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隔離
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「早く、早く、助けて……」
セレシアが声を振るわせ、棒立ちになっている騎士に縋る。
「リョウさんを助けてあげてください!!」
悲痛な叫びに、ようやく騎士たちが動いた。
フィリオンではなく、亮を引き離せばいいと気付いたようだった。
亮に馬乗りになっているフィリオンから奪うのは容易いことではないが、従者を襲ったなど知られれば、王太子の威厳を失ってしまう。
その点、従者なら多少ぞんざいに扱ってもいいという判断に至ったようだ。
獣のように亮に喰らいつくフィリオンは、警戒心が強く、神経を鋭敏に尖らせており、周りの人が僅かにも動けば牙を剥く。
「申し訳ございません」繰り返し言いながら、騎士はフィリオンに立ち向かい突き飛ばされながら、殴られながらも、何とか亮を引き摺り出すのに成功した。
「オラ! ちゃんと管理しておけ!! このことは必ず報告するからな」
居合わせた従者に亮を投げつけ、別の騎士が暴れるフェリオンに抑制剤を飲ませた。
亮は直ちに隔離部屋へと運ばれる。
意識を失っていた。
ベッドに寝かせると従者たちは「後のことは任せる」とセレシアに言い渡し、仕事へと戻っていった。
「亮さん、薬、飲めますか?」
返事が返ってこないと分かっていても、絶えず声をかけ続けてくれた。
「早く抑制剤を飲まなきゃいけないのに」
フィリオンは完全にラット状態には入っていた。
もう亮の匂いをしっかりとインプットしたはずだ。
そうなれば、運命は何度でも二人を引き合わせるだろう。
「あぁ、このまま意識が戻らなければどうすればいいの……アレクシオン様に、どこまでならお話ししても良いのでしょう」
とても一人では妙案は生まれない。誰かに相談せずにはいられない。しかし、亮は訳アリの異世界人だ。フィリオンも絡んでいるのもあり、アレクシオンが番相手とは言え自分のエゴで話していい内容でもない。
セレシアは固く絞ったタオルで亮の顔を拭く。
乾いた涎の痕がびっしりと付いていて、拭き取るのに苦労した。
さっきまでフィリオンにしっかりとしがみ付き、されるがままを受け入れていた亮の寝顔を見詰める。
フィリオンが自分のものだと見せつけるように口付けていたのを思い出していた。
セレシアも運命の番がいる。でも正直、その瞬間のことは何一つ覚えていないのだ。
アルファがラット状態に入れば、オメガはそのフェロモンの強さに気を失う場合がある。
運命の番なら尚更アルファのフェロモンには抗えない。
はだけた衣類を整え、シーツをかけてくれる。
ベッド横のソファーに座ると、セレシアは亮の手を握りしめた。
セレシアが声を振るわせ、棒立ちになっている騎士に縋る。
「リョウさんを助けてあげてください!!」
悲痛な叫びに、ようやく騎士たちが動いた。
フィリオンではなく、亮を引き離せばいいと気付いたようだった。
亮に馬乗りになっているフィリオンから奪うのは容易いことではないが、従者を襲ったなど知られれば、王太子の威厳を失ってしまう。
その点、従者なら多少ぞんざいに扱ってもいいという判断に至ったようだ。
獣のように亮に喰らいつくフィリオンは、警戒心が強く、神経を鋭敏に尖らせており、周りの人が僅かにも動けば牙を剥く。
「申し訳ございません」繰り返し言いながら、騎士はフィリオンに立ち向かい突き飛ばされながら、殴られながらも、何とか亮を引き摺り出すのに成功した。
「オラ! ちゃんと管理しておけ!! このことは必ず報告するからな」
居合わせた従者に亮を投げつけ、別の騎士が暴れるフェリオンに抑制剤を飲ませた。
亮は直ちに隔離部屋へと運ばれる。
意識を失っていた。
ベッドに寝かせると従者たちは「後のことは任せる」とセレシアに言い渡し、仕事へと戻っていった。
「亮さん、薬、飲めますか?」
返事が返ってこないと分かっていても、絶えず声をかけ続けてくれた。
「早く抑制剤を飲まなきゃいけないのに」
フィリオンは完全にラット状態には入っていた。
もう亮の匂いをしっかりとインプットしたはずだ。
そうなれば、運命は何度でも二人を引き合わせるだろう。
「あぁ、このまま意識が戻らなければどうすればいいの……アレクシオン様に、どこまでならお話ししても良いのでしょう」
とても一人では妙案は生まれない。誰かに相談せずにはいられない。しかし、亮は訳アリの異世界人だ。フィリオンも絡んでいるのもあり、アレクシオンが番相手とは言え自分のエゴで話していい内容でもない。
セレシアは固く絞ったタオルで亮の顔を拭く。
乾いた涎の痕がびっしりと付いていて、拭き取るのに苦労した。
さっきまでフィリオンにしっかりとしがみ付き、されるがままを受け入れていた亮の寝顔を見詰める。
フィリオンが自分のものだと見せつけるように口付けていたのを思い出していた。
セレシアも運命の番がいる。でも正直、その瞬間のことは何一つ覚えていないのだ。
アルファがラット状態に入れば、オメガはそのフェロモンの強さに気を失う場合がある。
運命の番なら尚更アルファのフェロモンには抗えない。
はだけた衣類を整え、シーツをかけてくれる。
ベッド横のソファーに座ると、セレシアは亮の手を握りしめた。
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