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本編

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 月詠つくよみの話によれば、光の神の神殿で、輝惺きせい様に入っている亜玖瑠あくる様は常に機嫌が悪いらしく、とても話かけられる雰囲気じゃないらしい。

「機嫌が悪いんじゃなくて、苦しんでいるのかもしれないよ」

 と月詠に言った。

 月詠は思わずコチラを見た。

「……そうだったのか……。言われてみれば苦しんでいたようにも捉えられる」

 思い返してみれば、そんな風でもあったらしい。

「闇の神は光が苦手で、光の神は闇が苦手だ。よりもよって、一番入れ替わってはいけない二人が入れ替わってしまったんだ」

「なるほど……。光の神の神殿は常に光輝いていて、ボクでも眩しいほどなんだ。それを亜玖瑠様が浴びれば……」

「このままでは輝惺様も亜玖瑠様も滅びてしまうかもしれない」

 僕の言葉に月詠は驚いた表情になった。

「神が滅びるだって!?」

 そんなわけない、とでも言いたそうだが、実際神も永久に生き続けるはずはない。

 僕たち獣人よりも寿命がずっと長いというだけだ。

 だからこうして【運命の番】を探しているのだから……。

「神様が滅びるなんて、絶対にあっちゃいけないよ!」

 月詠と手を握り合い、決意を固める。

「僕たちで助けよう!!」

 そう約束を交わし、それぞれの神殿へと帰っていった。


 亜玖瑠様の中に入った輝惺様は落ち着いた様子であった。

 神殿で祓詞を唱えている。

 僕は邪魔しないように掃除に取り掛かる。

 祓詞を唱える声はきっと亜玖瑠様の声だろうが、迫力のある力強い声であった。

 黄泉の国には悪い奴が沢山いるから、このくらい迫力がないと駄目だろうと思う。

(僕なんかが行っても邪魔でしかないだろうなぁ……)

 なんて冷静に考えれば分かる。

 それに、きっと亜玖瑠様じゃないと抑えられないほどの邪気なのだろう。

 それを僕は連れて行ってくれないなんていじけて……。

「うううう!!! ムキュッ! 反省、反省!」

 掃き掃除をしながら、境内を走り回った。

 猛烈に走り回っていると、あろうことが亜玖瑠様にぶつかてしまった。

 「ブフッ!」

 僕がぶつかってもビクともしない。やってしまった……。

 尻尾が逆立って倍くらいの太さになった。

「はわわ! 申し訳ございません!!」

 慌てて謝罪すると、怒るどころか頭を撫でてくれてこっちが驚いた。

「元気があって良いな」

 あ、輝惺様だ……。

 亜玖瑠様の中で微笑む輝惺様が見えた気がした。

「貸し給え。君は朝食の準備を頼む」

「は、はひっ!」

 箒を輝惺様に手渡すと、急いで厨房へと向かった。

(わーーわーー笑った……。亜玖瑠様の見た目でも、やはり輝惺様の雰囲気って出るものなんだな)

 なんだか胸がいっぱいになってしまった。

 これは僕に心を開いてくれていると言ってもいいだろう。

 この後は、元の体に戻れる解決策を聞かなければならない。

 お粥を混ぜながら、かすかな胸の高鳴りを感じていた。
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