【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

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32、芽生えた恋心①

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 ジョバンニとアクリスのために頑張ろうと気合いを入れたルカだったが、翌朝、いつもは起きている時間になってもジョバンニは眠っていた。
 起こした方がいいのか悩んでしまう。
 あまりに気持ちよさそうに眠る彼を起こすのは、可哀想だと思ってしまった。

 ルカの方が先に目覚めるのは珍しい。久しぶりに寝顔を眺めて過ごそうと、なるべく動かずジョバンニを凝視した。

「そんなに熱い視線を向けられると、寝てられないな」
「起きてたんですか?」
「ルカが起こしたんだろう? 俺に起きてくれって訴えるような眼差しを送ったじゃないか」
「そんなことしてないです! 気持ちよさそうに眠っていたので……眺めていただけです」
「こんなおじさんの寝顔なんか見て、何が楽しいんだ?」
 ジョバンニは眉を八の字に歪ませた。

「だって、いつも起きた時にジョバンニさんは居ないことが多いので。こんな朝は貴重なんです。それにジョバンニさんはおじさんじゃないですよ」
「嬉しいことを言ってくれるね。起きた時に俺がいるのを喜んでくれているのか?」
「一人で迎える朝より余程楽しいです。こんな風に、横になったまま話だってできますし」
「確かに、それもそうだな。今日は仕事も休みだから、もう少しこうしていよう」

 ジョバンニはルカに腕枕をして、そのまま胸に抱いた。
 心地よくて、二度寝してしまいそうになったところで、ルカは愕然とする。
 今日は一人でアニータに会いに行こうと決めていたではないか。これじゃあ、身動きが取れない。

 こんな時に限ってジョバンニが休日。
 仕事柄、休みの日はその時の状況で決まると、以前言っていた。
 なのでルカはその日にならないと、ジョバンニが仕事なのか休みなのかを知ることができなかった。

 ジョバンニが家にいてくれるのは嬉しいが、決意した計画が空回りしてしまい、少なからず落胆してしまう。

(明日こそは……)
 ジョバンニの腕の中で、心地よさと闘いながら決意を固める。

 そのまま二人でもう一眠りした後、ネーロの鳴き声で目を覚ました。
 ジョバンニの寝癖にルカは遠慮なく笑う。
 バツが悪そうに頭を掻きながら、ジョバンニはシャワーを浴びた。
 ブランチを食べた後、ジョバンニからルカの写真を撮らせて欲しいと言われた。

「僕の写真ですか?」
 ここに来た時に使っていたカメラを思い出す。
「あれは恥ずかしいので嫌です」
「そんな風に言うなよ。あんなもの、すぐになれるさ。ここには俺とあんたしか居ないんだし」
「ね、ネーロだっていますよ」
「ほぅ。やっとネーロも仲間と思ってくれたようだな」
「前から思ってました! 僕と似てるというのは、まだ理解できないですけど」

 ジョバンニは朝から楽しそうに、よく笑っている。
「そっくりじゃないか」と肩を揺らした。
 一見強面の顔立ちだが、笑った時の目尻の皺が、人の良さを示しているように感じられる。

 写真を撮るのは本気らしく、食事の後、ジョバンニはカメラの準備を始めた。
「本当に撮るんですか? アクリスに頼まれたとか?」
「そんなんじゃないさ。俺が撮りたいと思ったから。それ以外に理由なんて必要ないだろう」
 
 手際よく準備を整えると、早速ルカに向けてシャッターを切る。
「わっ。撮るなら、言ってください」
「自然体のルカを撮りたいんだ。楽にしててくれ」
「心の準備がまだ出来ていません」
「あぁ、その慌てた表情もいいな」
「話、聞いてませんね?」

 ジョバンニは気持ちを切り替え、完全にカメラマンモードに入っていた。
 これ以上は何を言っても無駄だと諦めたルカは、緊張も解けないまま、ジョバンニの言われた通りに動くしかなかった。
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