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本編
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輝惺様は人の願いは何でも叶えてくれるけど、自分の願いというものを考えたことがなかったと言った。
「でも、前の巫子と番になりたいのではなかったのですか?」
「それは狼神なら毎年思っている。しかし、運命の番を私が操るわけにはいかない」
それをしてしまうのはルール違反のようなものなのか。
(じゃあやはり、いくら輝惺様が僕と番になりたいって思っても、ルール通りに儀式で決めないといけないのか)
考えてみればそんなズルいことはしちゃいけないって分かるんだけど……もう後少しで身を捧げる儀式かと思うと、どうしても欲が出てしまう。
「今夜はそろそろ寝るとしよう」
輝惺様が僕の肩をポンと弾く。
「ありがとうございます」
今日も何とかモジモジしながら耐えた。会話が弾んでいると、気が紛れて良い。
僕達Ωがこの神界で発情しないのは、全て狼神様の力で抑えられているからだ。
だから発情の心配はないのだけれど……。やはり尻尾を弄られるのは、くすぐったいとは似てるようで違う感覚に襲われる。
今日も輝惺様が部屋から出た途端、布団にダイブすると決まっている。
……が、今日は輝惺様がなかなか立とうとしない。
(どうしたんだろう?)
モジモジしているのを見られたのか?
チラリと後ろを振り返る。すると、輝惺様の顔が直ぐ目の前にあって飛び上がるほど驚いた。
「どどどっどうしましたか!?」
肩越しに僕の顔を覗き込んでいた輝惺様は、何か不服そうな表情をしている。
(やっぱり、毛繕いでモジモジしているのがバレたに違いない)
何と言い訳をしようか頭をフル回転させて考える。
しかし、輝惺様はまるで違うことを考えていたらしい。
「もう私に用はないか?」
「は、はい。大丈夫……です……」
輝惺様がより不服そうになる。何かいけないことをしたには違いない。でも僕が何をしたのか分からない。
僕が輝惺様の気持ちを読み取ろうとジッと見つめると、輝惺様も僕にテレパシーを送るようにジッと見つめ返した。
「輝……輝惺様は、僕に何か用事はありませんか?」
何か仕事を頼みたかったのかと思い、逆に尋ねてみた。
「まさか、仕事の話だと思っているのか? 私は寝る前にまで仕事の話などしたくはない」
全くトンチンカンな質問をしてしまったらしく、益々輝惺様の機嫌は悪くなるのだった。
もう、僕には考えられる気力は残っていないというのに……。どうにも輝惺様は自室に戻る気はないように感じる。
「何かヒントをください」
分からないものは対応のしようもない。とにかく輝惺様がどのようなことを考えているのかを示してほしい。
「如月は意外と淡白だな」
小さくため息を溢す。
今日の輝惺様はどうしたのだろう。
「僕が淡白なんて、心外です!」
こんなにも輝惺様に好き好きアピールを送っているのに、それが伝わっていないなら、淡白なのは輝惺様のほうだ。
「……麿衣は凪と一緒に寝ていると言っていた」
「ブッ!!」
遂に知ってしまった!! 輝惺様、いつの間に麿衣様の話を聞いたのだろう。
(すぐに麿衣様を参考にするからなぁ)
毛繕いの後は、気持ちの昂りが治るまでは一人の賢者タイムを設けたいんだけど……。
「如月は私と一緒に寝たいとは思わないのだな?」
礼儀正しく正座をしたまま尋ねられると、断るわけにもいかない。
でも、これ以上輝惺様と引っ付いているなんて……。
緊張して眠れる気がしない!!
「あの……お試しで隣で寝てみてもいいですか?」
輝惺様がニッコリと微笑んだ。
「私も試してみたいと思っていたのだ」
……輝惺様? 凪は同じ布団で寝ているとは言っていませんでしたよ?
「でも、前の巫子と番になりたいのではなかったのですか?」
「それは狼神なら毎年思っている。しかし、運命の番を私が操るわけにはいかない」
それをしてしまうのはルール違反のようなものなのか。
(じゃあやはり、いくら輝惺様が僕と番になりたいって思っても、ルール通りに儀式で決めないといけないのか)
考えてみればそんなズルいことはしちゃいけないって分かるんだけど……もう後少しで身を捧げる儀式かと思うと、どうしても欲が出てしまう。
「今夜はそろそろ寝るとしよう」
輝惺様が僕の肩をポンと弾く。
「ありがとうございます」
今日も何とかモジモジしながら耐えた。会話が弾んでいると、気が紛れて良い。
僕達Ωがこの神界で発情しないのは、全て狼神様の力で抑えられているからだ。
だから発情の心配はないのだけれど……。やはり尻尾を弄られるのは、くすぐったいとは似てるようで違う感覚に襲われる。
今日も輝惺様が部屋から出た途端、布団にダイブすると決まっている。
……が、今日は輝惺様がなかなか立とうとしない。
(どうしたんだろう?)
モジモジしているのを見られたのか?
チラリと後ろを振り返る。すると、輝惺様の顔が直ぐ目の前にあって飛び上がるほど驚いた。
「どどどっどうしましたか!?」
肩越しに僕の顔を覗き込んでいた輝惺様は、何か不服そうな表情をしている。
(やっぱり、毛繕いでモジモジしているのがバレたに違いない)
何と言い訳をしようか頭をフル回転させて考える。
しかし、輝惺様はまるで違うことを考えていたらしい。
「もう私に用はないか?」
「は、はい。大丈夫……です……」
輝惺様がより不服そうになる。何かいけないことをしたには違いない。でも僕が何をしたのか分からない。
僕が輝惺様の気持ちを読み取ろうとジッと見つめると、輝惺様も僕にテレパシーを送るようにジッと見つめ返した。
「輝……輝惺様は、僕に何か用事はありませんか?」
何か仕事を頼みたかったのかと思い、逆に尋ねてみた。
「まさか、仕事の話だと思っているのか? 私は寝る前にまで仕事の話などしたくはない」
全くトンチンカンな質問をしてしまったらしく、益々輝惺様の機嫌は悪くなるのだった。
もう、僕には考えられる気力は残っていないというのに……。どうにも輝惺様は自室に戻る気はないように感じる。
「何かヒントをください」
分からないものは対応のしようもない。とにかく輝惺様がどのようなことを考えているのかを示してほしい。
「如月は意外と淡白だな」
小さくため息を溢す。
今日の輝惺様はどうしたのだろう。
「僕が淡白なんて、心外です!」
こんなにも輝惺様に好き好きアピールを送っているのに、それが伝わっていないなら、淡白なのは輝惺様のほうだ。
「……麿衣は凪と一緒に寝ていると言っていた」
「ブッ!!」
遂に知ってしまった!! 輝惺様、いつの間に麿衣様の話を聞いたのだろう。
(すぐに麿衣様を参考にするからなぁ)
毛繕いの後は、気持ちの昂りが治るまでは一人の賢者タイムを設けたいんだけど……。
「如月は私と一緒に寝たいとは思わないのだな?」
礼儀正しく正座をしたまま尋ねられると、断るわけにもいかない。
でも、これ以上輝惺様と引っ付いているなんて……。
緊張して眠れる気がしない!!
「あの……お試しで隣で寝てみてもいいですか?」
輝惺様がニッコリと微笑んだ。
「私も試してみたいと思っていたのだ」
……輝惺様? 凪は同じ布団で寝ているとは言っていませんでしたよ?
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