【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

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19、ジョバンニとの暮らし③

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 一方、ルカは結局一睡も眠れないまま朝を迎えた。
 誰かと一緒に寝るなんて経験がないルカは、ジョバンニに包み込まれてどうするのが正解なのかが分からない。

 寝ようと思うほどに目が冴えて困ってしまった。
 いくつか欠伸は出るものの、眠気には繋がらない。
 熟睡しているジョバンニは、まるで殺し屋には見えないと思った。初対面の吸血族にこんなに心を許しても大丈夫なのか……。

 窓の外では薄っすらと空が明るくなっている。
 カーテンを閉め切った寝室に、その光は届かなかない。
 少しでも寝ようと思い、ジョバンニの懐に潜りかけた時、ジョバンニは目を覚ましてしまった。
「先に起きていたのか?」
「あっ、はい……」

 眠れなかったとは言ってはいけない気がして、嘘をつく。
 ジョバンニがルカの顔を覗き込むので、早速バレたかと思いきや、そうではなかった。
「こんなに良く眠れたのはいつぶりだろうか……」
 自分でも信じられないという表情を見せるジョバンニ。
 スッキリした様子で両手を上げて伸びをした。

「今まで、眠れないでいたんですか?」
「そうだな。毎晩魘される。たまに夢なのか現実なのか、分からなくなる時がある」
 うんざりするように両手で顔を撫でた。
 それはきっと、仕事で殺した人が出てきているのだろうとルカは思い、それ以上は深掘りしなかった。
 一瞬、良く眠れたのがルカのお陰だと言われたような気がしたが、きっと偶々眠れたというだけだ。
 それよりも、自分の欠伸がバレないように意識する。

 ジョバンニは仕事だと言って早々に出かけたので、ルカはその間に眠ることにした。
 ネーロも窓際で日向ぼっこをしている。穏やかな時間が過ぎていく。

 NIRVANAにアクリスからもらったラジオを置いたままだと気付き、少し寂しくなった。
 今日、ジョバンニが帰ってきたら、この部屋でもラジオが聴けるのか尋ねてみようと思った。

 もう種付けの性行をしなくていいなんて、まだ信じられない。
 いつも通りの朝なら、すでに今日の担当は誰かと考え、ストレスで胃を痛める。それが日課だった。
 もう、ルカの所にはクロウもアクリスも来ない。
 セックスとは言えないセックスをしなくていい人生。なんて贅沢なんだと歓喜した。

 こうして好きなだけ横になっていられるのだって、NIRVANAではあり得ない。
 枕を抱きしめるとジョバンニの香りがした。
 夜に抱きしめられていたのを思い出すと、途端に恥ずかしくなる。

 見ず知らずの自分を受け入れてくれた理由を聞いてもいいのだろうか。
 お金だけで得体の知れない吸血族を匿うなど、普通なら理解だけでも苦しむはずだ。

 ジョバンニはルカをいつまでこの部屋に置いてくれるのだろうか。
 生活の邪魔になっていないのか。恋人が来るときだってあるだろう。
 何より、殺し屋を生業としている人に、ルカを世話することなんてできっこない。

「はぁぁぁぁぁ」
 嫌な方向ばかりに考えて盛大に息を吐く。
 このままでは絶望的な未来にしかならない。
 アクリスに命を救ってもらったからには、なるべく生きていたいが、それも例えばジョバンニの気が変わって「殺す」と言われれば終わる。

「あぁ、またネガティブに考えちゃった」
 思いきりジョバンニの香りを吸い込む。すでにジョバンニに会いたい。
 NIRVANAにいる時は早く一人になりたいと願っていたが、気持ちがこんなにも変わるなんて自分でも驚きだ。

 きっとジョバンニが優しくしてくれたからだ。
 クロウとモルセーゴからは暴力的な接し方しかされていなかったから、これがジョバンニではなく他の誰かでも、同じように思っただろう。
 自分はなんとも都合のいいやつだと自虐的に思った。
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