【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎

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本編

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 ここは倭の国……の天界。神々が生息している世界……。

 この世界は一番下に地上界がある。ここには様々な人族が生活をしている。そしてβの獣人神様が各地を守っており、そこへ巫子となったΩの獣人が仕える。

 その上に天界。ここにはΩの獣人達が住んでいる。

 天界にある巫覡ふげき学校には、様々な獣人族のΩが通い、巫子になるために日々励んでいる。因みに天界には男しか存在していない。

 そして更なる上に存在しているのが神界……。そこには【銀狼七柱大神ぎんろうしちばしらたいしんα】と呼ばれる、最も位の高い七人の神様が存在している。

 光の神【輝惺きせい様】
 闇の神【亜玖瑠あくる様】
 水神【天袮あまね様】
 風神【依咲那いざな様】
 雷神【炸怜ざれい様】
 火の神【煬源ようげん様】
 大地神【麿衣まえ様】

 詳しくはまた追々説明するとして……。

 巫覡学校で【八乙女やおとめ】の称号を貰った者だけが、これらの神様に仕えることができるのだ。

 そして、今年それに選ばれたのは七人。

 兎獣人の蘭恋らんれん
 狐獣人の須凰すおう
 鼠獣人の月詠つくよみ
 犬獣人の朱邑あけさと
 鳥獣人の秦羽しんば
 羊獣人のなぎ

 そして僕、リス獣人の如月きさら

 神界に行くのが夢だった。八乙女を貰えた時はあまりにも驚きすぎて、庭中を走り回ったものだ。

 卒業と共に僕たちはいよいよ神界へと旅立つ。

 そのための儀式である【神楽かぐら】もバッチリ覚えた。

 今日は誰がどの神に仕えるのかが発表される、ドッキドキの日なのである。



「おはよう、如月。いよいよ今日ね」
「おはよう、蘭恋。発表まで落ち着かないね」
「はぁ……。闇の神、亜玖瑠様だけは嫌だな……」
「月詠、ワガママはいけないよ!」
「須凰みたいに、誰もが器用に立ち回れるわけじゃなわけじゃないよ……はぁ……」

 みんなそれぞれに仕えたい神様がいるようだ。

 朝拝の後すぐに発表がある。

 秦羽、凪、朱邑とも合流し、本殿へと向かう。

 一列に並んで正座をする。その前に馬獣人の先生が立ち、一礼すると早速発表が始まった。

「えー、只今より銀狼七柱大神α様の担当巫子を読み上げます」

 緊張の時間。全員が息を止めて先生に耳を傾けた。

「如月、光の神【輝惺様】。蘭恋、火の神【煬源様】、須凰、水神【天袮様】……」

 それぞれの担当の神様の名前が読み上げられる。

(僕が光の神だーー!! ムキューッ!!)

 声を押し殺して歓喜した。

 憧れの光の神、輝惺様……。

 輝惺様に仕えられるなんて……!!

(ムキューーッッ!!!)

 走り出したい衝動を抑えるのに苦労した。

 あとのみんなは、朱邑が雷神【炸怜様】、秦羽は風神【依咲那様】、凪は大地神【麿衣様】。

 そして……月詠が闇の神【亜玖瑠様】に決まった。

「おい、聞いたか? 俺、雷神様だぜ!! ワクワクしてきた!!」
 発表の後、さっそく朱邑が走りよる。

 それに続いて秦羽もきた。
「俺も俺も!! 風神様だ! 風神様と雷神様は対で行動されるって言ってたし、俺と朱邑も一緒に行動できるかもな」

「私は火の神だったわ……。少し怖いけど大丈夫かしら」

 それぞれ思い思いの気持ちを話し合う。

 僕はそんなみんなの周りを喜びを分かち合うように走り回っていた。

「如月が相当喜んでいるのは一目瞭然だねぇ」
 凪が朗らかな笑顔を見せる。

 月詠だけは一日ずっと泣いていた。よりにもよって、一番行きたくない亜玖瑠様に決まったのだ。

 みんなも月詠に気を使うものの……もう決まってしまったものは仕方ない。

「ボク、巫子として働ける自信ないよ」

「月詠! 大丈夫。闇の神って言っても怖いとは限らない。想像で判断するのは良くないよ」

「如月……」

「心配しなくても、僕達は神界でも毎日会えるんだから!」

 月詠の背中を撫でる。本当に怖いんだ。全身が小刻みに震えている。

 闇の神の噂を聞いたことがある。とても横暴で恐ろしいそうだ。

 気の弱い月詠だから、余計に怯えているのも無理はない。

「ねえ、如月……ボクと代わってよ……」

 泣きながら訴えられた。 
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