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47、新しい家族⑤
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「ルカ、一緒に世界中を旅しよう。見せたい景色が沢山あるんだ」
「ジョバンニと一緒なら、どこでも行きたいです」
「その為に、もっと人間の世界に慣れていかないとな。必ず俺が守るから、安心してくれ。そして、美しいルカをたくさん撮らせて欲しい」
「僕のどこがいいのか分かりません」
「これだけ愛されても、まだ伝わってないかな」
ルカの頬にキスをする。
「このグレーの長い髪も、ルビーとブルーの瞳も、白い肌も。壊れそうなほど華奢な体も。全て……全てが綺麗だ。不安になったら、何回でも言ってやる」
見た目で決めたんじゃないと、慌ててフォローする。内面が表れるもんだからな。なんて、ルカはそんなことは気にしていないが、頷いておいた。
「さて、じゃあ人間としてやるべきことをしよう。まずはシャワーを浴びて、それから食事だ。後は、このシーツを洗わないといけない」
「僕も、ご飯や洗濯を覚えたほうがいいですよね」
「別に気になくていい。俺ができる。ルカは日向ぼっこでもしてればいい」
「それじゃあ、ネーロと一緒じゃないですか」
「でもネーロとじゃエロいことは出来ないからな」
「やっぱり、ジョバンニさんはおじさんです!!」
ジョバンニは笑いながら、その敬語ももうやめろと言ってきた。少しずつ頑張りますと伝えておく。
お腹の中が暖かい。
さっきまで、必死に互いを求め合っていた二人を思い出すと笑ってしまう。
「何が可笑しい?」
「ねぇ、ジョバンニさん。僕が妊娠してたらどうします?」
「家族か……。そうだな。憧れでしかなかったが、それも望んでいいんだよな……」
しみじみと言う。
ジョバンニは幼い頃に両親を亡くし、唯一の肉親である姉は裏組織に殺された。理由は違えど、ルカと同じように孤独な感情を押し殺して生きてきた。
寂しい人生を送ってきたのは、どちらも同じだ。
「俺は嬉しいけどな。でも妊娠してもしなくても、一番大事なのはルカだと覚えていてくれ」
妊娠してもいいと言ってもらえたことが嬉しかった。ルカは、なんとなくその予感がしていた。
三ヶ月後、ようやくこの街に慣れてきたルカは体調不良に悩まされていた。
人間になり、まだ体の作りが不安定なのかもしれない。しかしジョバンニには黙っていた。彼はとても心配性なのだ。
もしルカの体調が悪いとしれば、どんな行動に出るか想像もつかない。
それに、殆ど毎日抱いてもらっているのに、ルカはジョバンニとセックスが出来なくなると考えてしまい、やはり言い出せないと思ってしまう。
NIRVANAではあれだけストレスだった性行だったのに、今ではルカから抱いて欲しいと迫ることも珍しくなくある。ジョバンニはルカの望むまま、抱いてくれた。
「でも、やっぱり体が熱いな」
アクリスに連絡をしたところ、すぐに駆けつけ「尿をかけろと」検査できる棒を渡された。
アクリスはマンションに向かうその間にジョバンニに連絡をしたらしく、息を切らして帰って来たので、ルカは何事かと驚いた。
「結果は出たのか?」
汗を拭いながら、ジョバンニが尋ねる。ルカは何を聞かれているのか全く分からなかった。
アクリスが確認した次の瞬間、興奮した様子で、妊娠検査薬をルカたちに見せた。
「ルカ!! 君のお腹に、赤ちゃんがいる!!」
「えっ!?」
目を瞠り、顔を付き合わせた。
「赤ちゃん……妊娠……?」
「そうだ。本当に愛し合った二人だから、ルカは妊娠した」
アクリスは一番に泣き始めた。
語尾は震え、目頭を押さえる。
「良かった」両手で顔を覆い、何度もそう繰り返す。
ジョバンニとルカはしばし呆然としていたが、時間差で喜びが込み上げてきた。
「家族が出来るのか。俺たちに」
ルカの肩を抱き、体を揺らす。
まだ状況が掴めていないルカは、ジョバンニを見上げた。
「ルカのお腹に、新しい命が宿ったんだ」
そっとお腹に手を添える。
ジョバンニの優しい眼差しに、ルカは大粒の涙を流した。
「産んでいい?」
「当たり前だ。俺たちの子供だ。身体を大切にしてくれよ」
喉の奥がキュッと締まり、唇が震えた。
諦めていた妊娠の夢をジョバンニと叶えられたのが、本当に嬉しかった。
その後は三人でお祝いをして、赤ちゃんの話で盛り上がる。ジョバンニが「女の子なら誰とも結婚させない」なんて言い出すものだから、気が早すぎると笑った。
アクリスがルカを見て微笑んでいる。
「よく、笑うようになったね。ルカ」
「アクリスとジョバンニさんのおかげだよ」
「モレッティにとっては初孫か? いや、そうではないのか」
「初孫だ。たった一人愛したあの人との子は、ルカだけだから」
家族が出来た。
それは不思議な感覚だ。
NIRVANAから出て以来、初めての経験ばかりが続いているが、その全てがルカを強くした。
これからも続く初めての経験だって、愛する人と一緒ならきっと全て幸せだと、ルカはお腹を優しく撫でた。
~完~
「ジョバンニと一緒なら、どこでも行きたいです」
「その為に、もっと人間の世界に慣れていかないとな。必ず俺が守るから、安心してくれ。そして、美しいルカをたくさん撮らせて欲しい」
「僕のどこがいいのか分かりません」
「これだけ愛されても、まだ伝わってないかな」
ルカの頬にキスをする。
「このグレーの長い髪も、ルビーとブルーの瞳も、白い肌も。壊れそうなほど華奢な体も。全て……全てが綺麗だ。不安になったら、何回でも言ってやる」
見た目で決めたんじゃないと、慌ててフォローする。内面が表れるもんだからな。なんて、ルカはそんなことは気にしていないが、頷いておいた。
「さて、じゃあ人間としてやるべきことをしよう。まずはシャワーを浴びて、それから食事だ。後は、このシーツを洗わないといけない」
「僕も、ご飯や洗濯を覚えたほうがいいですよね」
「別に気になくていい。俺ができる。ルカは日向ぼっこでもしてればいい」
「それじゃあ、ネーロと一緒じゃないですか」
「でもネーロとじゃエロいことは出来ないからな」
「やっぱり、ジョバンニさんはおじさんです!!」
ジョバンニは笑いながら、その敬語ももうやめろと言ってきた。少しずつ頑張りますと伝えておく。
お腹の中が暖かい。
さっきまで、必死に互いを求め合っていた二人を思い出すと笑ってしまう。
「何が可笑しい?」
「ねぇ、ジョバンニさん。僕が妊娠してたらどうします?」
「家族か……。そうだな。憧れでしかなかったが、それも望んでいいんだよな……」
しみじみと言う。
ジョバンニは幼い頃に両親を亡くし、唯一の肉親である姉は裏組織に殺された。理由は違えど、ルカと同じように孤独な感情を押し殺して生きてきた。
寂しい人生を送ってきたのは、どちらも同じだ。
「俺は嬉しいけどな。でも妊娠してもしなくても、一番大事なのはルカだと覚えていてくれ」
妊娠してもいいと言ってもらえたことが嬉しかった。ルカは、なんとなくその予感がしていた。
三ヶ月後、ようやくこの街に慣れてきたルカは体調不良に悩まされていた。
人間になり、まだ体の作りが不安定なのかもしれない。しかしジョバンニには黙っていた。彼はとても心配性なのだ。
もしルカの体調が悪いとしれば、どんな行動に出るか想像もつかない。
それに、殆ど毎日抱いてもらっているのに、ルカはジョバンニとセックスが出来なくなると考えてしまい、やはり言い出せないと思ってしまう。
NIRVANAではあれだけストレスだった性行だったのに、今ではルカから抱いて欲しいと迫ることも珍しくなくある。ジョバンニはルカの望むまま、抱いてくれた。
「でも、やっぱり体が熱いな」
アクリスに連絡をしたところ、すぐに駆けつけ「尿をかけろと」検査できる棒を渡された。
アクリスはマンションに向かうその間にジョバンニに連絡をしたらしく、息を切らして帰って来たので、ルカは何事かと驚いた。
「結果は出たのか?」
汗を拭いながら、ジョバンニが尋ねる。ルカは何を聞かれているのか全く分からなかった。
アクリスが確認した次の瞬間、興奮した様子で、妊娠検査薬をルカたちに見せた。
「ルカ!! 君のお腹に、赤ちゃんがいる!!」
「えっ!?」
目を瞠り、顔を付き合わせた。
「赤ちゃん……妊娠……?」
「そうだ。本当に愛し合った二人だから、ルカは妊娠した」
アクリスは一番に泣き始めた。
語尾は震え、目頭を押さえる。
「良かった」両手で顔を覆い、何度もそう繰り返す。
ジョバンニとルカはしばし呆然としていたが、時間差で喜びが込み上げてきた。
「家族が出来るのか。俺たちに」
ルカの肩を抱き、体を揺らす。
まだ状況が掴めていないルカは、ジョバンニを見上げた。
「ルカのお腹に、新しい命が宿ったんだ」
そっとお腹に手を添える。
ジョバンニの優しい眼差しに、ルカは大粒の涙を流した。
「産んでいい?」
「当たり前だ。俺たちの子供だ。身体を大切にしてくれよ」
喉の奥がキュッと締まり、唇が震えた。
諦めていた妊娠の夢をジョバンニと叶えられたのが、本当に嬉しかった。
その後は三人でお祝いをして、赤ちゃんの話で盛り上がる。ジョバンニが「女の子なら誰とも結婚させない」なんて言い出すものだから、気が早すぎると笑った。
アクリスがルカを見て微笑んでいる。
「よく、笑うようになったね。ルカ」
「アクリスとジョバンニさんのおかげだよ」
「モレッティにとっては初孫か? いや、そうではないのか」
「初孫だ。たった一人愛したあの人との子は、ルカだけだから」
家族が出来た。
それは不思議な感覚だ。
NIRVANAから出て以来、初めての経験ばかりが続いているが、その全てがルカを強くした。
これからも続く初めての経験だって、愛する人と一緒ならきっと全て幸せだと、ルカはお腹を優しく撫でた。
~完~
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