【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

エデンの今後

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「今日はやっと休めるんですね」
 今朝は珍しくカマルの方が起きるのが遅かった。
 昼近くまで寝ていたことに自分で驚いていたが、月亜は「仕方ないですよ」と返す。

「今までが休まなすぎでした。しっかり眠ってくれて、俺は安心です」
「早く起きてルアの寝顔を眺めていたかったのに……」
「そんなの、眺めなくていいでしょう!!」
 冗談を言う余裕はあることに、月亜は内心ホッとした。

「ランチにはまだ早いですが、どうします? 何か召し上がります?」
「ルア、こっちへ……」

 カマルの表情がいきなり変わった。
(この顔はドキドキするんだよね……)
 なんて思いながらも、起きたばかりのカマルの隣へ腰を下ろす。
 カマルが腰に腕を回して引き寄せた。

「数ヶ月分のルアが足りてない」
「俺もです。もっとカマルさんが欲しいです」
「今が夜ならいいのに」
「それだと、今はカマルさんには休んでほしくなりますけどね」

 少しの間、何も喋らず抱きしめ合っていた。
 この時間が何よりの至福だ。
 月亜もあまり触れ合えなくて寂しかったが、カマルの性格を考えれば、きっと月亜よりも耐えていただろう。

「昨夜言っていた話をしてもいいか?」
「もしかして……エデンの件ですか?」
「そうだ」

 月亜は急に緊張してきた。
 カマルを信じている。
 きっと良い報告だと……。
 一度、座り直してカマルと向き合いになる。
 カマルはラフに効いてくれればいいと言ったが、月亜としてはそうはいかない。
 大切なエデンの将来がかかっているのだ。

「結論から言うと……エデンはこれからも我が家で過ごすこととなった」
「本当ですか??」
「ああ、そうだ。一時は養子として……という案も出たが、それは保留にしておいた」
「それはなぜです?」
「エデンはまだ五歳だ。まだ自分の意志がはっきり決まった訳でなはい。もっと大きくなった時に、エデン自身がどうしたいのかを、選ばせてあげてはどうか……と提案したんだ」
「……なるほど」

 カマルの言っていることはよく分かる。
 しかしそれでは、現状エデンはどうなるのだ?

「せめてバース性を診断されるまでは、ナタンの子でいさせてやるのも良いと思った。ナタンは急に何もかもを失ったからな。子育てをする自信すら無くしてしまっているから、オーディン家で育ててもらえるのは有難いと言っていた。しかし今、親権まで手放しては後悔するのでは? と思ったのだ」
「でも、それでは将来やはり引き取りたいと言ってくるのでは? そうなっても、俺はエデンを渡せませんよ!」
「それも大丈夫だろう」

 ナタンはハワードの必死の働きかけで、別の国の公爵家に行くことになったと言った。
「人脈を駆使して、ナタンを必要としていくれる環境を探していた。そうしたら、娘がオメガと診断された公爵家があると、情報が入ってきた。それでその公爵家と話し合いを重ね、ナタンをそこの娘さんと婚約させることとなったのだ」
「す……すごい……」

 月亜は唖然としていたが、カマルは続けて言う。

「……ルアは、シオンとエデンが本当に兄弟になるのが良いと思うかい?」
「はい、俺はそう思いますけど……。カマルさんは違うのですか?」
「あの二人……、もしかすると将来の『運命の番』かもしれないだろう?」
 
 ようやく分かった。
「カマルさんは、あの二人を将来結婚させたいんですね?」
「なんだかそのような未来が見える気がしてな」

 カマルの思考が月亜の何倍も上だと思った。
 月亜は正直、二人をそんな目で見たことはなかった。

 要するに、二人が番うかどうかが分かってから、場合によってはエデンをシオンの義兄にすればいいと言っているのだ。
 全く、飛んだ発想をするものだと、ただただ感心した。
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