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本編
73【完結】少しだけRー15
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運命の番になり、引き続き神界での生活を送っている僕たち。
めでたく【巫子】から【神子】になったからと言って、生活の何かが変わったわけではない。
変わったことといえば……。
(ムキュ~!! 今日も顔が近い~!!)
輝惺様の部屋で同じ布団で寝るようになったことだ。緊張するからといって、背を向けて寝る訳にも行かず……僕が眠るまで輝惺様は寝ないし……。こんなのが一生続いたとして慣れる日は来ないと思う!!
「今夜はなかなか寝付けぬようだな」
なんて、髪を撫でられると余計に心臓が飛び跳ねて眠れない。
(こんなにもドキドキするなら、発情した方が我を忘れていいかもしれない)
「……もしかすると、僕のお腹には輝惺様のお子がいるかもしれないんですよね」
「そうだな。そればかりは授かるものだから、焦りはしない」
僕の下腹に手を当てながら言うと、顔を覗き込み、そのまま口付けた。
「でも、僕が元気なうちに産まないと、ヨボヨボになってからでは遅いですよ?」
「ははっ! それならば、やはり急がねばならないね。如月は私を誘っているのかな?」
「さっ、誘っているわけで……んっ……!」
喋り終わらないうちにまた唇を塞がれた。
甘い甘い時間は、照れ臭くて恥ずかしくて心地よくて幸せだ。
少しくらいは僕も素直に甘えていいのかなと思い、輝惺様の首に腕を回した。
輝惺様は一瞬ピクリとしたものの、唇を重ねる行為に集中している。お互いの体が密着していて、鼓動が五月蝿いほどに伝わってくる。
「如月、ほら。私だって、こんなにも高鳴っている」
輝惺様は僕の手を取り、自分の胸に当てた。
僕と同じくらいの速さで、心臓が伸縮している。
透き通るような瞳をこちらに向けている。この中に埋もれてしまいたくなるほど澄んだ瞳だ。
輝惺様は僕の体をまた密着させた。
そのままの体勢で尻尾を撫でている。銀狼の尻尾だってフワフワなのに、輝惺様はいつも僕の尻尾がフワフワで気持ちいいと言う。
「尻尾はくすぐったいです」
「それは良い。いずれ気持ち良いに変わるだろう」
夜着の尻尾の穴から指がスルリと入ってくる。根本が弱いのはきっと獣人ならみんな同じだろう。
「んんっ」
そんな風に触られれば、また我慢しなければならなくなる。
「如月、もう我慢はしなくても良いのだぞ?」
「でも……、んっ、ふ、ぅん……」
なんでもお見通しだ。毛繕いをしている時からきっと僕が我慢していたのを気付いていたに違いない。
そして、僕の孔が濡れていることにも既に気付いているのだろう。
「昂ってきているな」
「だって……んぁっ……輝惺様がぁ……。いじわるしないで……」
「如月があまりにも可愛いから仕方ない」
そうしてまた、お互いを求め始めた。たくさん愛してもらって全身が陶酔している。
輝惺様に必要とされて歓喜しているかのように、どこを触られても感じてしまう。でも輝惺様はそんな僕を何度も可愛いと言ってくれた。
その後は朝までぐっすりと眠った。
朝拝は寂しくなってしまった。僕と蘭恋、月詠、凪。みんなで番に……とはならなかったけど、それでも四人も番になれた今年は本当に奇跡だろう。
「地上界でも頑張っているかしら」
蘭恋が思い耽ている。
「朱邑はきっと草原か砂浜を駆け回ってるはずだ」
凪が笑う。
「須凰は、人族と上手くいったのかな?」
僕が言うと、「同じ日に番になってたらすごいね」なんて月詠が言った。
秦羽の名前は誰も出さなかった。いつかは、また話せる時が来ると思うけど……。でも誰も秦羽を恨んだりはしていない。
光の神殿へ帰ると、輝惺様と庭の掃除を始めた。
「神子になっても、特に何かが変わったりしないんですね」
朝拝だって、今まで通り大神殿まで通っているし、基本的な生活も変わりはない。
「生活が変わるのではない。如月は【神の子】となった。それは私、狼神の子を産む体になったと言うことだ」
「なるほど……。もしかして、寿命も狼神様みたいに長くなりますか?」
「それは違う。逆だ」
「逆? 何が、逆なんですか?」
「番が出来て、私に寿命が与えられたのだ」
輝惺様が自分の胸に手を当てる。
「それは……どういう事ですか?」
「狼神は運命の番が見つかるまでは永遠に死なない。しかし番が出来て子を持った時、その時、初めて寿命を与えられるのだ」
「じゃあ! 輝惺様がいつか亡くなってしまうと言うのですか?」
「そうだ。別に今すぐ死ぬわけではない。如月が私の子を産んでくれて、その子が【光の神】を受け継いだその後だ。私が如月と一緒に息絶えたいと願えば、叶うかもしれないが」
「そんな……」
あまりに衝撃的な内容だった。
狼神様が死んでしまう? そんなの、嫌だ。
「悲しいか?」
いつの間にか泣いていた。狼神様が死ぬなんて考えたくもない。
「悲しいです」
自分がいつか死ぬのは仕方がない。そういう人種なのだから。でも何故、永遠に生きられる神様に寿命など与えるのか。
「ずっと、生きていて欲しい……」
でも輝惺様は緩く首を横に振った。
「限りあるものだからこそ、尊いのだ」
白くて細い指が僕の涙を掬う。
「如月、私と共に生きてくれ」
永遠ではない時を、大切にしようと誓いあった。
———完———
最後までお付き合い頂き、大変ありがとうございました。感想など、聞かせていただけると嬉しいです(^^)
この作品は11月から始まるBL小説大賞へ応募しています。皆様の一票を入れてくれると泣いて喜びます( ; ; )♡
また、過去作「ダンスパーティーで騎士様と。」のスピンオフはジェイクのストーリー、そして「転生したら淫紋が刻まれていたΩの俺」の続編は子育て編が始まります。登録がまだの方は是非登録してください⭐︎.**
こちらもBL小説大賞への応募作品となっておりますので、併せて応援してください!
よろしくお願いします。
めでたく【巫子】から【神子】になったからと言って、生活の何かが変わったわけではない。
変わったことといえば……。
(ムキュ~!! 今日も顔が近い~!!)
輝惺様の部屋で同じ布団で寝るようになったことだ。緊張するからといって、背を向けて寝る訳にも行かず……僕が眠るまで輝惺様は寝ないし……。こんなのが一生続いたとして慣れる日は来ないと思う!!
「今夜はなかなか寝付けぬようだな」
なんて、髪を撫でられると余計に心臓が飛び跳ねて眠れない。
(こんなにもドキドキするなら、発情した方が我を忘れていいかもしれない)
「……もしかすると、僕のお腹には輝惺様のお子がいるかもしれないんですよね」
「そうだな。そればかりは授かるものだから、焦りはしない」
僕の下腹に手を当てながら言うと、顔を覗き込み、そのまま口付けた。
「でも、僕が元気なうちに産まないと、ヨボヨボになってからでは遅いですよ?」
「ははっ! それならば、やはり急がねばならないね。如月は私を誘っているのかな?」
「さっ、誘っているわけで……んっ……!」
喋り終わらないうちにまた唇を塞がれた。
甘い甘い時間は、照れ臭くて恥ずかしくて心地よくて幸せだ。
少しくらいは僕も素直に甘えていいのかなと思い、輝惺様の首に腕を回した。
輝惺様は一瞬ピクリとしたものの、唇を重ねる行為に集中している。お互いの体が密着していて、鼓動が五月蝿いほどに伝わってくる。
「如月、ほら。私だって、こんなにも高鳴っている」
輝惺様は僕の手を取り、自分の胸に当てた。
僕と同じくらいの速さで、心臓が伸縮している。
透き通るような瞳をこちらに向けている。この中に埋もれてしまいたくなるほど澄んだ瞳だ。
輝惺様は僕の体をまた密着させた。
そのままの体勢で尻尾を撫でている。銀狼の尻尾だってフワフワなのに、輝惺様はいつも僕の尻尾がフワフワで気持ちいいと言う。
「尻尾はくすぐったいです」
「それは良い。いずれ気持ち良いに変わるだろう」
夜着の尻尾の穴から指がスルリと入ってくる。根本が弱いのはきっと獣人ならみんな同じだろう。
「んんっ」
そんな風に触られれば、また我慢しなければならなくなる。
「如月、もう我慢はしなくても良いのだぞ?」
「でも……、んっ、ふ、ぅん……」
なんでもお見通しだ。毛繕いをしている時からきっと僕が我慢していたのを気付いていたに違いない。
そして、僕の孔が濡れていることにも既に気付いているのだろう。
「昂ってきているな」
「だって……んぁっ……輝惺様がぁ……。いじわるしないで……」
「如月があまりにも可愛いから仕方ない」
そうしてまた、お互いを求め始めた。たくさん愛してもらって全身が陶酔している。
輝惺様に必要とされて歓喜しているかのように、どこを触られても感じてしまう。でも輝惺様はそんな僕を何度も可愛いと言ってくれた。
その後は朝までぐっすりと眠った。
朝拝は寂しくなってしまった。僕と蘭恋、月詠、凪。みんなで番に……とはならなかったけど、それでも四人も番になれた今年は本当に奇跡だろう。
「地上界でも頑張っているかしら」
蘭恋が思い耽ている。
「朱邑はきっと草原か砂浜を駆け回ってるはずだ」
凪が笑う。
「須凰は、人族と上手くいったのかな?」
僕が言うと、「同じ日に番になってたらすごいね」なんて月詠が言った。
秦羽の名前は誰も出さなかった。いつかは、また話せる時が来ると思うけど……。でも誰も秦羽を恨んだりはしていない。
光の神殿へ帰ると、輝惺様と庭の掃除を始めた。
「神子になっても、特に何かが変わったりしないんですね」
朝拝だって、今まで通り大神殿まで通っているし、基本的な生活も変わりはない。
「生活が変わるのではない。如月は【神の子】となった。それは私、狼神の子を産む体になったと言うことだ」
「なるほど……。もしかして、寿命も狼神様みたいに長くなりますか?」
「それは違う。逆だ」
「逆? 何が、逆なんですか?」
「番が出来て、私に寿命が与えられたのだ」
輝惺様が自分の胸に手を当てる。
「それは……どういう事ですか?」
「狼神は運命の番が見つかるまでは永遠に死なない。しかし番が出来て子を持った時、その時、初めて寿命を与えられるのだ」
「じゃあ! 輝惺様がいつか亡くなってしまうと言うのですか?」
「そうだ。別に今すぐ死ぬわけではない。如月が私の子を産んでくれて、その子が【光の神】を受け継いだその後だ。私が如月と一緒に息絶えたいと願えば、叶うかもしれないが」
「そんな……」
あまりに衝撃的な内容だった。
狼神様が死んでしまう? そんなの、嫌だ。
「悲しいか?」
いつの間にか泣いていた。狼神様が死ぬなんて考えたくもない。
「悲しいです」
自分がいつか死ぬのは仕方がない。そういう人種なのだから。でも何故、永遠に生きられる神様に寿命など与えるのか。
「ずっと、生きていて欲しい……」
でも輝惺様は緩く首を横に振った。
「限りあるものだからこそ、尊いのだ」
白くて細い指が僕の涙を掬う。
「如月、私と共に生きてくれ」
永遠ではない時を、大切にしようと誓いあった。
———完———
最後までお付き合い頂き、大変ありがとうございました。感想など、聞かせていただけると嬉しいです(^^)
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また、過去作「ダンスパーティーで騎士様と。」のスピンオフはジェイクのストーリー、そして「転生したら淫紋が刻まれていたΩの俺」の続編は子育て編が始まります。登録がまだの方は是非登録してください⭐︎.**
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とてもほのぼのする展開もあり、胸が締め付けられるような展開もありでとっても楽しかったです!
読ませていただいてありがとうございました〜!
きよひさん♡♡
感想ありがとうございます( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )♡♡
凄く嬉しいです⋆。˚✩
狼神様も巫子達も、それぞれの未来へ前向きに歩んでいることを願っています(*^^*)
難しい世界観だったと思いますが、楽しんで貰えて良かったです✨️✨️
BL大賞( ꗯ ・ᴗ・ )σ ポチッ♪早速して来ました♪♪
応援してます♡♡♡
ウミガメさん🐢🐢✨ありがとうございます⁽(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)✨嬉しいです!!
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