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31、アニータからの脅し④
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真昼間の昼寝時、突然チャイムが鳴る。
たまに宅配便が来るから、一瞬それかと思ったが違った。
「……アニータだ」
ジョバンニの不安が当たってしまった。
あの日、アニータはルカを尾行していたということだ。
『いるんでしょ? 中に入れてくれない?』
先日からは一変、甘えた声を出している。
早朝の街を騒がせた人とは思えない。
玄関ドアの前から後退りをすると、ドアをコンコンと鳴らす。
昼間は殆ど寝て過ごすネーロが、珍しくウロウロと歩き回っている。
尻尾をピンと立て、毛を逆立てていた。
「ネーロも怖がってるんだ」
もしもネーロに何かあれば、ジョバンニが傷つくだろう。
絶対にこのドアを開けるものかとルカは歯を食いしばった。
しかしアニータは一向に帰る気配はない。
定期的にドアをノックしてはルカの名前を呼ぶ。
ジョバンニが留守にしているのを知っていて来ているのだ。ネーロは威嚇するように、ドアに向かって鳴いている。
ルカが初めてここに来た時だって、こんな風に鳴かなかった。
アニータはなんと一時間以上もそこに滞在した。
最後にドアが壊れるほど叩きつけると、下の隙間から手紙を差し込んだ。
「あんたの正体を暴いてやったわ!! 出てこないなら、この情報を世間に晒すからね!!」
ドア越しに叫ぶと、ようやく立ち去ったようだ。
聞き耳を立て、エレベーターの音を確認すると、差し込まれた手紙を拾う。
ジョバンニが帰ってくるまで置いておこうか……とも考えたが。
気になって中身を広げた。
「なん……で……」
吐き気を催すほどの内容が書かれていた。
アニータは、ルカとアクリスが親子だということ、そして、吸血族だということも書かれてあった。
吸血族というのは組織からの情報だろうが、ルカとアクリスの関係性までこの短期間で調べ上げたと言うのか。
ルカに関しては名前しか知らないはず。
あんな一瞬の自己紹介だけで、ここまでの情報を集められる。
裏組織がアニータを頼るわけが分かった気がした。
しかし問題はそこだけではない。手紙の最後にはこう記されていた。
『あなたがジョバンニから去れば、この情報は表には出さないであげてもいいわ。猶予は三日。それまでにこのマンションを出ないようなら、私が仕入れた情報を全て公に晒すわよ』
アニータはジョバンニとアクリスが繋がっていることを知っている。
吸血族が生の人間の血を飲んでいたのは、アクリスの先代までの話だ。
それなのに、アニータの手紙では、吸血族は今でも人間を拐って吸血していると記されている。
そして、有名な科学者であるシモーネ・モレッティが実は吸血族で、裏でジョバンニと繋がっている。そんな記事も同封されていた。
「こんなの、事実無根じゃないか」
テーブルの上に手紙を投げつける。
アニータはジョバンニに社会的体裁を。そしてアクリスの本性を暴露し、吸血族を追い詰め絶滅させるのが目的のようであった。
組織から、多額の金が流れているとジョバンニが言っていた。
きっと、ルカがこのマンションから出て行ったところで、今度はこの記事をジョバンニに突きつけ自分の思い通りに操る魂胆なのだろう。
「そんなこと、させてたまるか」
ルカの中で血が騒いだ。
アクリスが吸血族だと世間に知られてしまえば、もう大学での研究はできなくなるだろう。アクリスは吸血族がより生きやすくなるための薬や、血液成分の研究を続けている。
人間と共存するために、もっと安全に吸血族がこの街で暮らせるようになるためのものだ。
もしこんなデタラメな記事が世間に広まれば、たくさんの吸血族が亡くなるかもしれない。
NIRVANAには、まだ沢山の子供達が生活しているはずだ。
あの場所が見つかってしまば、本当に吸血族は消滅してしまうかもしれない。
そしてジョバンニもカメラマンとして活動できなくなる。
それは絶対に避けなければならない。
一度投げ捨てた手紙を握りしめた。
(自分がなんとかしなければ)
ルカを助けてくれたアクリスとジョバンニを救いたい。そのためなら、自分はどうなっても構わない。
アニータを追いかけようと立ち上がった。
ニット帽とサングラスをかけ、マンションを出ようとしたその時、ジョバンニが帰ってきてしまう。
アニータからの手紙を、咄嗟にリビングのテーブルの引き出しに捩じ込んだ。
「おい、帽子とサングラスって……まさか外出はするなと言ったよな?」
「これは違うんです。することがないから、着けてみただけで」
苦しすぎる言い訳ではあったが、外出が未遂で終わったため、なんとかジョバンニを宥められた。
アニータがここに来たことを言うべきか悩んだが、今日は言い出せなかった。
ジョバンニやアクリスの仕事の邪魔をしたくない。
アニータと話をするくらいなら、一人で十分だ。
明日ジョバンニが仕事に行った後、アニータに会いに行こうと密かに行動を企てる。
彼女のことだから、きっとルカの動きを監視しているに違いない。
もう、誰かに守られているだけでは駄目なんだ。
たまに宅配便が来るから、一瞬それかと思ったが違った。
「……アニータだ」
ジョバンニの不安が当たってしまった。
あの日、アニータはルカを尾行していたということだ。
『いるんでしょ? 中に入れてくれない?』
先日からは一変、甘えた声を出している。
早朝の街を騒がせた人とは思えない。
玄関ドアの前から後退りをすると、ドアをコンコンと鳴らす。
昼間は殆ど寝て過ごすネーロが、珍しくウロウロと歩き回っている。
尻尾をピンと立て、毛を逆立てていた。
「ネーロも怖がってるんだ」
もしもネーロに何かあれば、ジョバンニが傷つくだろう。
絶対にこのドアを開けるものかとルカは歯を食いしばった。
しかしアニータは一向に帰る気配はない。
定期的にドアをノックしてはルカの名前を呼ぶ。
ジョバンニが留守にしているのを知っていて来ているのだ。ネーロは威嚇するように、ドアに向かって鳴いている。
ルカが初めてここに来た時だって、こんな風に鳴かなかった。
アニータはなんと一時間以上もそこに滞在した。
最後にドアが壊れるほど叩きつけると、下の隙間から手紙を差し込んだ。
「あんたの正体を暴いてやったわ!! 出てこないなら、この情報を世間に晒すからね!!」
ドア越しに叫ぶと、ようやく立ち去ったようだ。
聞き耳を立て、エレベーターの音を確認すると、差し込まれた手紙を拾う。
ジョバンニが帰ってくるまで置いておこうか……とも考えたが。
気になって中身を広げた。
「なん……で……」
吐き気を催すほどの内容が書かれていた。
アニータは、ルカとアクリスが親子だということ、そして、吸血族だということも書かれてあった。
吸血族というのは組織からの情報だろうが、ルカとアクリスの関係性までこの短期間で調べ上げたと言うのか。
ルカに関しては名前しか知らないはず。
あんな一瞬の自己紹介だけで、ここまでの情報を集められる。
裏組織がアニータを頼るわけが分かった気がした。
しかし問題はそこだけではない。手紙の最後にはこう記されていた。
『あなたがジョバンニから去れば、この情報は表には出さないであげてもいいわ。猶予は三日。それまでにこのマンションを出ないようなら、私が仕入れた情報を全て公に晒すわよ』
アニータはジョバンニとアクリスが繋がっていることを知っている。
吸血族が生の人間の血を飲んでいたのは、アクリスの先代までの話だ。
それなのに、アニータの手紙では、吸血族は今でも人間を拐って吸血していると記されている。
そして、有名な科学者であるシモーネ・モレッティが実は吸血族で、裏でジョバンニと繋がっている。そんな記事も同封されていた。
「こんなの、事実無根じゃないか」
テーブルの上に手紙を投げつける。
アニータはジョバンニに社会的体裁を。そしてアクリスの本性を暴露し、吸血族を追い詰め絶滅させるのが目的のようであった。
組織から、多額の金が流れているとジョバンニが言っていた。
きっと、ルカがこのマンションから出て行ったところで、今度はこの記事をジョバンニに突きつけ自分の思い通りに操る魂胆なのだろう。
「そんなこと、させてたまるか」
ルカの中で血が騒いだ。
アクリスが吸血族だと世間に知られてしまえば、もう大学での研究はできなくなるだろう。アクリスは吸血族がより生きやすくなるための薬や、血液成分の研究を続けている。
人間と共存するために、もっと安全に吸血族がこの街で暮らせるようになるためのものだ。
もしこんなデタラメな記事が世間に広まれば、たくさんの吸血族が亡くなるかもしれない。
NIRVANAには、まだ沢山の子供達が生活しているはずだ。
あの場所が見つかってしまば、本当に吸血族は消滅してしまうかもしれない。
そしてジョバンニもカメラマンとして活動できなくなる。
それは絶対に避けなければならない。
一度投げ捨てた手紙を握りしめた。
(自分がなんとかしなければ)
ルカを助けてくれたアクリスとジョバンニを救いたい。そのためなら、自分はどうなっても構わない。
アニータを追いかけようと立ち上がった。
ニット帽とサングラスをかけ、マンションを出ようとしたその時、ジョバンニが帰ってきてしまう。
アニータからの手紙を、咄嗟にリビングのテーブルの引き出しに捩じ込んだ。
「おい、帽子とサングラスって……まさか外出はするなと言ったよな?」
「これは違うんです。することがないから、着けてみただけで」
苦しすぎる言い訳ではあったが、外出が未遂で終わったため、なんとかジョバンニを宥められた。
アニータがここに来たことを言うべきか悩んだが、今日は言い出せなかった。
ジョバンニやアクリスの仕事の邪魔をしたくない。
アニータと話をするくらいなら、一人で十分だ。
明日ジョバンニが仕事に行った後、アニータに会いに行こうと密かに行動を企てる。
彼女のことだから、きっとルカの動きを監視しているに違いない。
もう、誰かに守られているだけでは駄目なんだ。
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