【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎

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本編

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 蘭恋がまた朝拝へ戻ったことで、以前のような賑やかな雰囲気が復活している。

 やはり誰一人欠けても八乙女は成り立たなかったように思う。

 日々の何気ない会話から、いろんな情報を得られるのも楽しい。

 地上界ではまた季節が移りゆき、これまでとは違った景色を見せていると朱邑あけさと秦羽しんばが教えてくれている。

「木の葉が紅く染まって山々が全然違うものに見える」
 と興奮気味に教えてくれたのが、つい先日。

 風神様・雷神様に付いて、しょっちゅう地上界へ行き来している二人の話は、八乙女の間にいつも新鮮な風を吹かせてくれる。


 そんな神界で最近話題になっているのは、もうすぐ地上界で行われる神様の祀りごと。そこで八乙女が揃って神楽かぐらを舞うことになっているのだ。

 つまり神界に来てから初めて、狼神様も含む全員で地上界へ行けるということだ。八乙女はみんなワクワクしている。

 しかし神楽を舞うのは神界に来る儀式の時以来だからか、意外と忘れているもので……。朝拝の前に練習するものの、ああではない、こうじゃなかったか……と、思い出すのに一苦労した。

 本番で失敗は許されない。完璧に舞えるようにしておかなければならない。

 輝惺様からこの祀りごとの話を聞く限り、凄い人数の神様が集まるらしく、今から泣きそうなほど緊張している。

 お遊び気分で行ければどんなに楽しいだろうかと、胃を撫でながら思うのだった。

「練習は順調かい?」

 なんて輝惺様に聞かれた時に、少し見栄を張って「披露できるのが楽しみです」などと言ってしまったことを今更ながらに後悔している。

(でも、頑張るしかない!!)
 自分自身を鼓舞して、光の神の神殿でも練習を重ねた。


 いよいよその当日となり、全員で地上界へと降りる時が来た。

 この日の為に、狼神様が巫子が着る羽織袴を新調してくれた。今日は白の羽織に淡い青色の袴。これは狼神様の帯と同じ色だ。

 八乙女の気持ちが一気に昂った。今日は何もかもが上手くいきそうなきがする。

 それぞれの神様に抱えられ、大神殿から旅立つ。

 月詠つくよみだけは地上界が初めてなので、緊張で固まっていた。

(闇の神は、こういう祀りごとでも真っ黒な衣装は変わらないみたいだ)

 とは言え僕も久しぶりだから、月詠ほどではないものの緊張している。

 そんな気持ちは汲まれることなく、狼神様は飛んだ。
 
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