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第四章

43、愛した分だけ

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「マリユス……今は余裕がない。優しくしてあげられない」
 呼吸が荒い。悲しそうな表情なのは不安からか、それとも強引に僕を押し倒したことを申し訳なく思っているのか。
 エリペール自身が悲しんでいる時にまで、気を使わなくていい。求められるままを受け入れることで不安を拭えるのなら、いくらでも応えたいと思う。
「乱暴にされても構いません。僕はエリペール様の全てを受け入れたいのです。それに、今までも気を遣ってくれていましたから」
「最初はマリユスを凄く弱い人だと思っていた。子供ながらに私が守ると誓ったのを覚えている。しかし君が強くなったと感じるほどに、心に隙間風が吹いている気持ちになる。明るくなって笑ってくれるのは嬉しいはずなのに、自立しないでほしいなんて身勝手な欲求を抱いてしまうのだ」

 エリペールに押し倒され、唇を重ねた。
 それを言うのなら、僕だってエリペールは強い人間だと思っていた。
 何事も卒なくこなし、多少のことでは動じない。努力家で完璧主義で機転の効く人。そんなイメージを抱いていた。

 しかし現実には違う部分もある。
 こうして僕に自分の弱さを見せてくれる人。哀愁を隠さない人。
 全力で愛を伝えてくれるのは、出会った頃から変わらない。

 こんなことを伝えても良いのだろうか。僕から話すとどんな反応を見せるだろうか。
 言ってみたいけれど、そっと心の奥にしまっておいた。

「エリペール様が運命の番で良かったと日々感じています。どんな時でも僕を導いてくれる。そんなエリペール様と心を通わせられるのが、一番の幸せなんです」
 顔を寄せ合う。
 唇が触れる瞬間はいつも緊張してしまうが、それからは蕩けるほど全身の力が抜ける。
 温かい体温と体を包み込んでくれる逞しい腕、呼吸ごと奪われるほどの濃厚なキスが、全て自分に向けられていると思うだけで、天に昇るような気持ちになる。

 大きな手が全身を愛撫する。
 孔に触れ、中を拡げる。
 甘く漏れる声を塞ぐように再び口を塞がれ、舌を絡ませる。

「ぁ、ん……そこが……」
「気持ちいい時は教えてくれ」
「全部、気持ちい……」
「マリユス、やはり君は誰の目にも触れさせたくない」
「こんなこと、エリペール様以外とはしたくありません」
「早く中に這入りたい。この中を私のもので埋め尽くして、私の形を覚えるまで繋がっていたい」
「教えてください。僕に、貴方の全てを刻み込んでください」

 エリペールが怒張した男のそれを孔に宛てがう。
 オメガの液でびしょ濡れになっている肉胴は、男根をズブズブと飲み込んでいく。
 浅い所でゆらりと揺れているのがもどかしい。

「マリユス、腰が揺れている」
「ぁ、はぁ、もっと……奥に、欲しくて」
 快楽に貪欲になっている事に、頭の中の片隅にいる冷静な自分が驚いている。
 けれども、一度味わってしまった刺激を忘れることなどできない。
 最奥を突かれたり、吐精をしたり、肩を甘噛みされたり……。
 終わってしまうのが寂しいと思えるほど、繋がっている時間を愛おしく感じる。

 エリペールが注挿を繰り返す度、奥へ奥へと媚肉を擦りながら肉胴を抉るように這入ってくる。
 律動が激しさを増し、込み上げてくる快楽に、男根が最奥を貫くと同時に盛大に白濁を吐瀉した。
 それでもエリペールはまた硬さを保っており、今度は体勢を変え背後から挿する。
「はぁ、ぁぁ……んぁあ……」
 仰向けの時とはまた違う場所に当たり、新鮮な刺激に嬌声を上げる。
 腹の奥が疼き、腰を打ちつけられる度に孔からはオメガの液が迸る。
 淫靡な水音と腰を打ち付ける音が入り混じり、余計に卑猥に感じさせた。

「あ、もう、射精る……んん~~~!!」
 既に絶頂を味わっている体は快楽に鋭敏に反応する。
 少し強く腰を打ちつけられただけで、簡単に達してしまった。
 エリペールは射精寸前で思いとどまったらしく、僕の腰を鷲掴みにして腰が戦慄いている。
 早く中に性液を注いで欲しい。
 そんな風に考えていると、無意識に腰を揺らしていた。エリペールも僕の動きに合わせて直ぐに律動を再開する。
 僕の屹立からはさっき飛ばした白濁が垂れていて、後ろから突かれる度にさらに白濁が飛び散る。

「エリペール様、顔が見たいです」
「私もだ。マリユスの綺麗な顔を見ながら達したいと思っていたところだ」
 エリーエルは僕を仰向けに寝かせ、組み敷いた。
 キスをしながら奥を責める。
 以前一度味わった、尿意に似た感覚を覚えた。また痴態を晒すわけにはいかないが、水分を放出する快感は忘れられない。
「あっ、でる……また漏らしてしまいます」
「それが感じている証拠なのだ。潮吹きをまた見せてくれるのか」
 一度経験すると、癖のようになるだと教えてくれた。

「一緒にイキそうだ」
「僕も、一緒がいいです」
 欲しかったところに絶えず刺激を送られ続け、僕はよがり声を上げながら潮を噴いた。
 エリペールの腹にかかっているが、まるで気にしていない。
 二人してびしょ濡れになってしまい、もう何も出すものはないと思っていたが、エリペールは今が一番感度が上がるのだと言って吐精が終わると間髪入れずに腰を揺らし始めた。
 
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