43 / 75
本編
41
しおりを挟む
それから数ヶ月、僕の尻尾の毛は輝惺様にも誰にもバレないうちに殆んど生えていた。
尻尾が愛おしい。噛むのも癖になる前に治ってよかった。
最近、地上界は暑い季節らしく、風神様と雷神様が忙しいそうにしている。
なんでも嵐を送っているとのことで、しょっちゅう地上界へ行っているようだ。
二人に仕えている秦羽と朱邑も一層賑やかになっていた。
神界には季節がないため、しょっちゅう地上界へ行っているこの二人を羨ましく思う気持ちは一年中続きそうだ。
光の神に仕えている僕は、割といつでも落ち着いて行動できる。
っというのも、基本的に輝惺様が地上界から届いた願いを叶えていくのが主なので、私はその記録の整理くらいしか手伝える仕事がない。
二人の話を聞くのはとっても楽しいが、本音をいえばやはり自分も色々と経験したいと思う。
春以来、大地神である麿衣様とは神殿が近いのもあって親交が深い。
それを朝拝で蘭恋に話したことがあった。
元々、花が好きな蘭恋は、是非自分も大地神の神殿へ行きたいと言っていた。今日は粗方の仕事を終えると、蘭恋と一緒に大地神の神殿へ行く約束をしている。
しかし、大神殿でいくら待っても蘭恋がこない。
「何か、急用かな?」
と思いつつ、しばらく待ってみたがやはり来ない。
何もなければ蘭恋が遅刻などするわけもないから、やはり急用だろうか。
流石にもう来なだろうと思うくらいの時間が経ち、一人で大地神の神殿に行こうと立ち上がったその時、火の神・煬源様が大神殿へ来た。
何かとても慌てている様子なのが気になる。
「如月! 輝惺は神殿にいるか? すぐに来て欲しいのだ!」
「はい、今日の分のお勤めは終わりましたので、神殿におられます」
「直ちに火の神の神殿へ呼んでくれ。蘭恋が……」
そこで煬源様が蘭恋の名前を出したので驚いた。やはり、今日来なかったのは何か理由があるのだ。
「蘭恋が、どうかしたのですか!?」
「俺がいけなかった。少し目を離した隙に……」
声を詰まらせ何かを言いかけた煬源様だったが、「とにかく輝惺を連れてきてくれ!!」とだけ叫ぶと、また火の神の神殿へと走り去った。
「蘭恋……? 一体何が……」
嫌な予感で間違いないだろうが、何も理由も分からず輝惺になんと説明すればいいのだ。
「でも……こんなに悩んでいる時間はない!!」
光の神の神殿へ向かって走った。
「輝惺様!!」
神殿の敷地に入った途端に、大声で輝惺さまの名前を呼ぶ。
輝惺様はビックリした様子で神殿から飛び出してきた。
「輝惺様、大変です! 煬源様の神殿で何かあったようで、直ぐに来て欲しいと言われて大急ぎで帰ってきました」
「一体、何があったのだ?」
輝惺様も目を丸くしている。
「それが……ハッキリとは教えてもらえなかったのですが、『自分のせいで蘭恋が……』と仰っていました。もしかすると、蘭恋がどうにかなっているのでしょうか?」
「———よし、直ぐに向かう。如月は危ないかもしれないから、ここにいるように」
一緒に行きたいと思った。蘭恋も心配だし……。
でも、輝惺様がここにいろというので従った。
僕が我儘を言っている状況ではないのは分かる。
輝惺様が出かけると、神殿へ入り蘭恋の無事を祈った。
尻尾が愛おしい。噛むのも癖になる前に治ってよかった。
最近、地上界は暑い季節らしく、風神様と雷神様が忙しいそうにしている。
なんでも嵐を送っているとのことで、しょっちゅう地上界へ行っているようだ。
二人に仕えている秦羽と朱邑も一層賑やかになっていた。
神界には季節がないため、しょっちゅう地上界へ行っているこの二人を羨ましく思う気持ちは一年中続きそうだ。
光の神に仕えている僕は、割といつでも落ち着いて行動できる。
っというのも、基本的に輝惺様が地上界から届いた願いを叶えていくのが主なので、私はその記録の整理くらいしか手伝える仕事がない。
二人の話を聞くのはとっても楽しいが、本音をいえばやはり自分も色々と経験したいと思う。
春以来、大地神である麿衣様とは神殿が近いのもあって親交が深い。
それを朝拝で蘭恋に話したことがあった。
元々、花が好きな蘭恋は、是非自分も大地神の神殿へ行きたいと言っていた。今日は粗方の仕事を終えると、蘭恋と一緒に大地神の神殿へ行く約束をしている。
しかし、大神殿でいくら待っても蘭恋がこない。
「何か、急用かな?」
と思いつつ、しばらく待ってみたがやはり来ない。
何もなければ蘭恋が遅刻などするわけもないから、やはり急用だろうか。
流石にもう来なだろうと思うくらいの時間が経ち、一人で大地神の神殿に行こうと立ち上がったその時、火の神・煬源様が大神殿へ来た。
何かとても慌てている様子なのが気になる。
「如月! 輝惺は神殿にいるか? すぐに来て欲しいのだ!」
「はい、今日の分のお勤めは終わりましたので、神殿におられます」
「直ちに火の神の神殿へ呼んでくれ。蘭恋が……」
そこで煬源様が蘭恋の名前を出したので驚いた。やはり、今日来なかったのは何か理由があるのだ。
「蘭恋が、どうかしたのですか!?」
「俺がいけなかった。少し目を離した隙に……」
声を詰まらせ何かを言いかけた煬源様だったが、「とにかく輝惺を連れてきてくれ!!」とだけ叫ぶと、また火の神の神殿へと走り去った。
「蘭恋……? 一体何が……」
嫌な予感で間違いないだろうが、何も理由も分からず輝惺になんと説明すればいいのだ。
「でも……こんなに悩んでいる時間はない!!」
光の神の神殿へ向かって走った。
「輝惺様!!」
神殿の敷地に入った途端に、大声で輝惺さまの名前を呼ぶ。
輝惺様はビックリした様子で神殿から飛び出してきた。
「輝惺様、大変です! 煬源様の神殿で何かあったようで、直ぐに来て欲しいと言われて大急ぎで帰ってきました」
「一体、何があったのだ?」
輝惺様も目を丸くしている。
「それが……ハッキリとは教えてもらえなかったのですが、『自分のせいで蘭恋が……』と仰っていました。もしかすると、蘭恋がどうにかなっているのでしょうか?」
「———よし、直ぐに向かう。如月は危ないかもしれないから、ここにいるように」
一緒に行きたいと思った。蘭恋も心配だし……。
でも、輝惺様がここにいろというので従った。
僕が我儘を言っている状況ではないのは分かる。
輝惺様が出かけると、神殿へ入り蘭恋の無事を祈った。
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる