度も口付けた。その時が近付いている。叶翔が完全にラット状態に入ったのが伊央にも伝わってくる。
きっと伊央が怖がらないようにと、叶翔が伊央のお腹を圧迫させないようにと、色々と考慮して背後に回ってくれたのだと思った。
伊央自身も突かれながら陶然とし、その瞬間を待つ。
耳元で叶翔が軽く唸ったと思った次の瞬間、強く腰を打ちつけると同時に、頸に強烈な痛みが走った。瞠目とした目の前で星が散るほどの痛みであった。
「っく……ん……」
背中を撓ませ、体は反射的に痛みから逃れようとするが、叶翔はそこからさらに牙を押し込む。気を失いそうになった頃、伊央の奥に注がれた叶翔の白蜜が暖かく腹を暖めてくれた。
(あ、叶翔の……)
叶翔は伊央の頸を噛んだまま、何度か腰を打ち付け、伊央の中に熱を放つ。
吐精が終わった後も、しばらく二人とも繋がったまま動けなかった。
そして、まだ離れたくないという一心で、叶翔は再び腰を揺らし始める。孔の中から叶翔の白濁とオメガの液が撹拌され、結合部から流れ出て、ぐちゅぐちゅと泡立ちながら卑猥な音を鳴らす。
背後から伸びた手は伊央の乳首を転がし、もう片方の手で屹立を扱かれた。
頸を噛まれた痛みで意識が混濁していた伊央だが、性感帯の全てを同時に責められ、再び淫蕩する。何度でも求められたい。いくらでも伊央の中に吐精して欲しい。叶翔が満足するまで。
これまでの発情期は初日で殆ど終わっていたのに、叶翔のフェロモンに当てられているのか伊央の発情期は一週間続き、その間、叶翔に抱かれ続けた。
以前叶翔に「伊央のオメガ性が弱いなんて嘘だろう」と言われたのを思い出す。
きっとそれは叶翔のアルファ性の強さに、伊央のオメガ性が引き出されているのだと思った。
これまでのもどかしい日々を取り返すように体を重ね、二人の願いはようやく叶えられた。
伊央の頸には叶翔の噛み痕がくっきりと刻み込まれでいる。そして身体の至る所に叶翔が吸った鬱血の痕までついていた。
「———春休みでよかった」
「伊央、感想それ??」
叶翔は嘆いて頭を抱える。そして伊央をキス責めにした。
「幸せだっていうまでやめねぇ!!」
「んっ!! 幸せだよ。くすぐったいから、叶翔!!」
「じゃあ、俺が好きっていっぱい言って」
「好き好き。叶翔が大好きだよ」
「笑いながら言うなんて、伊央も余裕だな」
「それは、叶翔が……」
いつまでも終わらないキスに、ついに伊央から叶翔の顔を両手で挟み、思いきり唇に吸い付いた。
「叶翔だけが好きだから」
「———はい」
その後の二人は順調に愛を育み、伊央は第一子である男の子を出産した。
小さな体で力強く泣くその子を見て、みんなで歓喜に泣いた。
伊央は叶翔の家に完全に引っ越し、叶翔の母は本当に仕事を辞め、学校のある叶翔の代わりに育児を手伝ってくれている。
そして、予定通り一年遅れで高校を卒業した伊央のお腹には、また新しい命を宿していた。
———完———
「伊央、大丈夫?」
「だい……丈夫」
叶翔は一回抜くと言ったが、伊央はそうしなくていいと言った。
「でも辛いだろ?」
「やだ、せっかく叶翔が僕の中にいるのに……出てかないで」
「伊央、煽らないでって言ってるんじゃん。それに、体に負担かかったら困る」
「本当に大丈夫だから。奥に欲しくて、体が火照って仕方ないんだ。だから、止めないで」
オメガの本能が、腹の奥にアルファの性を注いで欲しいと疼いて仕方ない。
ヒートの熱を奪って欲しい。目の前のアルファが欲しくて欲しくて堪らない。
伊央は肉胴に力を込め、叶翔の男根を締め付ける。叶翔は「うっ」と小さく唸り、再び腰を揺らし始めた。
「んっ、あっ……這入ってきてる……」
体内に叶翔を感じる。今度こそ、この体に全てを刻み込みたい。大好きな幼馴染から恋人に、そして将来の旦那様。伊央のフェロモンになんとか自我を保っている彼の汗が、今にも尖った顎から弾け飛びそうだ。
「かなと、かなと」
何度も名前を呼び、彼を求める。
「叶翔も、気持ちいい?」
「あぁ、伊央の中、あったかくて気持ちいいよ」
叶翔もそろそろラット状態に入りそうだった。気配が変わってきているのを、お互い感じている。それでもまだ叶翔は慎重に、伊央の体を気遣いながら律動する。
叶翔がオーバーなまでに優しくしてくれたから、伊央はさっきまでの緊張もあっという間に解れ、叶翔を受け入れられた。
「全部、這入ったよ。俺ら、一つになってる」
叶翔が嘆息しながら、腰を押し付ける。最奥にぐいぐいと先端が押し当てられ、伊央は嬉しくて、それだけで白蜜を飛沫させる。
叶翔は伊央が達している間も注挿を止められない。
「待って、今、イッてる……ひゃん……あっ、や……」
「ごめん、気持ち良すぎて……腰止まんない」
「ぁあっ、んんっう、ん……僕も気持ちい……んぁあっっ」
孔の中で叶翔の肉塊が蠕動する度、伊央の先端からは白蜜が迸る。身体のどこにも力が入らず、叶翔にされるがままを受け入れた。
もう絶頂を味わいすぎて、何をされても気持ちいいとしか思えない。
早く叶翔の精液を注いで欲しい。
頸を噛んで欲しい。
叶翔は仰向けになっている伊央を横たわらせ、自分が背後から伊央を抱え込む。片足を持ち上げ、力強く長大なそれを打ちつける。
叶翔はもう頸にだけ意識を注いでいる。海星が付けた噛み痕もすっかり消え、傷ひとつない伊央の首を啄み、鼻先を擦り付け、何度も口付けた。その時が近付いている。叶翔が完全にラット状態に入ったのが伊央にも伝わってくる。
きっと伊央が怖がらないようにと、叶翔が伊央のお腹を圧迫させないようにと、色々と考慮して背後に回ってくれたのだと思った。
伊央自身も突かれながら陶然とし、その瞬間を待つ。
耳元で叶翔が軽く唸ったと思った次の瞬間、強く腰を打ちつけると同時に、頸に強烈な痛みが走った。瞠目とした目の前で星が散るほどの痛みであった。
「っく……ん……」
背中を撓ませ、体は反射的に痛みから逃れようとするが、叶翔はそこからさらに牙を押し込む。気を失いそうになった頃、伊央の奥に注がれた叶翔の白蜜が暖かく腹を暖めてくれた。
(あ、叶翔の……)
叶翔は伊央の頸を噛んだまま、何度か腰を打ち付け、伊央の中に熱を放つ。
吐精が終わった後も、しばらく二人とも繋がったまま動けなかった。
そして、まだ離れたくないという一心で、叶翔は再び腰を揺らし始める。孔の中から叶翔の白濁とオメガの液が撹拌され、結合部から流れ出て、ぐちゅぐちゅと泡立ちながら卑猥な音を鳴らす。
背後から伸びた手は伊央の乳首を転がし、もう片方の手で屹立を扱かれた。
頸を噛まれた痛みで意識が混濁していた伊央だが、性感帯の全てを同時に責められ、再び淫蕩する。何度でも求められたい。いくらでも伊央の中に吐精して欲しい。叶翔が満足するまで。
これまでの発情期は初日で殆ど終わっていたのに、叶翔のフェロモンに当てられているのか伊央の発情期は一週間続き、その間、叶翔に抱かれ続けた。
以前叶翔に「伊央のオメガ性が弱いなんて嘘だろう」と言われたのを思い出す。
きっとそれは叶翔のアルファ性の強さに、伊央のオメガ性が引き出されているのだと思った。
これまでのもどかしい日々を取り返すように体を重ね、二人の願いはようやく叶えられた。
伊央の頸には叶翔の噛み痕がくっきりと刻み込まれでいる。そして身体の至る所に叶翔が吸った鬱血の痕までついていた。
「———春休みでよかった」
「伊央、感想それ??」
叶翔は嘆いて頭を抱える。そして伊央をキス責めにした。
「幸せだっていうまでやめねぇ!!」
「んっ!! 幸せだよ。くすぐったいから、叶翔!!」
「じゃあ、俺が好きっていっぱい言って」
「好き好き。叶翔が大好きだよ」
「笑いながら言うなんて、伊央も余裕だな」
「それは、叶翔が……」
いつまでも終わらないキスに、ついに伊央から叶翔の顔を両手で挟み、思いきり唇に吸い付いた。
「叶翔だけが好きだから」
「———はい」
その後の二人は順調に愛を育み、伊央は第一子である男の子を出産した。
小さな体で力強く泣くその子を見て、みんなで歓喜に泣いた。
伊央は叶翔の家に完全に引っ越し、叶翔の母は本当に仕事を辞め、学校のある叶翔の代わりに育児を手伝ってくれている。
そして、予定通り一年遅れで高校を卒業した伊央のお腹には、また新しい命を宿していた。
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