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12、本当の名前①
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声を押し殺して一頻り泣いた。
あんなに優しかったアクリスも、所詮はクロウ達の仲間なのだと突きつけられたようなものだ。
落ち着かない時間だけが過ぎて行く。
目を覚ましてから、どのくらいの時間こうして運ばれているのだろうか。
もう、NIRVANAには戻れないほどの距離を進んでいるには違いない。
袋に入れられ転がされたまま揺れる車体に、体のあちこちをぶつけて痛かった。
後何分、何時間これが続くのか……。
小さく唸り声を上げながら、自分の終末の覚悟を決める。
アクリスが自分を処分しようとした。その事実だけで、この命を断つ十分な決意に繋がる。
優しい表情を思い出さないように意識するが、それは無理だった。
いつだってアクリスは微笑んでくれていた。優しい顔しか知らない。
それが全部嘘だったなんて……。目尻から頬へと伝う涙を拭うこともできない。
ようやく車が停まった頃に、自分の一生は終わる。
それでいい。本望だ。そう自分に言い聞かせた。
だが、ここで計算違いが起きた。
運転している人が車を降りてトランクを開けた。
瞬時に動かないよう細心の注意を払う。
何やら誰かと話し込んでいるようだった。聞き耳を立てても、ハッキリと聞き取れない。
だが、一人の声はアクリスのようだと思った。
薬を飲ませた後、ガットNo.一〇三を運んだのはアクリスだった。
仕方ないとは思いつつ、やはり現実を突き付けられるのはショックが大きい。アクリスだけは他の二人とは違うと思いたかった。
(泣くな。喚くな。どうせもう、終わりなのだから。これで未練もないだろう)
アクリスともう一人は長い時間話し込んでいた。
袋の外でガタンと何かを取り出す。固い素材の何かだ。それをそのまま渡したのだろう。
そして遂に、アクリスの顔を見ることなくガットNo.一〇三は袋に入れられたままの状態で、誰とも分からない人の手に渡った。
今度はその人の車のトランクにどさりと放り込まれた。まるで人の扱いではなかった。
それでも声を出してはいけない。気を失っているフリを続ける。
逃げ出そうとも思わなかった。流されるまま。それだけだ。
車はまたしても数時間走り続け、たどり着いたのは、なんとも五月蝿い場所だった。
トランクを開けると、その人は袋の口を広げる。
急に光が徐に差して眩しさに目を細めた。
目の前には見知らぬ男が覗き込んでいる。ダークブラウンのウェーブかかった長い髪を後ろで束ねた、彫りの深いブルーの瞳と目が合う。
「起きていたのか」
その男は聞こえるか、聞こえないかくらいの声で呟いた。
恐怖で何も返せない。かといって、視線も逸せない。
自分の心臓の音が体内で大きく響き渡っている。呼吸すら、まともに出来ないでいた。
あんなに優しかったアクリスも、所詮はクロウ達の仲間なのだと突きつけられたようなものだ。
落ち着かない時間だけが過ぎて行く。
目を覚ましてから、どのくらいの時間こうして運ばれているのだろうか。
もう、NIRVANAには戻れないほどの距離を進んでいるには違いない。
袋に入れられ転がされたまま揺れる車体に、体のあちこちをぶつけて痛かった。
後何分、何時間これが続くのか……。
小さく唸り声を上げながら、自分の終末の覚悟を決める。
アクリスが自分を処分しようとした。その事実だけで、この命を断つ十分な決意に繋がる。
優しい表情を思い出さないように意識するが、それは無理だった。
いつだってアクリスは微笑んでくれていた。優しい顔しか知らない。
それが全部嘘だったなんて……。目尻から頬へと伝う涙を拭うこともできない。
ようやく車が停まった頃に、自分の一生は終わる。
それでいい。本望だ。そう自分に言い聞かせた。
だが、ここで計算違いが起きた。
運転している人が車を降りてトランクを開けた。
瞬時に動かないよう細心の注意を払う。
何やら誰かと話し込んでいるようだった。聞き耳を立てても、ハッキリと聞き取れない。
だが、一人の声はアクリスのようだと思った。
薬を飲ませた後、ガットNo.一〇三を運んだのはアクリスだった。
仕方ないとは思いつつ、やはり現実を突き付けられるのはショックが大きい。アクリスだけは他の二人とは違うと思いたかった。
(泣くな。喚くな。どうせもう、終わりなのだから。これで未練もないだろう)
アクリスともう一人は長い時間話し込んでいた。
袋の外でガタンと何かを取り出す。固い素材の何かだ。それをそのまま渡したのだろう。
そして遂に、アクリスの顔を見ることなくガットNo.一〇三は袋に入れられたままの状態で、誰とも分からない人の手に渡った。
今度はその人の車のトランクにどさりと放り込まれた。まるで人の扱いではなかった。
それでも声を出してはいけない。気を失っているフリを続ける。
逃げ出そうとも思わなかった。流されるまま。それだけだ。
車はまたしても数時間走り続け、たどり着いたのは、なんとも五月蝿い場所だった。
トランクを開けると、その人は袋の口を広げる。
急に光が徐に差して眩しさに目を細めた。
目の前には見知らぬ男が覗き込んでいる。ダークブラウンのウェーブかかった長い髪を後ろで束ねた、彫りの深いブルーの瞳と目が合う。
「起きていたのか」
その男は聞こえるか、聞こえないかくらいの声で呟いた。
恐怖で何も返せない。かといって、視線も逸せない。
自分の心臓の音が体内で大きく響き渡っている。呼吸すら、まともに出来ないでいた。
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