【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
89 / 104
続編 カマルとルアの子育て編

逞しい侍女達に学ぶ

しおりを挟む
 帰ってきた月亜達は三人とも泥だらけだった。これにはハワード達も大笑い。
「一緒に行けなかったのが残念だ!」なんて嘆いている。

「らい君がなかなか捕まらなくて!」
 結局、最後は猫神に助けを求めた。月亜は早くにそうすれば良かったとも思ったが、シオンとエデンがあんなにも笑い転げる姿をもっと見ていたい気持ちが勝った。

 その結果がこれである。
 
「とても楽しかったのが、一目で分かりますわ」
 ミッチェルまでもが笑いを隠せていない。

「たのしかったねー、エデン!」
「うん!! いっぱい走ったね!」
 二人の言動はどんどん似てきたように思う。それほど気が合うのだろう。

「じゃあ今から、らい君も一緒に湯浴みに行こうか!」
「まみぃと、いっしょー?」
「そうだよ」
「やったぁぁーーー!」

 泥だらけの服のまま、シオンと“らい君”を抱えたエデンは走って行ってしまった。

「あちゃー……これは掃除が大変だ……」
「王妃様、大丈夫です。掃除の腕がなりますわ!!」

 どこからともなく現れた侍女が腕捲りをした。カマルが子供のころはもっとヤンチャだったそうで、この所やり甲斐を求めていたと言う。

 今は亡きモリスと二人で悪さをして、城中汚していたそうだ。

「今のカマルさんからは、全く想像できませんね」
「ルア、今のは忘れてくれて構わない」

 バツ悪そうなカマルを見るのは珍しい。長年、オーディン城に仕えている侍女だからこそ知っている情報だ。

「また、子供の頃のカマルさんの話を聞かせてくださいね」
 なんて言うと、「語り尽くせないほどありまふよ」と含み笑いを浮かべた。

 ここの侍女達にとってはカマルも我が子同然なのだ。それをハワード達も咎めたりしない。

 それが、この城内が明るく過ごしやすい要因だろう。

「さあ、ルアさんも湯浴みをして着替えてらっしゃい」

 ミッチェルに促され、月も泥だらけのまま移動した。

「まみぃ! おそいーー」
 先に走って行った二人は既に別の侍女達の手により、全身泡だらけになっている。

「シオン様もエデン様も、らい君よりもこもこですわ!」
「ほんとうだーー!!」
「ほら、ご覧下さい! こうやって泡を頭に乗せて……っと。はい! らい君のお耳とお揃いですわ!」

 手鏡を渡すと、二人の頭には、泡で出来た丸い耳が乗っかっていた。

「きゃーーーーー!!!!!!」

 頭を突き抜けるほどの歓声に、月亜は後退りをしてしまった。

(何故か目がチカチカする……)
 
 それにも動じない侍女達は凄い。もうシオンとエデンを心を鷲掴みだ。

「流石ですねぇ」
「何がです?」
「俺よりずっと子供の扱いが上手い」
「えっ! やだ! そんな……」

 月亜の一言にこんなにも照れるとは……。
 心から二人と戯れるのを楽しんでいるのだろう。

 月亜は感心してしまう。
 自分は考えすぎだ。
 カマルに言われた一言が、良く理解できた。

 自分も、この人達のように無心で遊ぶ時間を増やそうと思った。

「王妃様のりゅう、きれい」

 フッとエデンが月亜の紋に目を向けた。
 そう言えば、これを見るのは初めてだったか。

「ありがとう! 嬉しい。俺も気に入ってるんだ!」
「だっどのりゅう、もっとおおきいよ」
「そうなの?」
「後で見せてもらうといいよ」
「はい!」

 失敗の後の立て直し……。侍女から学んだ気がする。
 
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

もし、運命の番になれたのなら。

天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(‪α‬)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。 まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。 水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。 そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

溺愛アルファの完璧なる巣作り

夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です) ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。 抱き上げて、すぐに気づいた。 これは僕のオメガだ、と。 ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。 やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。 こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定) ※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。 話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。 クラウス×エミールのスピンオフあります。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

ベータですが、運命の番だと迫られています

モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。 運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。 執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか? ベータがオメガになることはありません。 “運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり ※ムーンライトノベルズでも投稿しております

処理中です...