【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

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44、新しい家族②

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「ジョバンニさんは、こんな僕で本当にいいんですか?」
「こんな僕……とは?」
「だって、男なのに女の機能も付いてるなんて、吸血族の中も珍しい存在です。ましてや人間になったのに……」
「それは俺が気にしてるんじゃなくて、ルカが気にしてるだけだろう? 俺は今までも、ルカの両性の機能について何か言ったことはないはずだが」
 そう言われて改めて思い返してみると、確かに吸血族の話をしたことはあっても、ルカの妊娠できる体のことを何か言われたことはなかった。NIRVANAで一度も妊娠できなかったと嘆いていたのはルカだった。自分の体が普通じゃないと気にして悩んでいたのもそうだ。ジョバンニはその全てを理解した上で、自分のところに居ろと言ってくれていた。
 吸血族だから。ガットだから。いろんな制約を作って世界を広げようとしなかったのは、いつだってルカ自身なのだ。今まではそれで良かったのかもしれないが、これからはそういうわけにもいかない。人間としての人生は、不安だろうがなんだろうが始まってしまったのだから。

「僕、怖いです。これから人間として、生きていけるのか」
「誰だって、初めては怖いものだ。しかし人生の不安なんて、殆どが杞憂に終わる。いざ暮らしてみれば『こんなものか』と拍子抜けするだろうな」
「でも僕は外の世界もまだ知らない」
「だから俺がいるんじゃないか。どんどん頼ればいい。それに俺だってルカと一緒の時間を過ごしたい。それだけじゃ理由にはならないか?」
「そんなことありませんけど……」
「なら良かった。これだけは忘れないでくれ。俺はもう、ルカのいない世界には戻りたくない。一人の人生が考えられなくなるくらい、ルカと過ごす時間を大切に思っている」
 ジョバンニが強く抱きしめる。ルカからも腕を回した。もう絶対にこの手を離さないと心に誓う。
「ずっとここに、居させてください」
「ああ、そうしてくれ」
「ずっとジョバンニさんと一緒にいたい」
「俺もだよ」
「好き……? これが、好きっていう気持ちなの?」
「その通りだ。ルカ、これが恋だよ」
 唇を重ねた。ゆっくりと顔を離すと再び重ねる。吐き出される息は、二人の存在を示すかのように絡み合う。その行為は互いの感情を昂らせていく。

 けれどもジョバンニは途中でやめてしまった。
「すまない。ルカはさっき目覚めたばかりなのに。体調を気遣えなかった」
 唇が離れてしまい、ルカは寂しい気持ちに襲われた。ジョバンニの唇に、一秒でも長く触れていたい。キスをしている間は、余計なことを考えずにいられた。ただジョバンニにだけ、集中できた。

 ジョバンニはベッドから降りようとしている。目覚めたルカに食事の準備をすると言い出した。食事の心配よりも、今は自分だけのことで頭がいっぱいになって欲しい。ルカがジョバンニに夢中なのと同じように……。

「行かないで。ここにいて」
「ルカ?」
「離れたくない。まだジョバンニさんが足りない……です」
 自らジョバンニを引き寄せる。
「やっと、自分の気持ちを理解できました。もう少し、このまま居させてください」
 ジョバンニが瞠目とした後、目を細めてルカの額に口付けた。
「すまない。ルカには偉そうなことを言っておいて、自分は逃げ腰だった。一回り以上も歳の離れた人を好きになるなんて、自分でも予測してなかった。未だに、戸惑ってるんだ。このまま自分の人生に巻き込んで、ルカが後悔しないか不安だった」
 ジョバンニでも悩むことがあるのかと、妙に関心してしまう。いつだって冷静な判断をしているように見えていた。
「巻き込んでください。もう、ジョバンニさんの世界から出られないように」

 ジョバンニはルカの名前を呼ぶと、仰向けに押し倒した。真上からしっかりとルカの視線を奪っていく。ルカは恍惚な眼差しをジョバンニに送り、今度こそ心のままに求めて欲しいと切願した。
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