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中編

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 リュシアンの蠱惑的な視線に捉えられ、アメジストを彷彿させる双眸が近付いてくる。モブAは前世からキスも何も経験がなかった。肩をガッチリと両手で固められ、逃げ場ない。顔を背けるのも失礼に当たる。大人しくリュシアンからの口付けを受け止めるしかなかった。もとい、モブAは焦り過ぎてこれだけのことを頭の中で考えている内に、既にリュシアンからキスをされている。
 目を見開き、微動だにせず、されるがままを受け入れるしかできない。緊張で乾き切ったモブAの唇を舌で舐めとると、子猫のようにビクリと肩を戦慄かせた。
「本当に初心な反応だね。こういうのは、初めて?」
「はひ……」
 唇が触れただけだというのに、モブAは柔らかい唇に蕩けた眸でリュシアンを見る。
「かわいい」
 リュシアンが囁くと、さっきよりも官能的なキスへと変わる。下唇を吸い、ねっとりと舌を絡ませる。余裕のないモブAは口中にリュシアンの舌がいつの間に差し込まれたのかさえ気付かなかった。
 脳髄まで蕩かされて、口腔で蠢く舌に懐柔されていく。
 リュシアンの気持ちに偽りがないと、期待せずにはいられない。彼からされる何もかもがモブAを恍惚とさせる。
 脚に力が入らなくなってくると、リュシアンはモブAの腰をぐっと支え、自分の腹部に引き寄せた。
「ふふ……、素直に反応してくれているなんて、嬉しいね」
「あ、いや……これは……」
「気持ちよくなってくれているのだろう? 隠さないで」
 優しく責められ、頷くしかなかった。モブAの股間は、リュシアンからのキスでスラックスの中で隆起している。
「でも、こんなに硬くなっていれば苦しいだろう? キスだけで上手にイケるだろうか、試してみても良いかな?」
「キス……だけ?」
「きっと君は感度が最高だから、できるはずだ」
 リュシアンはモブAの屹立した中心を自分の下腹部に擦り付ける。下着の中で反り勃っているそれが布地で摩擦させ、じんわりとした刺激が与えられる。
「あっ、ふぅ……んん……中、擦れて……」
「自分で腰を揺らすなんて、えっちな人だな。君さえ望めばもっと先まで進んでも構わないよ」
「キスの……先……?」
「そう……もっと、気持ちいいことだ。興味ある?」
 呆けた顔でリュシアンを見ると、『どんなモブAでもかわいい』と物語るような優しい表情を向けている。こんな顔をされれば、どんな欲求であろうが了承したくなってしまう。
 頷こうとした寸前、アルチュールが口を挟んだ。
「お兄様、時間切れです。次は僕の番だ!! その使用人を渡してもらいます」
「これからが本番だと言うのに、意地悪な弟を持ったものだ。まぁ、これで勝負がつくと思えば多少の我慢は仕方ない」
 リュシアンはモブAをアルチュールへと引き渡す。
 体がリュシアンから剥がされた時、股間に一瞬の強い摩擦が生じた。リュシアンが分からないようにモブAの昂った中心に爪を立てたのだ。
「んぁぁああっ」
 モブAはその刺激で果ててしまい、その場に崩れ落ちた。
 スラックスの中でトプトプと白濁が溢れ出し、何度か身震いをして更に果てた。それをみていたリュシアンは歓喜に満ちた笑い声を上げた。
「見たかい!? アルチュール。彼は私のキスだけで絶頂に上り詰めた。君にここまでの技があるのかな? 降参するなら今のうちだぞ?」
「そんなこと、するものですか。あぁ、可哀想に。脚衣の中で吐精させられるなんて、気持ち悪いでしょう? 脱ぎましょう」
 アルチュールは全身脱力して動けないモブAのスラックスのファスナーに手をかけ、ベルトを外し、下着ごとズラす。中から白濁の糸を引いてモブAの屹立が露わにした。
「アルチュール、やり過ぎだ。他の使用人も見守る中、節度を守ってくれ給え」
「嫌ですね、お兄様。僕は見せびらかしているのです。僕のキスで、とろとろになっていく彼の姿を……」
 アルチュールは口ではなく、モブAの脚の間に顔を埋め、可愛らしいサイズの屹立に口付ける。
「ぁんっ」
 あられもない声で喘ぎ、背中を撓ませる。
 アルチュールの巧みな口淫。それに気づけば片方の手が背後から孔に伸びる。
「え、いけません。そんなところ……んぁぁ、はっ、んんん……」
 孔をぐりぐりと押しながら徐々に解していき、そのうち指が一本差し込まれた。
 前も後ろも同時に攻められ、何度も腰を痙攣させは耐える。
 しかし勝負はキスのはずなのに、肝心のリュシアンさえも注意も何もしない。モブAは公爵家の兄弟二人から責められているのを他の使用人が見守る中、痴態を晒されている状況だ。
「イく!! イキます!! あ、んぁぁ……はんんんんっっ~~~!!」
 腰をアルチュールの口に押し込み、喉奥で白濁を飛沫させた。
 これではどっちが勝ちなのか全く分からない。

 するとリュシアンはとんでもない提案をしてきた。
「こうなれば、ベッドの上で勝負だ、アルチュール!!」
「望むところです、お兄様」
「何? 何が始まるの?」
 モブAだけ状況が読めない。二人はそんなモブAを気にも留めず、リュシアンに抱え上げられたかと思いきや大広間を出て一番近くの客室へと飛び込んだ。
「ここならベッドもあるし、誰にも邪魔されない」
「そうですね、ではお兄様、今度は僕から失礼します」
 ベッドに寝させると、アルチュールが覆い被さってくる。元々剥ぎ取られていた脚衣に加え上半身までも一糸纏わぬ姿にされる。要するに、三人の中でモブAだけが全裸であった。
「あぁ、愛しの君。名前を聞いても良いだろうか」
「それはそうだ。私もあなたの名前が知りたい」
 二人の顔が迫り、キスされそうな距離にある。
 名前など知らない。転生してからひたすら働いていただけだった。誰からも名前でなど呼ばれたこともない。
 ただのモブ……。
「……モブAです」
「モブエイ!! 変わった名だね。しかし君にぴったりだ」
「お兄様、僕もそう言おうと思っていました。名前を聞いて、しっくり来ましたよ。モブエイ」
 え、違う……と、口には出せない。モブAの名前が『モブエイ』になってしまった。
 どうせなら、もっとカッコイイ名前にすればよかったと激しく後悔した。
 二人はもう名前の話を振らない。さすが上流階級ともなれば、名前など一度聞けば頭に入る。
 それよりも大事なのは、セックスの相性の良さを勝負することなのだ。
 アルチュールは今度こそ唇に口付けると、いきなり激しく舌を絡ませてきた。
「ずっとこうしたかった。俺の全てでモブエイを愛でたいと思っていたのだ」
「んんっ……ふぅ、ん……」
 アルチュールは早く一つに繋がりたいと、孔を解す続きを始める。さっきは指が一本入るのがやっとだったのに、少しすると二本押し込まれていた。
 圧迫感が違う。隘路を広げるように肉胴で蠢くアルチュールの指。
 奥へ奥へと抉るように這入っていくと、突然体が大きく跳ねた。
「んっ!! あっ、何、これ……」
「ここが、モブエイの気持ちいところだね。ほら、もっとトントンしてあげるよ」
「やっ、あぁ!! 変になりゅ……」
 その尿意に似たくすぐったいような、なんとも言えないむず痒い感覚に、屹立の先端から白蜜が滴る。既に二回絶頂に達してる上、こんな奥まで抉られ執拗に責められると、経験のない快感に抗う余地もなく体が勝手に反応してしまう。
「自分で腰を揺らすなんて、可愛らしい人だ」
 アルチュールの指が三本に増える頃には、硬かった肉胴も柔らかく拡げられるほどになっていた。
 香油を垂らし、激しく中を掻き乱される。
「あっんん、らめぇ!! また、イっちゃうよぉぉ~!!」
「今イくのはダメだよ。そろそろ、僕も一緒に気持ちよくなりたいからね」
 アルチュールは自分の指を引き抜くと、ベルトを緩め、脚衣を最低限だけズラすと、長大なそれに浮き出た血管が迸る。凶器とも言える太さに、モブエイは息を呑んだ。
「モブエイ、僕を受け入れてくれ」
 (無理だろう、これは。こんなの挿れられたら死んじゃう)
「待って、怖い……」
 心の声を零してしまい、体も震えている。アルチュールはモブエイを抱きしめ「心配ない」と囁いた。
「優しくする。大切なモブエイだからこそ、僕だって体がこんなふうになるんだ。ほら、触ってみて」
 アルチュールがモブエイの手を自分の股間に当てる。
「わっ!!」
 同じ人のものとは思えないサイズの違いに瞠目とする。本当にこんなのが尻に入るのか、にわかに信じ難い。
 アルチュールは恍惚とした眸でモブエイを見つめる。そうして、自分の先端を孔に宛てがうと、亀頭をずぶりと差し込んだ。ゆるりと腰を振り、入り口付近を刺激される。少しずつ、少しずつ、穿つように這入ってくる男根に、媚肉を擦られ肉環を抉じ開けられる。
「ひっ、ん……んぅぅ……」
 下半身に疼痛を感じながらも、それが甘い痺れとなって体内を迸る。肉胴をきゅうきゅうと締め付け、アルチュールの男根に絡み付き離さなかった。
「っく……全部搾り取られそうだ」
 アルチュールが呻る。両脚を限界まで開かされ、最奥にぐりぐりと亀頭を押し付けれらる。
「んぁぁあっ、も……らめ……イく、イくぅぅ」
 奥まで突っ込まれただけで、相当な快感を覚えされられ啼泣した。もうイカせて終わりにして欲しい。そう思っていると、ベッドサイドから二人の様子を眺めていたリュシアンが立ち上がった。
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