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目覚めると、隣の布団から僕の寝顔を見つめていた輝惺様とバッチリけがあった。
ビックリして布団で顔を隠し「おはようございます」と言うと、輝惺様は開口一番「なぜ違う布団で寝ているのか」と不満を漏らした。
「輝惺様、麿衣様と凪もこうして布団を並べて寝ていると聞いております」
「私は麿衣から一緒に寝ていると聞いたのだが……」
「さあ、朝拝へ行って来ます!!」
これ以上輝惺様と一緒にいると、また何か言い出し兼ねない。大急ぎで布団を畳み、部屋を飛び出した。
大神殿へ着くと、大鳥居のところで蘭恋と一緒になった。
輝惺様の話を聞いてほしいが、蘭恋も何か喋りたそうだ。今日はお互いの話を聞き合いっこがしたいな。
「如月ーー! 蘭恋ーー!! 早く朝拝始めめよー!!」
元気いっぱいに朱邑が走ってきた。
「おはよう、朱邑。何か急ぎの用事があるの?」
「そうなんだ!! 今日また朔怜様と地上界へ行くんだ」
早く帰ってくると、朔怜様と約束をしてきたようだ。
唯一、神界へきた時から、何事もなく楽しんできている朱邑と秦羽が羨ましいような気もする。
何でも今日は倭の国に冬を告げる第一号なんだそうだ。
「それは須凰の所?」
「俺もそれを聞いたんだけど全然違うところだって。ちょっと『直ぐに会えたらな……』なんて思ってたけど、そう簡単にはいかないんだな」
肩をすくめて笑った。
須凰のいない朝拝にも慣れてしまっているのが、寂しいと思ってしまう。
振り返ればいそうな気がするのに、僕だけが空回っているような気持ちだ。
(輝惺様の話を聞いて納得したはずなのにな。未練がましいや)
朝拝が終わると朱邑と秦羽は一目散に帰っていった。
月詠も今日は忙しいから……と慌てて帰った。
もうみんな、それぞれの道を歩み始めている。僕も置いていかれないようにしないといけない。
「朱邑たちは今日も元気いっぱいだね」
凪が朱邑たちの背中に手を振りながら言った。
「本当に、すごい勢いで行っちゃったわね」
蘭恋も笑っている。
「あの二人は狼神様と『運命の番』って気がするよね」
凪が遠い目をして言うので驚いた。
「凪だって負けないくらい仲良いじゃないか!!」
「そりゃ、勿論。麿衣様は優しく接してくれているよ? でもだからって『運命の番』とは限らないじゃない」
凪は、本当に麿衣様との時間を大切に思っているんだ。
狼神様との距離が一番近い凪だから、余計にそうじゃなかった時が怖いのかもしれないと思った。
けれど、そう思うのは凪だけではない。
「私だって、せっかく煬源様と仲良くなれたのに、運命の番じゃなければ……って考えてしまうわ」
「それは僕も考えるよ」
身を捧げる儀式を、いよいよ意識する時期が訪れていた。
ビックリして布団で顔を隠し「おはようございます」と言うと、輝惺様は開口一番「なぜ違う布団で寝ているのか」と不満を漏らした。
「輝惺様、麿衣様と凪もこうして布団を並べて寝ていると聞いております」
「私は麿衣から一緒に寝ていると聞いたのだが……」
「さあ、朝拝へ行って来ます!!」
これ以上輝惺様と一緒にいると、また何か言い出し兼ねない。大急ぎで布団を畳み、部屋を飛び出した。
大神殿へ着くと、大鳥居のところで蘭恋と一緒になった。
輝惺様の話を聞いてほしいが、蘭恋も何か喋りたそうだ。今日はお互いの話を聞き合いっこがしたいな。
「如月ーー! 蘭恋ーー!! 早く朝拝始めめよー!!」
元気いっぱいに朱邑が走ってきた。
「おはよう、朱邑。何か急ぎの用事があるの?」
「そうなんだ!! 今日また朔怜様と地上界へ行くんだ」
早く帰ってくると、朔怜様と約束をしてきたようだ。
唯一、神界へきた時から、何事もなく楽しんできている朱邑と秦羽が羨ましいような気もする。
何でも今日は倭の国に冬を告げる第一号なんだそうだ。
「それは須凰の所?」
「俺もそれを聞いたんだけど全然違うところだって。ちょっと『直ぐに会えたらな……』なんて思ってたけど、そう簡単にはいかないんだな」
肩をすくめて笑った。
須凰のいない朝拝にも慣れてしまっているのが、寂しいと思ってしまう。
振り返ればいそうな気がするのに、僕だけが空回っているような気持ちだ。
(輝惺様の話を聞いて納得したはずなのにな。未練がましいや)
朝拝が終わると朱邑と秦羽は一目散に帰っていった。
月詠も今日は忙しいから……と慌てて帰った。
もうみんな、それぞれの道を歩み始めている。僕も置いていかれないようにしないといけない。
「朱邑たちは今日も元気いっぱいだね」
凪が朱邑たちの背中に手を振りながら言った。
「本当に、すごい勢いで行っちゃったわね」
蘭恋も笑っている。
「あの二人は狼神様と『運命の番』って気がするよね」
凪が遠い目をして言うので驚いた。
「凪だって負けないくらい仲良いじゃないか!!」
「そりゃ、勿論。麿衣様は優しく接してくれているよ? でもだからって『運命の番』とは限らないじゃない」
凪は、本当に麿衣様との時間を大切に思っているんだ。
狼神様との距離が一番近い凪だから、余計にそうじゃなかった時が怖いのかもしれないと思った。
けれど、そう思うのは凪だけではない。
「私だって、せっかく煬源様と仲良くなれたのに、運命の番じゃなければ……って考えてしまうわ」
「それは僕も考えるよ」
身を捧げる儀式を、いよいよ意識する時期が訪れていた。
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