【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

悲しみの余韻

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 ハワードは一週間帰って来なかった。

 デュセロア王国で、故・ダリエ国王様の宰相と共にフュネラル葬式の準備に当たっていたそうだ。
 ハワードがデュセロアに行った次の日には、ベネットも追いかけるように向かった辺り、もうナタンには何の権限も無さそうだと思った。

 ハワードが一時帰国した時、やはりナタンは魂が抜けたように、自室に横たわっていたと言った。

「やっと、ここから心を入れ替えて、王位継承に向けて歩み出そうと話し合った矢先だったそうだ……」
 宰相からその時の様子を伺ったが、ナタンの現状があまりにも酷く、あれではフュネラルにも出席できないのでは? と、宰相は困り果てている。

「悲しいのは誰だってそうだ。実の父親が亡くなり、孤独に押し潰されそうな気持ちも分かる。しかし……」
 ハワードは大きなため息を漏らした。
 長年ダリエ国王様に仕えていた宰相だって、悲しみに浸りたいのをなんとか鼓舞して動いているのだ。

 それを、これからデュセロア王国のトップに立つナタンがあんな状態でどうする……。と、頭を抱えていた。

「私に手助けできることがあれば、何なりと」
 カマルが横から口を挟んだ。

「カマル、ちょっと二人きりで話がしたい。まだ、内内で出た事で、決定したわけではない。ただ、今後こういう展開になる可能性があるとだけ、心得ていて欲しい」

 カマルは、ハワードが何を言うのか検討もつかない様子だったが、ハワードに従い書斎へと入ると、一時間程出て来なかった。

 ミッチェルと目を合わせた月亜は、エデンの事だろうか? とめくばせをする。

 二人がどんな話をしているのかは分からないが、カマルはフュネラルまではデュセロア王国に行く機会は無さそうだった。
 
 カマルとの話が終わると、今度はエデンを呼び、再びハワードの書斎に入っていった。

 ハワードが帰るまでは……と、誰もエデンに真実を話していなかったため、エデンはようやくダリエ国王様が亡くなったと知る。

 エデンは、自分の祖父が亡くなったのがどう言うことなのか、まだ理解はしきれていない様子だったと言う。
『もう会えなくなった』『お話も出来ないし、動けない』と、説明したそうだ。

「ダリエはね、星になったんだよ。今夜、シオンたちと一緒に星を見るといい。そのどれかがダリエだ」
「はい」

 エデンは複雑な心境であった。
 ハワードの様子から、きっと悲しい知らせなのだと理解した。
 ただ、人が亡くなるというのはあまりにも馴染みがないため、どのくらい悲しいのかが解らない。

(ジィジが星になったから、今夜は王妃様に頼んで星を見に外に出させてもらおう)
 それだけは忘れずにしようと、ハワードの書斎を出た。

 ハワードは一際エデンのフォローを、しっかり頼むと言って、再びデュセロア王国へと出発した。


 
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