【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎

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本編

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 ……麿衣様から毛繕いを教えてもらった輝惺様は、あれからハマってしまったらしく……。

 僕の尻尾の毛繕いを始めてしまった。

 尻尾はすっっごくくすぐったい。でも「気持ちいいか?」と聞かれれば、止めてくださいとも言えず、震える声で「はい」と返すのが精一杯なのだった。

 毛繕いは大体湯浴みの後で行われる。

 僕は凪のようにクルクルの毛ではないし、尻尾は元々太いというだけで絡まったりはしない。

 なのできっと輝惺様も弄って遊んでいるだけなのだ。

(せめて髪の毛なら良かったんだけど……。凪は髪の毛だったのに、なぜ僕は尻尾なのだろう……)

 輝惺様に触ってもらえるのは嬉しいんだけど……でも……絶妙な指遣いで弄られると、変な気持ちになってしまう。

(ダメ……神聖な神界で……輝惺様の前で……ダメダメ……)

 自分に言い聞かせながら耐えているけど、とても我慢できず足をモジモジして、なんとかこの毛繕いタイムが終わるのを待っている。

「よし、今日はこのくらいにしようか」

「毎晩整えてもらってすみません」

「遠慮など要らない、大事な尻尾だ。最近毛に艶が出てきたように感じる。明日も手入れをしよう」

(あ……明日もやるのか……)

 輝惺様が僕の部屋から出て行った途端、布団に飛び込んだ。

(気持ちいいけど……こんなの毎日されちゃったら……僕、恥ずかしい姿を見せてしまうかもしれない)

 輝惺様に触って欲しい気持ちは捨てがたいが、あまり長くは我慢もできない。どうにか毛繕いに飽きてくれますように……と願うしかなかった。


 輝惺様からのスキンシップは日に日に増しているような気がする。

 きっと麿衣様に感化されたのだろうけど、頭を撫でたり料理をしているのを覗きにきたり……以前はしなかったことを急にやるようになった。

 膝に座ってご飯を食べるのは丁重に断って、向かい合わせで食べられるようになったけど、真正面からジッと見られるのもそれはそれで緊張する。

 それでもやはり頬いっぱいに詰め込んで食べられる方が、少しは食べた気にもなるというものだ。

「如月の口の中がどうなっているのか、興味深いな」

 輝惺様はパンパンに膨らんだ僕の頬を突ついたりしてくる。
 ちょっとやそっと突かれたくらいではどうにもならない。もぐもぐと食べ続ける僕の頬が可笑しくして仕方がない様子だ。


 急速に近づく距離感に素直に喜んでもいいのか、それとも遊ばれているだけなのか……。

 これでもし麿衣様が凪と一緒に寝ていると知ると、輝惺様もそうすると言い出しかねない。今一緒に寝ようものなら、一晩中尻尾の毛繕いをされるのは目に見えている。

 どうにかそれだけは回避したいものだ。

 
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