【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎

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本編

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 儀式を三日後に控えた頃から、ソワソワしているのはむしろ狼神様の方だった。

 毎年こうなのかもしれない。

 朝拝に行ってきます。と挨拶をすると、輝惺様がついて行くと言い出したのだ。

 それは流石に恥ずかしいと思い、断ったのだけど、どうしても行くと言う。

 過保護と思われるかもしれないと思いつつ、つっぱねたりも出来ないので一緒に大神殿へと向かった。

 いつまで経っても手を繋ぐのさえ慣れない僕の肩を抱いて歩く。本当にどうしたのだ。甘やかされ過ぎてどんな態度でいればいいのか分からない。

 しかし、大神殿について更に驚きの光景を目の当たりにした。

 なんと、それぞれの狼神様が全員付き添ってきていたのだ。

 こういう仕来しきたりなのか??

 それならばそうと、言ってくれれば良かったのに……。

「如月、おはよう」
「おはよう、凪。今日は全員集合なんだね」

 すると凪はクスクスと笑い始めた。

「毎年こうなんだって。儀式まであと三日しかないから、狼神様が巫子から離れなくなるらしいよ」
「そうなの!? そういう決まり事なのかと思ってた」
「狼神様の優しさかもしれないね。番じゃなければ、もうお別れだもの」

 凪は至って穏やかな口調で喋っている。

 もう誰も番かどうかという話を切り出さなくなった。

 怖いのだ。

 万が一、自分だけが番になれなかったら……とか、色々考えてしまう。

「今年は、亜玖留様まで来てるって狼神様達が驚いてるわよ」

 蘭恋が僕達の会話に入ってきた。そう言えば、殆ど顔を見せない亜玖留様の姿がある。相当、月詠が気に入ったんだ。

 亜玖留様だけは狼神様の中でも浮いた存在なのかと思っていたけど、そんなことはないようだ。

 朔怜様や依咲那様とも親しそうに喋っている。時折、朔怜様が豪快に笑ってる。

 こんな亜玖留様を見れただけでも少し得した気持ちになる。

「あれ? 天袮様も来てるんだね」
「そうそう。天袮様はきっとみんな集まるって知ってて来たんだよ」
「輝惺様と並んでるの絵になるわね」

 蘭恋がうっとりとした視線を送る。
 二人は雰囲気が似ているから並んでると兄弟みたいだ。

「あ、蘭恋。余所見してると、煬源様がヤキモチやいちゃうよ?」
「そうかしら? そうだと嬉しいけど」

 ……蘭恋みたいにはなれないな。なんて密かに感心してしまった。

 僕はヤキモチ妬いてほしいなんて言えないや。

「如月、今日から儀式までは狼神様が付きっきりになるらしいから、気合い入れてね!!」
「頑張りましょう!!」

 凪と蘭恋に謎の気合いを貰い、朝拝を終えた。

 今日から3日間付きっきり……。

 輝惺様が僕の隣でずっといるのか……。

(ム……ムムム……ムキュっ!!)

 儀式まで心臓が持たないよぉぉお!!!
 
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