【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎

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本編

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 神界へ来ても、毎日八乙女とは顔を合わせる。

 ここに来て既に数日が過ぎていた。

「おはよう!! 如月きさら!! 昨日は眠れたかい?」

「ムム……おはよう、秦羽しんば。実はあまり眠れてないんだ」

 大神殿まで飛んできた鳥獣人の秦羽と、その後からやって来た狐獣人の須凰すおうと挨拶を交わす。

「風神様はどう?」

「ああ、ここに来た次の日から色んなところに連れて行ってくれてるよ! 依咲那いざな様が、色んな世界を見た方がいいって言ってさ」

 ウキウキしながら秦羽が返す。

「じゃあ、雷神様に仕えてる朱邑あけさとも一緒に?」

「ああ、そうだぜ!」

 丁度、犬獣人の朱邑の話題になったときに大神殿に到着した。

 雷神様の神殿では、神界に来た日から夜はずっと宴をしているとも言っていた。

「須凰の所はどうなんだ?」

 朱邑が訪ねる。

「それがさ、聞いてよ!! 俺、いきなり地上界を見に行ったんだ!! なんでも水神の祭があるとかで!」

「ええ!! それはすごい!! 地上界なんて想像がつかないよ」

 須凰は意気揚々と話し始めた。地上界は緑豊かで、人々には耳も尻尾も付いていなかったと教えてくれた。

「耳も尻尾もないなんて……どうやってバランスを保っているんだろうね!?」

 人族の話題にみんなも興味津々だ。

 人族とは、とても不思議な生き物だと思った。向こうには我々の姿は見えていないとも言っていた。

「ごく稀に俺たちの姿が見える人族もいるって、天袮あまね様が言っていたけどな。神様は基本的には隠れているものなんだって」

 それからしばらく地上界の話で盛り上がる。

 須凰は見てきた光景を色々と聞かせてくれた。

 その次に大神殿に来たのは兎獣人の蘭恋らんれん

「蘭恋は、火の神様はどう? 優しい?」

「うーん、物静かではあるけど、怒ったりはしないわよ。罪人を処罰する立場だから、毎日夕刻にみそぎを手伝ってるんだけど、それは大変かな」

 でもやりがいは感じているわ。と続けた。

 煬源ようげん様も怖いわけではなさそうだ。見た目の迫力を言えば、雷神・朔怜ざれい様と火の神・煬源様はダントツなんだけどな。

(亜玖留様がある意味一番怖いかもしれない……)


 羊獣人の凪は今日は朝拝には出られないと言っていた。

 これまでも仲の良い七人だったけど、こっちに来てから更に仲が深まったように思う。

 大体は朝拝で集まった時に各神殿での暮らしを話しているが、みんなそれぞれに楽しそうだ。

 ただ僕と月詠つくよみを除いては……。

 光の神、輝惺きせい様に仕えた月詠は幸せなのかと思っていたが、どうやらそうではなさそうだ。

「月詠は輝惺様のところで仕えているのに、どうしてそんなに落ち込んでいるの?」

 他の八乙女からも心配の声が上がる。

「それが……噂に聞いていた輝惺様とは全く違っていたんだ」

 元々真っ赤な目が潤んでいる。

「それはどんなふうに?」

「なんか……輝惺様、直ぐに怒るし、僕が来てこの数日は誰の願いも叶えていない」

「えっ? そんな!!」

 確かにそれは変だ。輝惺様は『どんな願いでも叶えてくれる』神様なのだから。
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