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 叶翔の匂いに包まれた伊央は、ずっと拗らせてきた恋心とオメガの本能を呼び起こしてしまったのだ。

「あ……僕、これ……」
「伊央、フェロモンが……やばい、逃げ……違う、だめだ。ここから出るほうが危険だ。どっか、隠れるところ」
 叶翔が図書室を見渡し、どうにか自分から距離を離せる場所を探すが、倉庫にも鍵がかかっていて入れない。

「くっそ……伊央、なるべく俺から離れろ」
 叶翔は既に伊央のフェロモンにまともに当てられている。
(ここから逃げなければ……)
 そうは思っても、脚に力が入らない。身体の熱はどんどん上がり、呼吸も乱れている。本能がアルファを求めている。

 叶翔は自分の制服のジャケットを脱いで伊央に投げ「それでなるべく体を隠せ」と叫んだ。
 無駄な行為かもしれないが、少しでも匂いを抑えようとしてくれたようだ。
 しかしこんな行為は逆効果である。叶翔の匂いに包まれ、伊央のヒートはさらに加速していく。

「叶翔の匂い……ん、ぅぅ……ふぅ、ん……」
 ジャケットを抱きしめると、思い切り鼻から息を吸い込む。子供の頃から嗅ぎ続けた匂いで、体中を叶翔に満たされていくのを感じる。
 三ヶ月もの間、一切の接触がなかったのも相まって、渇望していた欲求までもが満たされていく。
 心地いい。もっと欲しい。このアルファの精を注いでほしい。
「かなと……かなと……」
 伊央は正気ではいられなくなってしまった。

 孔からはオメガの分泌液が溢れ出し、床まで濡らしている。中心は昂り、脚衣の中で先端が擦れ、刺激される。
 脱ぎたい、触りたい……このジャケットに屹立を擦り付けたら、叶翔から抱かれているような感覚を味わえるのだろうか。

 伊央は本能に支配されていた。
 夢中でベルトを外すと、昂ったそれを叶翔のジャケットに押し当てる。
「うっ……ぁ……かなと……かなとが……ほし……」
「伊央……?」

 叶翔の目の前で自慰を始めた伊央に、少しの間呆然としていた叶翔だったが、自分の名前を呼びながら腰を揺らす伊央を見て、我慢のリミッターは外れてしまった。

「なぁ、伊央。俺が欲しい?」
 ゆらりと立ち上がる。気を抜いた瞬間から、自分を制御するのは不可能になってしまった。
 ゆっくりと伊央に近寄るが、それは狙いをしっかりと定めた肉食獣と同じだ。叶翔の脳は、伊央を自分のものにすることだけしか考えられない。

 それは伊央も同じである。
 叶翔の匂いをもっと感じたい。

 海星とどんなに触れ合っても、匂いを嗅いでも、発情期に助けてもらっても、海星のフェロモンが原因でヒートを起こしたことはなかった。こんなにも身体の奥から疼く欲情は、発情期の時でさえ持たなかった。

「ほし……欲しい……アルファが、欲しい。叶翔が……あっ……!」
 
 叶翔から唇を塞がれた。それだけで伊央は恍惚となり、肩を戦慄かせる。
 重なっている部分から喜悦している自分がいる。叶翔は伊央を強く抱きしめ貪るようなキスを施す。
「んっ、んん……もっと、して。かなと」
「伊央、本当はずっとこうしたかった。抱きたくて、伊央の中に入りたくてたまらなかった」
 叶翔は首を舐めながらシャツのボタンを外していくと、白くキメの細かい肌が露わになった。

 小さな胸の突起は芯を固くして勃ち、先走りの液で下腹まで濡らしている。指で乳首を弾かれると、「あんっ」と甘い声が漏れた。
 叶翔は淫らな伊央の反応にゾクリと戦慄く。
 片方の乳首に吸い付き、舌で弄る。伊央は鋭敏に反応し、背中を弓形に撓ませ、そのことでより叶翔に胸を押し付ける体勢になってしまった。
「あっ、んぁあ……」
 甘い嬌声は止まらない。叶翔はさらに集中的に乳首を責めてきた。もう片方も指で擦られたり摘まれたりすると、体を捩って快楽から逃げることも出来ず、余計に感じてしまう。
 自慰では味わえない快感に、陶酔するのも無理はなかった。
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