【完結】子孫を残せない無能の吸血鬼は助けてくれた殺し屋に恋をする

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
15 / 47

15、本当の名前④

しおりを挟む
「まさか、この街に吸血族が混じっているなんて考えたこともなかった。そんなのはただのお伽噺だと思っていたんだがな。どうやら、本当なんだな」
 ルカはこくりと頷いた。
 しかし、自分がガットである以外の情報はなにも知らない。

 通常、吸血族は一般の人間と同じように過ごしている。出生届も人間として提出されている。

 男性ホルモンだけでは凶暴化する恐れがあるため、吸血は女性の血液のみ必要なのだそうだ。
 ただ直接首に噛み付いたところで、その人が死ぬわけではない。
 噛む際に特殊な分泌液が注入され、一定時間の意識障害の末、噛まれた記憶を失うだけだ。
 ジョバンニに教わって初めて知った内容もあった。

「しかし……」と、ジョバンニは続けた。
「ルカは特殊な吸血族のようだな」
「両性の機能を持っていることですか?」
「その中でも特に変わっているらしい。その瞳……」
 ジョバンニはグイッと顔を近づけた。
 ビックリして背を反らしたために、座ったばかりのソファーから落ちそうになる。
 ジョバンニは「すまない」と言って元の姿勢に戻った。

「瞳について、アクリスからなにも聞いていないのかい?」
「他のガットと違うとは教えてもらいました。ガットは生まれつき、ブルーとイエローの瞳をしているって」
「でもルカは、ブルーとルビーのように赤い瞳をしている。アクリスは、毒が効かなかったのは、この瞳が関係していると考えているようだ」
「そう、なんですか……?」
 ジョバンニは足元へ寄ってきたネーロを抱え、膝へ置く。
 背中を撫でながら話を続けた。

「細胞の突然変異。両性の機能だけでなく、元々毒に耐性を持っていたのではないかと。それで、毒を大量に食べても体が吸収せず、吸血の際に分泌される成分と毒が混成された。あんたが殺したっていう奴は、噛まれたことで自分が飲ませた毒に犯され灰になった。仲間から、脅かされていたそうだよ。出生率が悪く、ルカを妊娠させられなければ解雇すると」
「モルセーゴが……」

 急に苛立ちを露わにし始めた経緯を知り、言葉を失う。
 執拗にルカの担当になっていた理由にも納得した。
 あのままNIRVANAにいれば、ずっとモルセーゴに抱かれていたということだったのか。考えただけで吐き気を催す。
 殺して良かったとは思っていないが、やはりNIRVANAから離れられたことは、今のところ幸運だったと感じた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...