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本編
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ようやく残りの八乙女である、蘭恋、須凰、秦羽も大神殿へ来ると、輝惺様から聞いた話を聞かせた。
「そんな信じられない事態になってるなんて……」
蘭恋はビックリしすぎて顔色を失っている。
「地上界へ行って石を取れたとして、俺たちで勾玉なんて作れるのか?」
秦羽も不安のほうが大きい様子だ。
「でも、やるしかないんだ!! 他の狼神様にも協力してもらうしか、二人を助ける方法はない!」
「とにかく狼神様に伝えよう」
朝拝を終えると、それぞれの神殿へと急いで向かう。
帰って直ぐ、輝惺様にみんなに伝えた旨を話しておいた。輝惺様は力無く頷いた。
闇の神の神殿の掃除をしていると、風神・依咲那様、雷神・朔怜様が飛んできた。
秦羽と朱邑の話を聞いて一目散に来てくれたのだろう。
「依咲那様! 朔怜様!」
突然の訪問に背筋と尻尾がシャキっとなる。
「輝惺はいるか?」
「はい! 神殿におられるかと……」
「後の狼神もすぐに到着するだろう」
「か、かしこまりました!」
それだけ言うと二人は神殿へと颯爽と歩いて行った。
僕はあまりの迫力に、案内さえ忘れてしまった。
ホウキを持ったまま固まっていると、火の神・煬源様と蘭恋が一緒に来た。
「他の狼神は着いているか?」
「依咲那様と朔怜様がさっき神殿へ入られました!」
「承知した」
煬源様もそれだけ言葉を交わすと、すぐに神殿へ入って行った。
「蘭恋!」
煬源様を見送ると、蘭恋の元に走り寄った。
「もうすぐ、天袮様と麿衣様も到着するハズよ。みんな直ぐに動いてくれるなんて、凄いわよね」
「そうなんだ……。じゃあ、もう安心だね!」
手を取り合って喜びを分かち合う。
そんなことをしていると、天袮様と麿衣様も到着し、直ぐに神殿へと向かった。
「須凰! 凪!」
しかし二人の表情は険しかった。
「どうしたの?」
「うん。地上界の石のことを伝えたんだけどね。それが……その……難しいっていうか……」
凪が言葉を濁す。
「凪、どうせ言わないといけないんだ。なかなか無いらしい。狼神様の勾玉が作れるような大きさの石を探し出すのは難しいって」
「そんな……」
しかも狼神様はそれぞれが違う種類の勾玉を持っている。
一種類だけ見つかても意味はない。
「麿衣様も、直ぐに地上界へ行くとは言ってくれてる。でもそんな都合よく見つかるかどうか……」
狼神様が動けば難なく解決できるのかと思っていた。
確かに狼神様達の持っている勾玉は削る前の石を想像するとカナリ大きいだろう。
「……亜玖瑠様は?」
凪が尋ねる。月詠も来ていない。
「きっと亜玖瑠様が動ける状態じゃないんだ……」
「亜玖瑠様の状態ってそんなに悪いのか?」
「多分……。月詠の話を聞く限り、僕達の想像よりは悪そうだよ」
須凰も黙り込んでしまった。
「狼神様達の話し合いが終わるまでは、どうしようもないわね」
僕達がいくらここで談義したところで何にもならない。
「ここでいても仕方ないし、中に入ろうか」
全員が釈然としないまま、室内へと移動した。
「そんな信じられない事態になってるなんて……」
蘭恋はビックリしすぎて顔色を失っている。
「地上界へ行って石を取れたとして、俺たちで勾玉なんて作れるのか?」
秦羽も不安のほうが大きい様子だ。
「でも、やるしかないんだ!! 他の狼神様にも協力してもらうしか、二人を助ける方法はない!」
「とにかく狼神様に伝えよう」
朝拝を終えると、それぞれの神殿へと急いで向かう。
帰って直ぐ、輝惺様にみんなに伝えた旨を話しておいた。輝惺様は力無く頷いた。
闇の神の神殿の掃除をしていると、風神・依咲那様、雷神・朔怜様が飛んできた。
秦羽と朱邑の話を聞いて一目散に来てくれたのだろう。
「依咲那様! 朔怜様!」
突然の訪問に背筋と尻尾がシャキっとなる。
「輝惺はいるか?」
「はい! 神殿におられるかと……」
「後の狼神もすぐに到着するだろう」
「か、かしこまりました!」
それだけ言うと二人は神殿へと颯爽と歩いて行った。
僕はあまりの迫力に、案内さえ忘れてしまった。
ホウキを持ったまま固まっていると、火の神・煬源様と蘭恋が一緒に来た。
「他の狼神は着いているか?」
「依咲那様と朔怜様がさっき神殿へ入られました!」
「承知した」
煬源様もそれだけ言葉を交わすと、すぐに神殿へ入って行った。
「蘭恋!」
煬源様を見送ると、蘭恋の元に走り寄った。
「もうすぐ、天袮様と麿衣様も到着するハズよ。みんな直ぐに動いてくれるなんて、凄いわよね」
「そうなんだ……。じゃあ、もう安心だね!」
手を取り合って喜びを分かち合う。
そんなことをしていると、天袮様と麿衣様も到着し、直ぐに神殿へと向かった。
「須凰! 凪!」
しかし二人の表情は険しかった。
「どうしたの?」
「うん。地上界の石のことを伝えたんだけどね。それが……その……難しいっていうか……」
凪が言葉を濁す。
「凪、どうせ言わないといけないんだ。なかなか無いらしい。狼神様の勾玉が作れるような大きさの石を探し出すのは難しいって」
「そんな……」
しかも狼神様はそれぞれが違う種類の勾玉を持っている。
一種類だけ見つかても意味はない。
「麿衣様も、直ぐに地上界へ行くとは言ってくれてる。でもそんな都合よく見つかるかどうか……」
狼神様が動けば難なく解決できるのかと思っていた。
確かに狼神様達の持っている勾玉は削る前の石を想像するとカナリ大きいだろう。
「……亜玖瑠様は?」
凪が尋ねる。月詠も来ていない。
「きっと亜玖瑠様が動ける状態じゃないんだ……」
「亜玖瑠様の状態ってそんなに悪いのか?」
「多分……。月詠の話を聞く限り、僕達の想像よりは悪そうだよ」
須凰も黙り込んでしまった。
「狼神様達の話し合いが終わるまでは、どうしようもないわね」
僕達がいくらここで談義したところで何にもならない。
「ここでいても仕方ないし、中に入ろうか」
全員が釈然としないまま、室内へと移動した。
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