【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

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33、芽生えた恋心②

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 最初はリビングで撮影をしていたが、窓際に行ったり、観葉植物と並んだり、少しずつ移動しながら、最終的に寝室へと来ていた。
 ベッドに腰を下ろし、ジョバンニを見る。

 集中しているジョバンニの目力に、不意に気付いたルカはドキリとしてしまった。
 いつもは風景を撮っていると言っていた。
 被写体が人間じゃなくて良かったなんて、考えてしまう。こんな熱い眼差しで見られれば、きっと誰もがジョバンニを好きになってしまう。

 真っ直ぐにルカだけを見ている視線に気づいた途端、ルカは恍惚とした表情になった。
 この視線を独り占めしたい。他の誰のことも見てほしくない。
 今までになかった感情が溢れ出す。

「ルカ」
 レンズ越しに見ていたジョバンニが手を止めた。
 ルカに跨るようにベッドに膝を立てる。
 びっくりして見上げると、撮影時の瞳のままルカに顔を寄せた。

「勃ってる」
 ジョバンニの指が、ルカの中心を撫でた。
「え、あっ……僕……」
 白肌が赤く染まる。自覚がなかった。
 指摘されるまで気付かないなんて、恥ずかしくて仕方ない。
 しかし、両手で隠そうとしても、ジョバンニはそれをさせてくれなかった。
 ルカの手を払い退け、自分の膝を脚の間に挟み入れる。

「待って……ジョバンニ……」
 ジョバンニの膝がルカの屹立したものを押し当てる。
「やっ。はぁ、ん……」
 艶っぽい吐息が漏れてしまい、羞恥心に苛まれた。
 しかしジョバンニはそんなルカに欲情する。

 ルカの長い髪を片方に流し、頬から首筋にかけて親指を滑らせる。
 その手で服の上から愛撫され、華奢な上肢のシルエットを確認するかのように線を伝う。

 柔らかいブラウスのボタンを一つずつ外していくと、その下からさらに白い肌が露わになった。
 肩を滑る生地。ルカは少しも拒否しなかった。

 心拍数が跳ね上がり、落ち着く気配がない。
 裸など、NIRVANAでは毎日晒していたのに、ジョバンニから見られるのは全く感覚が違う。
 それはきっと、ジョバンニから向けられる視線が、クロウやモルセーゴのものとは全く別物だからだろう。

「やはり、綺麗だ」
 ジョバンニはまたカメラを持つと、ルカをフレームに収めていく。
 彼も興奮している。ルカの恍惚とした視線が、彼の劣情を誘っているのかもしれない。

 仰向けに寝かせると、真上からカメラを向けた。
 ジョバンニに腕を伸ばす。
 ルカは、ジョバンニから触れてほしくてたまらなくなっていた。
『自分の意思で行動しろ』そんな風にジョバンニから言われたことがあった。今、それをしてもいいのだろうか。

「ジョバンニ……」
 カメラをすり抜け、頬に手を添える。
 訴えるような上目遣いに、ジョバンニも自然な流れでカメラをベッドに置いた。

「ルカ。これ以上はいけない。撮影を終えよう」
「なんでですか? ジョバンニさんが撮るって言ったんでしょう?」
 やめたら、ジョバンニはベッドから降りてしまう。それだけは阻止したかった。

「あぁ、続きはまた今度な」
 優しく潤んだ瞳で微笑む。
 しかし、今のルカはそんな風に接して欲しいとは思っていない。
「いやです」
 ジョバンニの首に腕を回し、抱きついた。

「僕が穢らわしいからですか? だから、裸を見た途端やめてしまったんですか?」
 NIRVANAで、ルカは毎日抱かれていた。
 この体に、三人の性液が交代で注がれていた。綺麗な体ではないとは、自分が一番理解している。
 ジョバンニはこれまで親切に接してくれていたけれど、これまでのルカを思うと、そういう対象には見られなかったのかもしれない。

 しかしジョバンニは首を横に振った。
「そんなわけないだろう。ルカを穢らわしいなんて思っちゃいない。これ以上続ければ、俺が我慢できなくなるだけだ」
「我慢? その必要がありますか?」
「煽ってるのか?」
 宥めるように言う。
 
「俺は前にも言った通り、美しいものが好きだ。それは作品として……という意味であったが。毎日ルカを見ていて、何度も撮りたいと思っていた。でも、今までは手が出せなかった。撮り始めれば、きっと自分の感情を抑えきれなくなる」
 ルカにはそれがどんな感情なのか想像もつかなかった。
 ジョバンニが何を我慢しているのか。
 自分を裸にしたのなら、このまま性行をするのではないのか。だって、今まではそうだったのだ。種付け役が入室する時、裸で待機していた。

 服を脱ぐとは、ルカにとっては性行を意味している。

 今までジョバンニと体の関係がなかったのは、ジョバンニが服を脱げと言わなかったし、彼から脱がせるような行為もなかったから。ただ、それだけだ。

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