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24、それぞれの想い①
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ジョバンニは忙しい合間を縫って、ルカを外に連れ出した。
アニータへの苦手意識から、まだ人との関わりは持ちたくないというルカの気持ちを汲んでくれているのか、決まって早朝に短時間だけの外出だった。
「まだ、慣れないか?」
「ジョバンニさんが居れば少しは大丈夫です。でも早く帰りたい」
「ハハッ! 少しは自分の意思を言えるようになったんだな」
正直な気持ちを言って褒められる環境には未だに慣れない。
どうしても、クロウの怒鳴る姿を想像してしまい、身構えてしまう。褒められて嬉しいよりも、安堵する気持ちの方が強い。
外出する度にアニータに会わなくてよかったと思ってしまうのは、ジョバンニには言えないでいる。
仕事仲間だと言っていたし、アニータの人柄も分からないうちから敬遠するのは良くないと、ルカとて分かっている。
でも、なんとなく感じる嫌な予感を無視できないでいるのだ。
アニータに比べれば、ネーロなどかわいいものだ。
なんせジョバンニには擦り寄って行くのに、ルカには近づこうともしない。窓際で毛繕いをしながら優雅に過ごしている。
ルカはこのネーロの立ち振る舞いを気に入っていた。
最初こそ得体の知らない毛むくじゃらだったが、今となってはすっかり心を許している。
ネーロに心を開くきっかけになったのがアニータに対する嫌悪感だったとは、口が裂けても言えない。
ここに来た時より随分過ごしやすい環境となっているのは確かなのだが……。
「ミャーウ」
ネーロが欠伸をしている。ジョバンニがいない時間は殆ど動かない。
それはルカも同じだ。
血液成分のドリンクを飲む以外は、殆どベッドやソファに横たわって過ごす。
ジョバンニがいないと何も出来ないのも、ネーロとルカは良く似ていた。
♦︎♢♦︎
ある日、ジョバンニが珍しく早く息を切らしながらマンションの鍵を開けて飛び込んできた。
ルカは目を見張ってジョバンニを見た。手には雑誌を丸めて持っている。
「ルカ、早く前の話の続きを言いたかったんだ」
「前の、続き?」
初めて外出した後、ジョバンニの現状とアクリスとの関係性を教えてくれた。
その時、初めてアクリスが人間界でも働いていると知った。
「アクリスが載ってる雑誌、やっと見つけたんだ。自分でそのページを開いてみろ」
ソファで座っているルカに手渡す。
医療系のこの雑誌の表紙には、ルカには理解できそうにない難しそうな見出しがたくさん書かれていた。
一枚ずつページを捲っていく。いろんな健康法や、新薬の話。医者のコラムなど、さまざまな記事を辿り、とあるページで手を止めた。
「アクリス…… 」
見間違えるはずはない。目に焼き付いているアクリスそのものだ。
そして、アクリスの隣に記載している名前を見て驚愕した。
「これ……モレッティって書いてある」
「そうだ。アクリスの本当の名前はシモーネ・モレッティ。ルカの本当の父親だ。それを見せたくてね。探すのにこんなに苦労するとは思わなかった」
「アクリスが、僕の父親……?」
初めて聞いた名前に戸惑いを隠せない。
アクリスと呼んだ方が余程親近感を抱く。
ジョバンニから手渡された本に写っているのは確かにアクリスだ。しかし、ルカの知っている彼ではない気がする。
他人のように思えるのは何故なのか……。
ジョバンニはルカの表情を伺いながらも、話を続ける。
「ルカと同じ瞳を持つ者が過去に一人だけいた。それがルカを産んだガットだったそうだ」
ルビー色の瞳を持つものは染色体が他の吸血族とは違うと言うことは、アクリスの研究で明らかになった。
その者が孕むには、条件が必要だった。
『心から想い合った人から抱かれること』
「ルカを産んだガットとアクリスは、当時、恋人同士だった。秘められた恋愛だったが、お互いを想い合っていたからこそ、そのガットは生涯でたった一人だけの子孫を残すことができた。それが、ルカ。あんただ」
あまりに唐突に真実を告げられ、動揺を隠せない。
「アクリスが、僕の父親……」
だから、ずっと優しかったのだろうか。
そういえば、ルカを産んだガットにそっくりだと、アクリスはよく話していた。
目の色も同じで、顔立ちも似ていると。
この伸ばした髪も、アクリスから言われからそうした。
アクリスは自分を通して、亡きガットに想いを馳せていたのかもしれない。
「ルカは愛されて産まれてきた子だ。アクリスは今でもずっとあんたを気にかけてる」
ジョバン二はルカに顔を向け、目を細めた。
アニータへの苦手意識から、まだ人との関わりは持ちたくないというルカの気持ちを汲んでくれているのか、決まって早朝に短時間だけの外出だった。
「まだ、慣れないか?」
「ジョバンニさんが居れば少しは大丈夫です。でも早く帰りたい」
「ハハッ! 少しは自分の意思を言えるようになったんだな」
正直な気持ちを言って褒められる環境には未だに慣れない。
どうしても、クロウの怒鳴る姿を想像してしまい、身構えてしまう。褒められて嬉しいよりも、安堵する気持ちの方が強い。
外出する度にアニータに会わなくてよかったと思ってしまうのは、ジョバンニには言えないでいる。
仕事仲間だと言っていたし、アニータの人柄も分からないうちから敬遠するのは良くないと、ルカとて分かっている。
でも、なんとなく感じる嫌な予感を無視できないでいるのだ。
アニータに比べれば、ネーロなどかわいいものだ。
なんせジョバンニには擦り寄って行くのに、ルカには近づこうともしない。窓際で毛繕いをしながら優雅に過ごしている。
ルカはこのネーロの立ち振る舞いを気に入っていた。
最初こそ得体の知らない毛むくじゃらだったが、今となってはすっかり心を許している。
ネーロに心を開くきっかけになったのがアニータに対する嫌悪感だったとは、口が裂けても言えない。
ここに来た時より随分過ごしやすい環境となっているのは確かなのだが……。
「ミャーウ」
ネーロが欠伸をしている。ジョバンニがいない時間は殆ど動かない。
それはルカも同じだ。
血液成分のドリンクを飲む以外は、殆どベッドやソファに横たわって過ごす。
ジョバンニがいないと何も出来ないのも、ネーロとルカは良く似ていた。
♦︎♢♦︎
ある日、ジョバンニが珍しく早く息を切らしながらマンションの鍵を開けて飛び込んできた。
ルカは目を見張ってジョバンニを見た。手には雑誌を丸めて持っている。
「ルカ、早く前の話の続きを言いたかったんだ」
「前の、続き?」
初めて外出した後、ジョバンニの現状とアクリスとの関係性を教えてくれた。
その時、初めてアクリスが人間界でも働いていると知った。
「アクリスが載ってる雑誌、やっと見つけたんだ。自分でそのページを開いてみろ」
ソファで座っているルカに手渡す。
医療系のこの雑誌の表紙には、ルカには理解できそうにない難しそうな見出しがたくさん書かれていた。
一枚ずつページを捲っていく。いろんな健康法や、新薬の話。医者のコラムなど、さまざまな記事を辿り、とあるページで手を止めた。
「アクリス…… 」
見間違えるはずはない。目に焼き付いているアクリスそのものだ。
そして、アクリスの隣に記載している名前を見て驚愕した。
「これ……モレッティって書いてある」
「そうだ。アクリスの本当の名前はシモーネ・モレッティ。ルカの本当の父親だ。それを見せたくてね。探すのにこんなに苦労するとは思わなかった」
「アクリスが、僕の父親……?」
初めて聞いた名前に戸惑いを隠せない。
アクリスと呼んだ方が余程親近感を抱く。
ジョバンニから手渡された本に写っているのは確かにアクリスだ。しかし、ルカの知っている彼ではない気がする。
他人のように思えるのは何故なのか……。
ジョバンニはルカの表情を伺いながらも、話を続ける。
「ルカと同じ瞳を持つ者が過去に一人だけいた。それがルカを産んだガットだったそうだ」
ルビー色の瞳を持つものは染色体が他の吸血族とは違うと言うことは、アクリスの研究で明らかになった。
その者が孕むには、条件が必要だった。
『心から想い合った人から抱かれること』
「ルカを産んだガットとアクリスは、当時、恋人同士だった。秘められた恋愛だったが、お互いを想い合っていたからこそ、そのガットは生涯でたった一人だけの子孫を残すことができた。それが、ルカ。あんただ」
あまりに唐突に真実を告げられ、動揺を隠せない。
「アクリスが、僕の父親……」
だから、ずっと優しかったのだろうか。
そういえば、ルカを産んだガットにそっくりだと、アクリスはよく話していた。
目の色も同じで、顔立ちも似ていると。
この伸ばした髪も、アクリスから言われからそうした。
アクリスは自分を通して、亡きガットに想いを馳せていたのかもしれない。
「ルカは愛されて産まれてきた子だ。アクリスは今でもずっとあんたを気にかけてる」
ジョバン二はルカに顔を向け、目を細めた。
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