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第四章
41、視察
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パトリスの姉、イレーヌとの関係性はまだ断定は出来ないが、僕の出生についてと同時進行で調査していけば、もしかするとどこかで交わるのではないか。という流れになった。
「それは、今後イレーヌについて調べて頂けると受け取って構わないでしょうか」
ゴーティエは頷いて返事をする。
「パトリス先生のお姉さまを辿れば、今まで明かされなかった何かには辿り着くだろう。しかし結果がどうであれ、全てを受け入れなければならない」
諭すように続けた。
一先ず、書類に関してはブリューノが持ち帰り、クライン公爵に身元人や金額について相談してくれる運びとなった。
僕はと言えば、一度バルテルシー街まで視察に行ってはどうかという案が出て、向かうこととなった。但し、同行するのがエリペールでは目立ちすぎるから、パトリスと二人で行くのはどうかとゴーティエが提案したところエリペールは猛反対。
周りの説得の末、リリアンを付き添わせるという条件付きで渋々承諾したのであった。
パトリスは何度かバルテルシー街に足を運んでいることから、地理感もあり、少しくらいなら案内できると言った。
「私、遠出するのは初めてです。足を引っ張らなければいいですが……」
突然の任務にリリアンも戸惑いを見せるが、勿論僕も初めてなのでお互い励まし合い、全面的にパトリスに頼る視察となる。
「馬車でいけば遠出というほどではないから、安心して大丈夫だ。とはいえ、丸一日を費やすことにはなると心得ておくように」
授業で喋る口調で言い、後日早速赴いた。
バルテルシー街は噂に聞いた通り、商売が盛んで賑やかな所だった。
人も多く活気を感じる。
街並みも綺麗で都会的な印象を与えた。
ここの領主であるバルテルシー伯爵について話を聞きたいが、社交性とは正反対の場所にいる僕では道ゆく人に声をかけるのも困難だ。
緊張で挙動不審な僕のために、パトリスは街の散策をしようと言って、どんな店が流行っているのか、どんなご飯が流行しているのか、農業が発展していないため別の領地と連携して補っていることなど、この街について調べた事柄を説明してくれる。
さすが学校の教師だけあって、説明は聞いていてとても楽しかった。表情が固かったリリアンも、だんだんと声が出るようになっている。
パトリスと話をしているうちに、どうにか平常心を取り戻した僕たちはご飯を食べようと、適当な店に入った。
「見かけない顔だね」
カウンター席に並んで座ると、目の前にいる店主に声をかけられた。
「この街が栄えていて楽しいと噂を聞いて、遊びに来たんだ」
パトリスが差し支えのない返事をする。
お勧めのメニューを注文すると、気をよくした店主がさらに絡んでくる。
「噂ってのは、そんなに出回るものなのかい?」
「そうですね。特に人が集まる場所は若者は気になるようで、私は学校で教師をしているのだが、今一番話に上がるのがこのバルテルシー街だ」
「ほぅ、教師なんてお偉い方なんだな」店主はじろじろとパトリスを舐め回すように見た。
ある程度、こちらの情報を提示した方が信用されるのだと、馬車の中で話していたが、きっと自身の情報を教えることで、僕には話題を振られないよう配慮してくれているのだろうと思った。
教師だと言えば、生徒を連れてきたと自然に思われる。童顔な僕とリリアンなら、疑われる心配もなさそうだ。
「しかしこうして自らの足を運ぶのは、完全に趣味の範囲です。いろんな領地を回っているんですよ」
他の領地と比べられていると勘違いをした店主は、この街の良さを聞かれてもないのにベラベラと話してくれた。
「領主様はとにかく領民を一番に考えてくださる人でね、ここは商売中心の街だから、それぞれの得意分野で稼げるよう商工会にも掛け合ってくださる。本当に恵まれているよ」
店主の口から領主という言葉が出たのをパトリスは聞き逃さなかった。
「領主と言えば、バルテルシー伯爵……だったかな」
「あぁ、そうさ。温厚だがとても熱心な方だ。……しかしなぁ」
そこで店主は口を濁す。
「何か問題でも?」
「伯爵様には後継者がいないんだよ。こんな話を他所の人に言わない方がいいんだがな。なんでか喋っちまった」
店主は笑って誤魔化す。
パトリスは茶化すでもなく、心配するような口調で詰め寄る。
「後継者……。伯爵様は子供がいたのではなかったかい? 男の子だったろう?」
鎌をかけた。パトリスは僕の存在が領民に知られているのかを聞いたつもりだったが、どうも店主の口ぶりは違っている。
子供がいるのを何故知っているんだと言わんばかりに瞠目とした。
しかし先に教師だと打ち明けていたのが幸いし、伝手があって聞いたのだと自己解決してくれた。
「それが、亡くなったのさ」
店主は声を潜めて言った。
「それは、今後イレーヌについて調べて頂けると受け取って構わないでしょうか」
ゴーティエは頷いて返事をする。
「パトリス先生のお姉さまを辿れば、今まで明かされなかった何かには辿り着くだろう。しかし結果がどうであれ、全てを受け入れなければならない」
諭すように続けた。
一先ず、書類に関してはブリューノが持ち帰り、クライン公爵に身元人や金額について相談してくれる運びとなった。
僕はと言えば、一度バルテルシー街まで視察に行ってはどうかという案が出て、向かうこととなった。但し、同行するのがエリペールでは目立ちすぎるから、パトリスと二人で行くのはどうかとゴーティエが提案したところエリペールは猛反対。
周りの説得の末、リリアンを付き添わせるという条件付きで渋々承諾したのであった。
パトリスは何度かバルテルシー街に足を運んでいることから、地理感もあり、少しくらいなら案内できると言った。
「私、遠出するのは初めてです。足を引っ張らなければいいですが……」
突然の任務にリリアンも戸惑いを見せるが、勿論僕も初めてなのでお互い励まし合い、全面的にパトリスに頼る視察となる。
「馬車でいけば遠出というほどではないから、安心して大丈夫だ。とはいえ、丸一日を費やすことにはなると心得ておくように」
授業で喋る口調で言い、後日早速赴いた。
バルテルシー街は噂に聞いた通り、商売が盛んで賑やかな所だった。
人も多く活気を感じる。
街並みも綺麗で都会的な印象を与えた。
ここの領主であるバルテルシー伯爵について話を聞きたいが、社交性とは正反対の場所にいる僕では道ゆく人に声をかけるのも困難だ。
緊張で挙動不審な僕のために、パトリスは街の散策をしようと言って、どんな店が流行っているのか、どんなご飯が流行しているのか、農業が発展していないため別の領地と連携して補っていることなど、この街について調べた事柄を説明してくれる。
さすが学校の教師だけあって、説明は聞いていてとても楽しかった。表情が固かったリリアンも、だんだんと声が出るようになっている。
パトリスと話をしているうちに、どうにか平常心を取り戻した僕たちはご飯を食べようと、適当な店に入った。
「見かけない顔だね」
カウンター席に並んで座ると、目の前にいる店主に声をかけられた。
「この街が栄えていて楽しいと噂を聞いて、遊びに来たんだ」
パトリスが差し支えのない返事をする。
お勧めのメニューを注文すると、気をよくした店主がさらに絡んでくる。
「噂ってのは、そんなに出回るものなのかい?」
「そうですね。特に人が集まる場所は若者は気になるようで、私は学校で教師をしているのだが、今一番話に上がるのがこのバルテルシー街だ」
「ほぅ、教師なんてお偉い方なんだな」店主はじろじろとパトリスを舐め回すように見た。
ある程度、こちらの情報を提示した方が信用されるのだと、馬車の中で話していたが、きっと自身の情報を教えることで、僕には話題を振られないよう配慮してくれているのだろうと思った。
教師だと言えば、生徒を連れてきたと自然に思われる。童顔な僕とリリアンなら、疑われる心配もなさそうだ。
「しかしこうして自らの足を運ぶのは、完全に趣味の範囲です。いろんな領地を回っているんですよ」
他の領地と比べられていると勘違いをした店主は、この街の良さを聞かれてもないのにベラベラと話してくれた。
「領主様はとにかく領民を一番に考えてくださる人でね、ここは商売中心の街だから、それぞれの得意分野で稼げるよう商工会にも掛け合ってくださる。本当に恵まれているよ」
店主の口から領主という言葉が出たのをパトリスは聞き逃さなかった。
「領主と言えば、バルテルシー伯爵……だったかな」
「あぁ、そうさ。温厚だがとても熱心な方だ。……しかしなぁ」
そこで店主は口を濁す。
「何か問題でも?」
「伯爵様には後継者がいないんだよ。こんな話を他所の人に言わない方がいいんだがな。なんでか喋っちまった」
店主は笑って誤魔化す。
パトリスは茶化すでもなく、心配するような口調で詰め寄る。
「後継者……。伯爵様は子供がいたのではなかったかい? 男の子だったろう?」
鎌をかけた。パトリスは僕の存在が領民に知られているのかを聞いたつもりだったが、どうも店主の口ぶりは違っている。
子供がいるのを何故知っているんだと言わんばかりに瞠目とした。
しかし先に教師だと打ち明けていたのが幸いし、伝手があって聞いたのだと自己解決してくれた。
「それが、亡くなったのさ」
店主は声を潜めて言った。
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