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本編
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お茶を淹れ、居間に集まったは良いけれど、誰からも話そうとはしない。
今、狼神様達がどんな話し合いをしているかは分からない。
重い気持ちのまま時間だけが過ぎていく。
「如月ー!!」
外から僕を呼ぶ声が聞こえた。この声は……。
「朱邑!?」
急いで外に飛び出すと、朱邑と月詠、秦羽だった。
「月詠を迎えに行ってたんだ」
「狼神様は?」
「今、神殿で集まってる」
三人も居間へと案内した。
「地上界のことなら、麿衣様がよく知ってるだろうけど。その麿衣様が石を探すのは難しいって言ってたんだ」
後から来た三人もあからさまに不安そうな表情を見せた。
「じゃあ、輝惺様と亜玖瑠様は……」
嫌な予感が漂う。
それを遮るように言い放った。
「狼神様は死んだりしないよ!! そのために今みんなが集まっているんだもの!!」
「如月……。うん、そうね! 如月の言う通りだわ」
僕の後に蘭恋も続く。
「ああ、その通りだ」
いきなり居間の襖が開いた。
「朔怜様に、依咲那様!!」
「直ぐに地上界へ出発するぞ」
二人の狼神様の言葉に、全員の表情が明るくなった。
「「はいっ!!」」
朔怜様と依咲那様に仕えている朱邑と秦羽が元気に返事をする。
「おい、如月! お前もだ」
朔怜様が大きな声でいきなり話しかけてきた。
「僕も……ですか?」
突然名前を呼ばれて戸惑った。それでも咲怜様と依咲那様は堂々とした笑顔を崩さない。
「行きたくないのかい?」
「依咲那様、そりゃ行きたいですが……。僕も行っても良いのでしょうか?」
「今、亜玖瑠の中にいる輝惺に仕える巫子は君だ。君が一番輝惺に合うと思う石を選ぶのだ」
そんな大事な役目を僕が担うのか……。でも、やりたい! 輝惺様のために……。
「ご一緒させてください!!」
「さあ、急げ。如月には麿衣が付いてくれる。その間、大地の神殿をしっかり守るんだぞ、凪」
「はい!」
凪が返事をすると、巫子と狼神様はここで一先ず解散となった。
そして風神・依咲那様、雷神・朔怜様、大地神・麿衣様と、巫子である秦羽、朱邑、そして僕は、大神殿から飛び立ち地上界へと降りていく。
「飛ばされないように、力尽くで耐えろよ!!」
朔怜様が叫ぶと、ものすごい勢いで神界から天界を突き抜けるように落ちていく。
もうスピードが早すぎて落ちているのか浮いているのか分からないほどだ。
「キャッホーーー!!」
こんな高速で落ちているのに、秦羽も朱邑も楽しそうだ。
両手を上げて風を全身で受けてる。
そんな二人をもっと楽しませようと、依咲那様も朔怜様も一回転したり、より高速で落下したりしている。
もう何回か一緒に巡礼しているみたいだから、慣れているのかも知れない。
…………でも、僕は……僕は……!!!
「ギャァァァアアアアア!!!!!」
あまりの恐怖にひたすら悲鳴を轟かせた。
尻尾も何もかもが緊張と恐怖で硬直している。
狼神様が、少しでも僕達を元気付けようとしてくれているのだろう。
麿衣様にしっかりと抱えられているから安心だとは分かっているが、それでこの高速落下が楽しめるとは限らない。
麿衣様は至って安全第一で落下してくれているのが少し……ほんの少しだけ心が救われる。
(僕はあんな飛び方されれば意識を失ってしまう……)
「さあ、もうすぐ見えてくるぜ!! 地上界が!!」
朔怜様が叫んだ。
今、狼神様達がどんな話し合いをしているかは分からない。
重い気持ちのまま時間だけが過ぎていく。
「如月ー!!」
外から僕を呼ぶ声が聞こえた。この声は……。
「朱邑!?」
急いで外に飛び出すと、朱邑と月詠、秦羽だった。
「月詠を迎えに行ってたんだ」
「狼神様は?」
「今、神殿で集まってる」
三人も居間へと案内した。
「地上界のことなら、麿衣様がよく知ってるだろうけど。その麿衣様が石を探すのは難しいって言ってたんだ」
後から来た三人もあからさまに不安そうな表情を見せた。
「じゃあ、輝惺様と亜玖瑠様は……」
嫌な予感が漂う。
それを遮るように言い放った。
「狼神様は死んだりしないよ!! そのために今みんなが集まっているんだもの!!」
「如月……。うん、そうね! 如月の言う通りだわ」
僕の後に蘭恋も続く。
「ああ、その通りだ」
いきなり居間の襖が開いた。
「朔怜様に、依咲那様!!」
「直ぐに地上界へ出発するぞ」
二人の狼神様の言葉に、全員の表情が明るくなった。
「「はいっ!!」」
朔怜様と依咲那様に仕えている朱邑と秦羽が元気に返事をする。
「おい、如月! お前もだ」
朔怜様が大きな声でいきなり話しかけてきた。
「僕も……ですか?」
突然名前を呼ばれて戸惑った。それでも咲怜様と依咲那様は堂々とした笑顔を崩さない。
「行きたくないのかい?」
「依咲那様、そりゃ行きたいですが……。僕も行っても良いのでしょうか?」
「今、亜玖瑠の中にいる輝惺に仕える巫子は君だ。君が一番輝惺に合うと思う石を選ぶのだ」
そんな大事な役目を僕が担うのか……。でも、やりたい! 輝惺様のために……。
「ご一緒させてください!!」
「さあ、急げ。如月には麿衣が付いてくれる。その間、大地の神殿をしっかり守るんだぞ、凪」
「はい!」
凪が返事をすると、巫子と狼神様はここで一先ず解散となった。
そして風神・依咲那様、雷神・朔怜様、大地神・麿衣様と、巫子である秦羽、朱邑、そして僕は、大神殿から飛び立ち地上界へと降りていく。
「飛ばされないように、力尽くで耐えろよ!!」
朔怜様が叫ぶと、ものすごい勢いで神界から天界を突き抜けるように落ちていく。
もうスピードが早すぎて落ちているのか浮いているのか分からないほどだ。
「キャッホーーー!!」
こんな高速で落ちているのに、秦羽も朱邑も楽しそうだ。
両手を上げて風を全身で受けてる。
そんな二人をもっと楽しませようと、依咲那様も朔怜様も一回転したり、より高速で落下したりしている。
もう何回か一緒に巡礼しているみたいだから、慣れているのかも知れない。
…………でも、僕は……僕は……!!!
「ギャァァァアアアアア!!!!!」
あまりの恐怖にひたすら悲鳴を轟かせた。
尻尾も何もかもが緊張と恐怖で硬直している。
狼神様が、少しでも僕達を元気付けようとしてくれているのだろう。
麿衣様にしっかりと抱えられているから安心だとは分かっているが、それでこの高速落下が楽しめるとは限らない。
麿衣様は至って安全第一で落下してくれているのが少し……ほんの少しだけ心が救われる。
(僕はあんな飛び方されれば意識を失ってしまう……)
「さあ、もうすぐ見えてくるぜ!! 地上界が!!」
朔怜様が叫んだ。
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