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本編
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居間の机を見てビックリしてしまった。
大地神・麿衣様と凪の作ってくれた彩り豊かな料理の数々。
二人はいつも一緒にご飯を作ると言っていた。きっと僕達の為に腕を振るってくれたのだろう。
お供えされていたという、地上界の野菜がふんだんに使われた煮物や蒸し物などが、机いっぱいに並べられていたのだ。
「確かに、こんな量は輝惺様一人じゃ食べきれませんね」
「麿衣のやつ、私が頼むといつも張り切ってこうなるのだ。麿衣とは食べる量が全く違うというのに」
困ったように言っているけど、口元は嬉しそうだ。
輝惺様は割と食が細い。僕も沢山は食べないので、この量だと二人がかりでも食べきれないかもしれない。
それでも凝った料理の数々を眺めていると、麿衣様と凪の楽しそうな暮らしぶりが垣間見れて嬉しい。
僕を抱いたまま座った輝惺様は、そのまま自分の膝に僕を座らせた。
机の向かいに移動しようと立ち上がる僕を食い止めるように、腕が伸びてきた。
「ここにいろ」
そう言うと再び輝惺様の膝に尻を着く。
「そんな、輝惺様が食べにくくなります」
それに僕だって輝惺様に抱かれてなんて、緊張しすぎて食べられない。
「大丈夫だ。私はさほど腹は減っていない。如月が沢山食べるといい」
左手でガッチリと体を掴まれていて身動きが取れない。
輝惺様ってこんなに力が強かったんだ。
とてもご飯を食べられる状況じゃないのに、僕ったら呑気に輝惺様の逞しさを感じてドキドキしてる。
「麿衣の作る煮物は美味しいのだ。如月にも是非食べさせてたいと思っていた」
そう言うと、箸で僕の口へと運ぶ。
流れで輝惺様の箸から食べてしまった!
「んっ! おいひいれす」
そうだろう? と得意そうに微笑む輝惺様。僕が飲み込んだのを確認すると、また二口目が運ばれた。
「あの、自分で食べますから……」
こんな状況に慣れてないから、嬉しいよりも恥ずかしさが増してしまう。
それでも輝惺様は僕の言葉を無視して食事を口元まで運ぶのだった。
「ぁむ」
結局、断りきれずに食べてしまうのだけど……。
輝惺様って、いつもこんなにゆっくり時間をかけて食べているんだと実感してしまった。
普段の僕なら、とっくに一皿分くらいは口に詰め込んでいる。
ようやく三口目が口に入ると、盛大にお腹が鳴った。
「食欲が戻ってきたようだな」
輝惺様はそう言って微笑んでいたけど、本当はもっと猛スピードで食べたかったとは言えない。
でもいつものペースで食べていては、この至福の時間が直ぐに終わってしまう。
すぐ目の前に透き通るような白い肌をウットリと見上げている。もっと眺めていたい。
こんな贅沢いいのだろうか。食べ終わるのが惜しいとさえ思ってしまう。
今日はなるべく口は小さく開けて食べようと心掛けた。
輝惺様はちゃんと飲み込むまで次の食事を運んでくれないので、頬に溜めたりしない。
せっかく病み上がりの僕を気遣ってくれている輝惺様に甘えたい一心で、僕はお腹が鳴るのをなんとか抑えつつ、生まれて初めて上品にご飯を食べた。
大地神・麿衣様と凪の作ってくれた彩り豊かな料理の数々。
二人はいつも一緒にご飯を作ると言っていた。きっと僕達の為に腕を振るってくれたのだろう。
お供えされていたという、地上界の野菜がふんだんに使われた煮物や蒸し物などが、机いっぱいに並べられていたのだ。
「確かに、こんな量は輝惺様一人じゃ食べきれませんね」
「麿衣のやつ、私が頼むといつも張り切ってこうなるのだ。麿衣とは食べる量が全く違うというのに」
困ったように言っているけど、口元は嬉しそうだ。
輝惺様は割と食が細い。僕も沢山は食べないので、この量だと二人がかりでも食べきれないかもしれない。
それでも凝った料理の数々を眺めていると、麿衣様と凪の楽しそうな暮らしぶりが垣間見れて嬉しい。
僕を抱いたまま座った輝惺様は、そのまま自分の膝に僕を座らせた。
机の向かいに移動しようと立ち上がる僕を食い止めるように、腕が伸びてきた。
「ここにいろ」
そう言うと再び輝惺様の膝に尻を着く。
「そんな、輝惺様が食べにくくなります」
それに僕だって輝惺様に抱かれてなんて、緊張しすぎて食べられない。
「大丈夫だ。私はさほど腹は減っていない。如月が沢山食べるといい」
左手でガッチリと体を掴まれていて身動きが取れない。
輝惺様ってこんなに力が強かったんだ。
とてもご飯を食べられる状況じゃないのに、僕ったら呑気に輝惺様の逞しさを感じてドキドキしてる。
「麿衣の作る煮物は美味しいのだ。如月にも是非食べさせてたいと思っていた」
そう言うと、箸で僕の口へと運ぶ。
流れで輝惺様の箸から食べてしまった!
「んっ! おいひいれす」
そうだろう? と得意そうに微笑む輝惺様。僕が飲み込んだのを確認すると、また二口目が運ばれた。
「あの、自分で食べますから……」
こんな状況に慣れてないから、嬉しいよりも恥ずかしさが増してしまう。
それでも輝惺様は僕の言葉を無視して食事を口元まで運ぶのだった。
「ぁむ」
結局、断りきれずに食べてしまうのだけど……。
輝惺様って、いつもこんなにゆっくり時間をかけて食べているんだと実感してしまった。
普段の僕なら、とっくに一皿分くらいは口に詰め込んでいる。
ようやく三口目が口に入ると、盛大にお腹が鳴った。
「食欲が戻ってきたようだな」
輝惺様はそう言って微笑んでいたけど、本当はもっと猛スピードで食べたかったとは言えない。
でもいつものペースで食べていては、この至福の時間が直ぐに終わってしまう。
すぐ目の前に透き通るような白い肌をウットリと見上げている。もっと眺めていたい。
こんな贅沢いいのだろうか。食べ終わるのが惜しいとさえ思ってしまう。
今日はなるべく口は小さく開けて食べようと心掛けた。
輝惺様はちゃんと飲み込むまで次の食事を運んでくれないので、頬に溜めたりしない。
せっかく病み上がりの僕を気遣ってくれている輝惺様に甘えたい一心で、僕はお腹が鳴るのをなんとか抑えつつ、生まれて初めて上品にご飯を食べた。
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