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3、吸血族の製造機②
しおりを挟むこの集落には男しか存在ない。
正確にいうと、男しか生まれない【吸血族】の生息地だ。
その中に、妊娠する機能を持って生まれる者がいる。それがガットと呼ばれる者達だ。
昔から種族を絶やさぬよう、この機能を持つ者は重宝された。
とはいえ、大切に扱われているわけではない。卵を産んではまたすぐに種付けをされ、また産む。
妊娠から出産までにおおよそ二週間。出産後三日目からはまた種付けの性交が再開される。それを繰り返すだけの人生。
それでも吸血族の子孫を残せるのは、この特異体質の者のみ。現在何人いるのかは、クロウ達意外は誰にも知られていない。
ガット達は、種族のために命を捧げるとても大切な存在なのだと言い聞かされて育つ。
ガットも生まれた時に名前を付けられるが、自身の本名は教えられない。誰も彼らを、一吸血族として扱ってはくれない。
あくまで子孫を残すためだけの、製造機のような存在でしかないからだ。
ガットを管理している責任者がクロウ、アクリス、モルセーゴ。勿論、この三人も本名ではなく、身分を隠すためのコードネームである。
種付け役の男が何人いるのかも、ガットは知る由もない。自分の担当をしている三人の中から、日替わりで種付けをされる日々。
ガットNo.一〇三は、十六歳の時、初めてその行為を経験した。一番最初の相手もクロウであった。痛くて怖くて仕方なかった。
何かの理由で叩かれたのを今でも覚えている。そんなだから、No.一〇三は最初からクロウに怯えて過ごしている。
性交はガットが妊娠するまで続けられる。かれこれ七年になろうか———。
二十三歳になっても、何故か未だに一度も妊娠していない。それ故、毎日毎日この中の誰かから抱かれなくてはならなかった。
嫌で嫌で仕方ない日々にも、慣れるしかない。
特にクロウは苛立ちを隠さない。「いつになれば子を産むのか?」と、毎回罵倒する。
そんな時は、ひたすら謝るしか出来ない。
「その瞳を持って生まれたのに」
そう責められられば、言い返す言葉もない。妊娠しない原因など、自分でさえ分からない。
クロウは「一度孕めば、何度でも孕めるようになるだろう」と、機嫌の良い時だけ励ましてくれたが、その行為自体はなんとも利己的なものだった。ガットを意思のないロボットのように扱う。性行の冷酷さは三人の中で随一と言っても過言ではない。
「うぅ、気持ち悪い……」
No.一〇三は、クロウがいなくなった自室のベッドの上で悶えていた。さっき吐精されたクロウの精液が、孔の中に溜まっている。早く掻き出したい。しかし一時間もの間、このまま過ごさなければいけない。クロウの言うことは絶対だ。もし直ぐに栓を抜いたとバレてしまえば、その後の処罰は想像もつかない。
No.一〇三は言われた通り一時間経つのを待ち、ようやく不快から解放された。こんなので妊娠する確率が上がるのだろうか。ただの嫌がらせのようにしか思えない。
そしてクロウは、その後のことなど興味も示さない。きっと言う通りにしたかどうかの確認さえしない。クロウにとっては、所詮ガットはガットでしかないのだ。
No.一〇三はシャワールームへ行き、隅々まで綺麗に洗い流した。孔の奥まで全て掻き出すと、ようやくクロウから解放された気持ちになれた。
さっき叩かれた頬は、まだジンと痛む。鏡を見ると、口の端は少し切れていた。「はぁ……」ため息を溢し、傷口を舐める。
明日はアクリスかもしれない。何度もそう言い聞かせて自分を励ました。
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