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sideルネ
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ルネの部屋に戻り、寝室に寝かせる。
「とんだ災難だったけど、ディミトリがいてくれて本当に良かった」
「しかし、君がプロミネンスの持ち主とはな」
モアメドとロジェが戻ってくると、露わになった左目を注視する。
「プロミネンスと言われても……何も知りません。この目の所為で沢山の人を苦しめてきました。なのに、貴方たちはこの目を見ても何ともないんですか?」
「プロミネンスは、この国に光を与えてくれる太陽なの。この瞳を見るだけで浄化されると言い伝えられてる」
「しかし、それは神話に近いほどの逸材だ。実際プロミネンスを持つ者と巡り会えるなど、思いもよらない」
モアメドとロジェは口々にその希少さを語る。
「アステール国は周辺の国とは違って閉鎖的でしょう? それは特殊な機能を持つ人たちと、この自然を守るためなの。これまで何度も他所からの侵略に巻き込まれてきた。精霊魔法を利用しようと企む者もいれば、アステール国ごと支配しようと攻撃してきた人もいた。『男しか存在しない国』それを研究材料にしようとする学者が忍び込んだりね」
モアメドがため息を何度も吐きならが言う。確かにこの周辺の国でもここは異様な雰囲気が漂っているのには違いない。
ディミトリも騎士時代には、近寄りたくないような、気になるような……あの深い森の奥に、どんな街が広がっているのだろうと多少なりとも興味は持っていた。
しかしアルチュールがアステール国を狙っていたとは、知らなかった。ジャスティンが死んだと嘘をついていたあたり、きっと独断での行動だ。
その後の取り調べで、アルチュールはジャスティンを陥れるためにこの国を狙ったと白状した。
仲が良かったのは若い頃だけの話で、年下であるジャスティンが出世するのが許せなかった。そしてジャスティンから強い信頼を寄せられていたディミトリのことも妬んでおり、収監されるよう働いたのも、断罪を決定させたのも、陰でアルチュールが動いていたからだった。
では何故、突然アステール国を訪ねてきたのかと言うと、ジャスティンがどうやらディミトリが元気に過ごしているらしいという噂を聞きつけ、クサントン国へ連れ戻し騎士団長にしてはどうかと言い始めたらしかった。
アルチュールはまたしても自分を選ばなかったジャスティンを憎んだ。
それから独自にアステール国のことやルネの情報を集め、今回の計画を企てた。
わざとルネを煽り、闇の精霊を暴走させることでディミトリの命を奪おうという魂胆だった。
もしそれでディミトリが自分の眸の力を使ってしまったとしても、それでルネが死ねばきっとディミトリも自害するのではないか……。そしてルネが生き絶えればアステール国ごと支配できる可能性まで生まれる。
そうなれば騎士団よりも大きな力を手に入れることが出来る。
アルチュールは従騎士の二人を唆し、護衛させた。この二人はアルチュールの計画は何一つ聞かされていなかったと言う。自分の手伝いをすれば出世させてやると言ったそうだ。
アルチュールたちはクサントン国へと送還されることが決まり、ディミトリは一緒に行くと名乗り出る。
モアメドとロジェは反対した。ルネが目を覚ました時に、ディミトリがいないときっと不安定になるからと。
しかしジャスティンが今でもディミトリを気にかけていると知り、話がしたいと懇願した。
自分が牢獄に入れられたのも、断罪を決めたもの、ジャスティンだと思っていた。しかしそれは全て勘違いだった。本質を見抜けなかったことを謝罪したいとディミトリは硬い意志を示す。
モアメドとロジェもそれ以上は反対出来ず「気をつけてね」と見送ってくれる。ルネが目覚めるまでには帰ってくることを条件に。
そしてディミトリは五日後に帰ってきた。
アルチュールは送還されるなり、即断罪が決行された。従騎士たちも軽い処罰が与えられ、ディミトリは念願のジャスティンとの対談が実現したと言う。
「それで、まさか騎士に戻るなんて言わないでしょうね?」
モアメドが詰め寄った。
「自分には殿下がいますから、戻りません。それより、クサントン国の騎士団がこちらの騎士団と友好条約を結びたいと言っていました。クサントン国の騎士団は優秀です。この国がより平和になるでしょう」
「で、国王陛下はなんと?」
「良い方向で検討しているようです」
「あなたはジャスティン騎士団長とまた会えるようになるし、色々と良い方向に話を進めたってわけね」
モアメドは喋りながらもディミトリの眼帯を外す。この国ではむしろ晒しておいた方が良いのだと言う。
プロミネンスをじっくり眺めるモアメドとロジェ。この二人からこんなにも見つめられるのは初めてかもしれない。
「本当に綺麗ね」
「眸の中に太陽が燃えているみたいだ」
「あまり見ないでください」
ディミトリがルネに視線を移し、手を握る。
「殿下、ただいま戻りました」
眠っているルネに声をかけたその時、ルネがディミトリの手を握り返す。
「———ディ……ミ、トリ」
「殿下!?」
「とんだ災難だったけど、ディミトリがいてくれて本当に良かった」
「しかし、君がプロミネンスの持ち主とはな」
モアメドとロジェが戻ってくると、露わになった左目を注視する。
「プロミネンスと言われても……何も知りません。この目の所為で沢山の人を苦しめてきました。なのに、貴方たちはこの目を見ても何ともないんですか?」
「プロミネンスは、この国に光を与えてくれる太陽なの。この瞳を見るだけで浄化されると言い伝えられてる」
「しかし、それは神話に近いほどの逸材だ。実際プロミネンスを持つ者と巡り会えるなど、思いもよらない」
モアメドとロジェは口々にその希少さを語る。
「アステール国は周辺の国とは違って閉鎖的でしょう? それは特殊な機能を持つ人たちと、この自然を守るためなの。これまで何度も他所からの侵略に巻き込まれてきた。精霊魔法を利用しようと企む者もいれば、アステール国ごと支配しようと攻撃してきた人もいた。『男しか存在しない国』それを研究材料にしようとする学者が忍び込んだりね」
モアメドがため息を何度も吐きならが言う。確かにこの周辺の国でもここは異様な雰囲気が漂っているのには違いない。
ディミトリも騎士時代には、近寄りたくないような、気になるような……あの深い森の奥に、どんな街が広がっているのだろうと多少なりとも興味は持っていた。
しかしアルチュールがアステール国を狙っていたとは、知らなかった。ジャスティンが死んだと嘘をついていたあたり、きっと独断での行動だ。
その後の取り調べで、アルチュールはジャスティンを陥れるためにこの国を狙ったと白状した。
仲が良かったのは若い頃だけの話で、年下であるジャスティンが出世するのが許せなかった。そしてジャスティンから強い信頼を寄せられていたディミトリのことも妬んでおり、収監されるよう働いたのも、断罪を決定させたのも、陰でアルチュールが動いていたからだった。
では何故、突然アステール国を訪ねてきたのかと言うと、ジャスティンがどうやらディミトリが元気に過ごしているらしいという噂を聞きつけ、クサントン国へ連れ戻し騎士団長にしてはどうかと言い始めたらしかった。
アルチュールはまたしても自分を選ばなかったジャスティンを憎んだ。
それから独自にアステール国のことやルネの情報を集め、今回の計画を企てた。
わざとルネを煽り、闇の精霊を暴走させることでディミトリの命を奪おうという魂胆だった。
もしそれでディミトリが自分の眸の力を使ってしまったとしても、それでルネが死ねばきっとディミトリも自害するのではないか……。そしてルネが生き絶えればアステール国ごと支配できる可能性まで生まれる。
そうなれば騎士団よりも大きな力を手に入れることが出来る。
アルチュールは従騎士の二人を唆し、護衛させた。この二人はアルチュールの計画は何一つ聞かされていなかったと言う。自分の手伝いをすれば出世させてやると言ったそうだ。
アルチュールたちはクサントン国へと送還されることが決まり、ディミトリは一緒に行くと名乗り出る。
モアメドとロジェは反対した。ルネが目を覚ました時に、ディミトリがいないときっと不安定になるからと。
しかしジャスティンが今でもディミトリを気にかけていると知り、話がしたいと懇願した。
自分が牢獄に入れられたのも、断罪を決めたもの、ジャスティンだと思っていた。しかしそれは全て勘違いだった。本質を見抜けなかったことを謝罪したいとディミトリは硬い意志を示す。
モアメドとロジェもそれ以上は反対出来ず「気をつけてね」と見送ってくれる。ルネが目覚めるまでには帰ってくることを条件に。
そしてディミトリは五日後に帰ってきた。
アルチュールは送還されるなり、即断罪が決行された。従騎士たちも軽い処罰が与えられ、ディミトリは念願のジャスティンとの対談が実現したと言う。
「それで、まさか騎士に戻るなんて言わないでしょうね?」
モアメドが詰め寄った。
「自分には殿下がいますから、戻りません。それより、クサントン国の騎士団がこちらの騎士団と友好条約を結びたいと言っていました。クサントン国の騎士団は優秀です。この国がより平和になるでしょう」
「で、国王陛下はなんと?」
「良い方向で検討しているようです」
「あなたはジャスティン騎士団長とまた会えるようになるし、色々と良い方向に話を進めたってわけね」
モアメドは喋りながらもディミトリの眼帯を外す。この国ではむしろ晒しておいた方が良いのだと言う。
プロミネンスをじっくり眺めるモアメドとロジェ。この二人からこんなにも見つめられるのは初めてかもしれない。
「本当に綺麗ね」
「眸の中に太陽が燃えているみたいだ」
「あまり見ないでください」
ディミトリがルネに視線を移し、手を握る。
「殿下、ただいま戻りました」
眠っているルネに声をかけたその時、ルネがディミトリの手を握り返す。
「———ディ……ミ、トリ」
「殿下!?」
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