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無常

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 亮はフィリオンの挿入を期待していた。
 しかし手淫や口淫で何度も果て、快楽は続くが肝心のアルファの精だけを我慢させられている状態が続いている。
 体力はもう限界に近かった。

 それとも、しがない従者に自分の精を与えるほどの価値はないとでも考えているのか。そうだとすると、悲しいし、少し悔しい。

「挿れては、くださらないのですか?」
 意地悪く言ってみる。
 フィリオンの表情が若干歪んだ気がした。まるで言えない何かを隠しているかのように受け取れた。

 他人に言えない何かがあっても変ではない。
 相手は王太子という身分でもある。
 亮のような平民には到底解決できない悩みの一つや二つ、いやそれ以上あるのも当たり前だろう。

 これ以上は追求してはいけないような気がして、フィリオンに抱きついた。
「あの……殿下、今夜はありがとうございました。おかげで、ヒートも治りました」
 性行の終わりを告げた。

 フィリオンの中心はズボンの中で苦しそうなほど怒張している。
 それでも行動に起こさないということは、オメガのフェロモンに当てられても抱けない理由があるのだろう。
 もしくは、亮にそれほどの魅力を感じていないのかもしれない。

 しかし亮にとっても充分すぎるほどの経験となった。
 満足といえば満足と言える。

 体力は消耗したが、病気が原因で疲労が生じた時とは違うような気がする。
 体はスッキリとして、よく眠れそうだと思った。

 セレシアが準備してくれていたタオルで体を拭き、夜着を着ようと思った。
 その時、フィリオンは亮の手を掴んだ。

「まだ、夜は終わらない」
「しかし……殿下は……」
 不意に目が合うと、月光に照らされたフィリオンの眸が悲しそうに光って見え、黙ってしまう。

「少し、話をしても良いか」
「勿論です」
 フィリオンはシーツで亮を包み、抱きしめたまま話し始めた。

「この世界へ召喚された時、ルディフェルから説明を聞いたと思う。三ヶ月以内に番を見つけ出すと」
「間違いありません。確かにルシフェルさんは、そのように仰っていました。それが、どうかしましたか?」
「なぜ三ヶ月なのか、理由を聞いているか?」
「そこまでは、言っていませんでした。三月の間に発情期に入ったものから順番に殿下と対面してもらうとだけ聞いています」
「その三ヶ月には、意味がある。今まで何度か真実の番候補を召喚してもらったが、全員がそうではなかった。今回は、私にとって最後のチャンスなのだ」

 フィリオンは亮の肩に額を乗せ、少しの間言うのを躊躇っていた。
 その後、長く息を吐いた後、意を決したように言った。

「私は、呪われているのだ」
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