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30、アニータからの脅し③
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「アニータは俺の姉を殺した組織と繋がっている。そして、俺が殺し屋だという情報を掴んでいる可能性がある」
「そんな!! じゃあ、ジョバンニさんに気のある素振りをして、近づいてるって言うんですか?」
「その可能性は高い。きっと裏で多額の金が動いているはずだ。あの女は金で全ての価値を決める。それに……」
その組織は、吸血族とも繋がりを持っていたと言ったのだ。
「どういう……ことですか……」
「今、あんたが飲んでる血液成分のドリンクは、モレッティが開発したものだ。以前は生の人間の血を採取していた」
「もしかして……」
「あぁ、その組織は女を密売していた。あんたら一族から入る金は相当なものだったらしい。しかしモレッティが科学者になったことで体制が大きく変わる」
吸血族は基本的に社会への適応能力が高く、優秀な人材が多い。
アクリスに限らず、人間の世界で活躍する吸血族は少なくない。
アクリスはもっと人間との融合を強化するため、裏組織との関係を断つことを目標とし、血液成分のドリンクを開発することに成功した。
「しかしそれでは組織は面白くない。なんせ今までの大きな収入源がなくなったからな」
「じゃあ、その組織はアクリスも狙っていた?」
「それだけじゃない。吸血族の隠れ家や実態全てを暴こうと動いていた。しかし、刺客が現れた。それが俺だ」
組織は吸血族の実態を暴こうと動いていた。
しかし全く関係のないところから、幹部を次々に殺された。
それは組織にとっても、アクリスにとっても予想だにしない事件だ。
ルカは言葉を失った。
どう応えるのが正解なのか……そんな次元ではなかった。
話の規模が大き過ぎて、ついて行けないと表現するのが正しい。
「アクリスがどうやって俺に辿り着いたのか、俺も探っていた。実際会った時、見覚えのある顔ではあったし、少し喋れば信用できる人かどうかは判断できる。しかし、仲介者に聞いても“フィオーネ”という俺の殺し屋としての名前をどうやって知ったのか、謎めいていた。仲介屋の三人が三人とも、そこまでは分からないと言う」
「それで、ジョバンニさんも個人的にアクリスについて調べた……」
「悪いがそうさせてもらった。共通点があるとすれば、その裏組織だけだからな。でもこの事実に辿り着いた時、なるほど俺に提供するだけの情報を持っているはずだと納得したよ」
アクリスは裏組織が一族の情報を掴もうと動いていると、勘付いていた。
研究を熟しながら監視をしていたところ、突然幹部の存在が消えていると気がつく。
その後も次々と姿を消して行く。決まって組織の上層部の人間ばかりだ。
そこから調査を進めたところ、フィオーネという殺し屋に辿り着いたのだと、ルカを引き取った後、打ち明けてくれたとジョバンニが言った。
「幹部が壊れたことで、裏組織は破滅寸前に追い込まれている。しかし……」
「アニータさん?」
「そうだ。奴らはライターとして悪名高い彼女を誑かした。俺とアクリスが手を組んで組織を潰そうと企んでいると、勘違いしているようだ」
ジョバンニは殺し屋としては完全に単独で行動している。仲間と共謀して行うことはない。
どうやら組織はアクリスが殺し屋である“フィオーネ”を雇っていると考えていて、その情報を集めるためにアニータを寄越した。
しかしルカは、アニータは本当にジョバンニが好きなのでないかと思っている。
ここで一緒に住んでいるという理由だけで、敵対心を剥き出しにした。
本当にただの調査なら、あそこまで目立つ行動に出ただろうか。
「しばらく、一人で出かけるのは控えます」
「その方がいい。今度はもっと注意深く準備をするだろう。もし車にでも乗せられれば大変だ」
頭を抱え、ため息を吐いた。
「ごめんなさい」
「謝らなくていい。ルカが悪いんじゃない」
「でも……」
「自分で変わろうとしたんだろ? アニータがそれを邪魔した。悪いのはアニータだ」
ジョバンニが庇ってくれたのは嬉しかったが、こんなことで気を抜いている場合ではなくなってしまう事件が起きた。
次の日、アニータがマンションまで来たのだ。
それはやはりジョバンニのいない時を狙っての行動だった。
「そんな!! じゃあ、ジョバンニさんに気のある素振りをして、近づいてるって言うんですか?」
「その可能性は高い。きっと裏で多額の金が動いているはずだ。あの女は金で全ての価値を決める。それに……」
その組織は、吸血族とも繋がりを持っていたと言ったのだ。
「どういう……ことですか……」
「今、あんたが飲んでる血液成分のドリンクは、モレッティが開発したものだ。以前は生の人間の血を採取していた」
「もしかして……」
「あぁ、その組織は女を密売していた。あんたら一族から入る金は相当なものだったらしい。しかしモレッティが科学者になったことで体制が大きく変わる」
吸血族は基本的に社会への適応能力が高く、優秀な人材が多い。
アクリスに限らず、人間の世界で活躍する吸血族は少なくない。
アクリスはもっと人間との融合を強化するため、裏組織との関係を断つことを目標とし、血液成分のドリンクを開発することに成功した。
「しかしそれでは組織は面白くない。なんせ今までの大きな収入源がなくなったからな」
「じゃあ、その組織はアクリスも狙っていた?」
「それだけじゃない。吸血族の隠れ家や実態全てを暴こうと動いていた。しかし、刺客が現れた。それが俺だ」
組織は吸血族の実態を暴こうと動いていた。
しかし全く関係のないところから、幹部を次々に殺された。
それは組織にとっても、アクリスにとっても予想だにしない事件だ。
ルカは言葉を失った。
どう応えるのが正解なのか……そんな次元ではなかった。
話の規模が大き過ぎて、ついて行けないと表現するのが正しい。
「アクリスがどうやって俺に辿り着いたのか、俺も探っていた。実際会った時、見覚えのある顔ではあったし、少し喋れば信用できる人かどうかは判断できる。しかし、仲介者に聞いても“フィオーネ”という俺の殺し屋としての名前をどうやって知ったのか、謎めいていた。仲介屋の三人が三人とも、そこまでは分からないと言う」
「それで、ジョバンニさんも個人的にアクリスについて調べた……」
「悪いがそうさせてもらった。共通点があるとすれば、その裏組織だけだからな。でもこの事実に辿り着いた時、なるほど俺に提供するだけの情報を持っているはずだと納得したよ」
アクリスは裏組織が一族の情報を掴もうと動いていると、勘付いていた。
研究を熟しながら監視をしていたところ、突然幹部の存在が消えていると気がつく。
その後も次々と姿を消して行く。決まって組織の上層部の人間ばかりだ。
そこから調査を進めたところ、フィオーネという殺し屋に辿り着いたのだと、ルカを引き取った後、打ち明けてくれたとジョバンニが言った。
「幹部が壊れたことで、裏組織は破滅寸前に追い込まれている。しかし……」
「アニータさん?」
「そうだ。奴らはライターとして悪名高い彼女を誑かした。俺とアクリスが手を組んで組織を潰そうと企んでいると、勘違いしているようだ」
ジョバンニは殺し屋としては完全に単独で行動している。仲間と共謀して行うことはない。
どうやら組織はアクリスが殺し屋である“フィオーネ”を雇っていると考えていて、その情報を集めるためにアニータを寄越した。
しかしルカは、アニータは本当にジョバンニが好きなのでないかと思っている。
ここで一緒に住んでいるという理由だけで、敵対心を剥き出しにした。
本当にただの調査なら、あそこまで目立つ行動に出ただろうか。
「しばらく、一人で出かけるのは控えます」
「その方がいい。今度はもっと注意深く準備をするだろう。もし車にでも乗せられれば大変だ」
頭を抱え、ため息を吐いた。
「ごめんなさい」
「謝らなくていい。ルカが悪いんじゃない」
「でも……」
「自分で変わろうとしたんだろ? アニータがそれを邪魔した。悪いのはアニータだ」
ジョバンニが庇ってくれたのは嬉しかったが、こんなことで気を抜いている場合ではなくなってしまう事件が起きた。
次の日、アニータがマンションまで来たのだ。
それはやはりジョバンニのいない時を狙っての行動だった。
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