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本編
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輝惺様はなかなか帰ってこなかった。
火の神の神殿で、何が起こっているのだろうか。
気になりながらも夕食の準備に取り掛かっていた。
結局、輝惺様が帰ってきた時、外は暗くなっていた。
「如月、直ぐに禊の準備を」
「かしこまりました!」
大急ぎで神殿から輝惺様の真っ白の襦袢と数珠を持ち出した。
各神殿の裏には禊用の滝がある。
輝惺様は既に滝に向かっていた。
後から追いかける形で神殿の裏へ行くと、あの時と同じような邪気を感じた。
一瞬で生々しく思い出した。
闇の神の神殿でいた時、亜玖留様の中に入っていた輝惺様が、黄泉の国から帰ってきた時に纏っていた邪気だ。
輝惺様は素早く着替え、滝へ入ってくる。
僕も手を合わせて一緒に祈った。
邪気が祓われるまで、そんなに時間は掛からなかった。
黄泉の国はたまに送り込まれた罪人が暴動を起こすと聞いたことがあるが、それなのだろうか……。
とにかく輝惺様から説明されるまでは待つしかない。
滝のそばで待っていると、しばらくして輝惺様が出てきた。
「何が……あったのですか?」
「蘭恋が怪我を負っていた。煬源が罪人を黄泉の国へ送り、帰ろうとした時だった。いつもは連れて行かない蘭恋を連れていたそうだ」
その罪人が隙を見て、黄泉の国から脱走しようとしたらしい。
煬源様に襲い掛かろうとしたのを、いち早く気づいた蘭恋が止めに入った為に、その罪人にやられてしまったのだと言う。
「それで、蘭恋は!?」
真正面からまともに襲い掛かられたらしい。ケガがかなり酷かった。
煬源がその場は収めたが、蘭恋のケガを治すことはできない。それで輝惺様を呼んだというわけだった。
「……。大丈夫だ、もう心配いらない。蘭恋の命に別状はないし、傷も残らないように治してきた」
「よかった……」
煬源様は、地上界へ行ったことのない蘭恋を連れて行ってあげていたらしい。
その出先で罪人を見つけた。
黄泉の国へ蘭恋を連れて行きたくはなかったが、状況的に仕方なかった。
「しかし、今は煬源の方が落ち込んでいる」
煬源様、蘭恋にケガを負わせてしまった責任感もあるだろうけど……。一番やはり蘭恋が大切だからだ。
「蘭恋は、もう元気なんですか?」
「今は寝ている。体も意識もショックを受けているから、いつ目が覚めるかは分からない。煬源はそれで余計に……」
「そう……ですか……」
助かったとはいえ、襲われた時のことを思うと胸が苦しくなった。
早く目覚めますように、と何度も祈りながら眠りについた。
火の神の神殿で、何が起こっているのだろうか。
気になりながらも夕食の準備に取り掛かっていた。
結局、輝惺様が帰ってきた時、外は暗くなっていた。
「如月、直ぐに禊の準備を」
「かしこまりました!」
大急ぎで神殿から輝惺様の真っ白の襦袢と数珠を持ち出した。
各神殿の裏には禊用の滝がある。
輝惺様は既に滝に向かっていた。
後から追いかける形で神殿の裏へ行くと、あの時と同じような邪気を感じた。
一瞬で生々しく思い出した。
闇の神の神殿でいた時、亜玖留様の中に入っていた輝惺様が、黄泉の国から帰ってきた時に纏っていた邪気だ。
輝惺様は素早く着替え、滝へ入ってくる。
僕も手を合わせて一緒に祈った。
邪気が祓われるまで、そんなに時間は掛からなかった。
黄泉の国はたまに送り込まれた罪人が暴動を起こすと聞いたことがあるが、それなのだろうか……。
とにかく輝惺様から説明されるまでは待つしかない。
滝のそばで待っていると、しばらくして輝惺様が出てきた。
「何が……あったのですか?」
「蘭恋が怪我を負っていた。煬源が罪人を黄泉の国へ送り、帰ろうとした時だった。いつもは連れて行かない蘭恋を連れていたそうだ」
その罪人が隙を見て、黄泉の国から脱走しようとしたらしい。
煬源様に襲い掛かろうとしたのを、いち早く気づいた蘭恋が止めに入った為に、その罪人にやられてしまったのだと言う。
「それで、蘭恋は!?」
真正面からまともに襲い掛かられたらしい。ケガがかなり酷かった。
煬源がその場は収めたが、蘭恋のケガを治すことはできない。それで輝惺様を呼んだというわけだった。
「……。大丈夫だ、もう心配いらない。蘭恋の命に別状はないし、傷も残らないように治してきた」
「よかった……」
煬源様は、地上界へ行ったことのない蘭恋を連れて行ってあげていたらしい。
その出先で罪人を見つけた。
黄泉の国へ蘭恋を連れて行きたくはなかったが、状況的に仕方なかった。
「しかし、今は煬源の方が落ち込んでいる」
煬源様、蘭恋にケガを負わせてしまった責任感もあるだろうけど……。一番やはり蘭恋が大切だからだ。
「蘭恋は、もう元気なんですか?」
「今は寝ている。体も意識もショックを受けているから、いつ目が覚めるかは分からない。煬源はそれで余計に……」
「そう……ですか……」
助かったとはいえ、襲われた時のことを思うと胸が苦しくなった。
早く目覚めますように、と何度も祈りながら眠りについた。
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