【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

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15、本当の名前④

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「まさか、この街に吸血族が混じっているなんて考えたこともなかった。そんなのはただのお伽噺だと思っていたんだがな。どうやら、本当なんだな」
 ルカはこくりと頷いた。
 しかし、自分がガットである以外の情報はなにも知らない。

 通常、吸血族は一般の人間と同じように過ごしている。出生届も人間として提出されている。

 男性ホルモンだけでは凶暴化する恐れがあるため、吸血は女性の血液のみ必要なのだそうだ。
 ただ直接首に噛み付いたところで、その人が死ぬわけではない。
 噛む際に特殊な分泌液が注入され、一定時間の意識障害の末、噛まれた記憶を失うだけだ。
 ジョバンニに教わって初めて知った内容もあった。

「しかし……」と、ジョバンニは続けた。
「ルカは特殊な吸血族のようだな」
「両性の機能を持っていることですか?」
「その中でも特に変わっているらしい。その瞳……」
 ジョバンニはグイッと顔を近づけた。
 ビックリして背を反らしたために、座ったばかりのソファーから落ちそうになる。
 ジョバンニは「すまない」と言って元の姿勢に戻った。

「瞳について、アクリスからなにも聞いていないのかい?」
「他のガットと違うとは教えてもらいました。ガットは生まれつき、ブルーとイエローの瞳をしているって」
「でもルカは、ブルーとルビーのように赤い瞳をしている。アクリスは、毒が効かなかったのは、この瞳が関係していると考えているようだ」
「そう、なんですか……?」
 ジョバンニは足元へ寄ってきたネーロを抱え、膝へ置く。
 背中を撫でながら話を続けた。

「細胞の突然変異。両性の機能だけでなく、元々毒に耐性を持っていたのではないかと。それで、毒を大量に食べても体が吸収せず、吸血の際に分泌される成分と毒が混成された。あんたが殺したっていう奴は、噛まれたことで自分が飲ませた毒に犯され灰になった。仲間から、脅かされていたそうだよ。出生率が悪く、ルカを妊娠させられなければ解雇すると」
「モルセーゴが……」

 急に苛立ちを露わにし始めた経緯を知り、言葉を失う。
 執拗にルカの担当になっていた理由にも納得した。
 あのままNIRVANAにいれば、ずっとモルセーゴに抱かれていたということだったのか。考えただけで吐き気を催す。
 殺して良かったとは思っていないが、やはりNIRVANAから離れられたことは、今のところ幸運だったと感じた。
 
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