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続編 カマルとルアの子育て編
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ナタンとの再会は、やはりまだ早すぎたようだ。エデンは翌朝まで眠り続け、起きた途端、月亜の所へやってきた。
「王妃様……」
「どうしたの?」
エデンは月亜の指先をキュッと握り締め、「頑張れなくてごめんなさい」と謝った。
「エデン君……」
月亜は言葉を失い、エデンを抱きしめた。どんな言葉なら、この子を癒やしてあげられるのだろうか。
しばらく二人とも何も喋らないでいた。
今は何を言っても真実ではないように思える。
エデンは頑張っていた。でもそれは、周りに気を遣っているデュセロア王国の時のエデンの姿なのだ。本当なら、ナタンにはオーディン城で過ごしている本当のエデンを見てほしい。
しかしその反面、やはり月亜はどうしてもエデンをシオンの義兄に招く夢を膨らませていた。
自分の前世の両親も、愛情が歪んでいた。特にバース性が診断されてからは、自分への対応が明らかに変わった。
月亜自身が両親への愛情が無かったため、本当の親よりも、エデンがここにいたいと言えば、その気持ちを汲んであげてもいいのではないか……。
というのが正直な意見であった。
それに、ナタンにはどうもオメガを下に見る癖がある。あれだけカマルから言われても、考え方というのは早々変えられるもんじゃない。
万が一、エデンがオメガだったら……。
ナタンはどうするのだろう。
まだ先の話ではあるが、その頃にダリエ家とオーディン家がどれほどの付き合いがあるとも分からない。
オーディン家なら、バース性など関係なく生活できる。
(ああ、ダメだ。これは俺の願望でしかない)
気分を変えた方がいいと考え直した。
「エデン君、森へ散歩に行かない? らい君と、シオンも一緒に」
「え……?」
「ね? 今日は、楽しいこといっぱいしよう!」
「でも僕……」
「俺ね、昨日嬉しかったんだよ。エデンくんがずっと手を離さないでいてくれたから。ありがとう、エデン君」
「王妃様……」
「だから、今日は俺がいっぱいエデン君を楽しませないと!!」
エデンにガッツポーズをして見せた。
これが正解なのかは分からない。でももしエデンが昨日のことを忘れたいなら、何も考えずに済むようにしてあげたい。ほんの一時でも……。
「僕、いつも楽しいです」
「今日はもっともーーーっとなんだよ!! シオンとらい君呼んできてくれる?」
「すぐに行くのですか?」
「もちろん! 今すぐ出発だ!」
エデンの顔に笑顔が戻った。シオンを呼びに走り去る姿を背後から見守り少しホッとしていた。
「さすがはルアだね」
「あっ、カマルさん」
「あっという間に笑顔になった」
「見てらしたのですか?」
「私が出て行くよりいいかと思ってね。ナタンとは改めて話をしに行こうと思っている」
デュセロア王国の視察も兼ねて……と、近日中に出向くようであった。
きっと、カマルなりにナタンの心配もしているのだろう。
父親同士のことはカマルに任せようと思った。自分の出る幕ではない。
「振り出しに戻ったわけではない。あまり気にしすぎるのもいけないよ、ルア」
「ありがとうございます」
「エデンはルアに一番心を開いている。それはルアがいつも自然体でいてくれるからだ。それを忘れちゃいけない」
それだけ伝えると、カマルはまた公務へと戻っていった。
エデンに元気を与えようとしていた時に、自分がカマルから元気をもらうなんて……。
まだ自分がしてあげられることはあるように思う。
顔がニヤけて仕方ないのをどうにか誤魔化しつつ、エデンとシオンの元へと向かった。
「王妃様……」
「どうしたの?」
エデンは月亜の指先をキュッと握り締め、「頑張れなくてごめんなさい」と謝った。
「エデン君……」
月亜は言葉を失い、エデンを抱きしめた。どんな言葉なら、この子を癒やしてあげられるのだろうか。
しばらく二人とも何も喋らないでいた。
今は何を言っても真実ではないように思える。
エデンは頑張っていた。でもそれは、周りに気を遣っているデュセロア王国の時のエデンの姿なのだ。本当なら、ナタンにはオーディン城で過ごしている本当のエデンを見てほしい。
しかしその反面、やはり月亜はどうしてもエデンをシオンの義兄に招く夢を膨らませていた。
自分の前世の両親も、愛情が歪んでいた。特にバース性が診断されてからは、自分への対応が明らかに変わった。
月亜自身が両親への愛情が無かったため、本当の親よりも、エデンがここにいたいと言えば、その気持ちを汲んであげてもいいのではないか……。
というのが正直な意見であった。
それに、ナタンにはどうもオメガを下に見る癖がある。あれだけカマルから言われても、考え方というのは早々変えられるもんじゃない。
万が一、エデンがオメガだったら……。
ナタンはどうするのだろう。
まだ先の話ではあるが、その頃にダリエ家とオーディン家がどれほどの付き合いがあるとも分からない。
オーディン家なら、バース性など関係なく生活できる。
(ああ、ダメだ。これは俺の願望でしかない)
気分を変えた方がいいと考え直した。
「エデン君、森へ散歩に行かない? らい君と、シオンも一緒に」
「え……?」
「ね? 今日は、楽しいこといっぱいしよう!」
「でも僕……」
「俺ね、昨日嬉しかったんだよ。エデンくんがずっと手を離さないでいてくれたから。ありがとう、エデン君」
「王妃様……」
「だから、今日は俺がいっぱいエデン君を楽しませないと!!」
エデンにガッツポーズをして見せた。
これが正解なのかは分からない。でももしエデンが昨日のことを忘れたいなら、何も考えずに済むようにしてあげたい。ほんの一時でも……。
「僕、いつも楽しいです」
「今日はもっともーーーっとなんだよ!! シオンとらい君呼んできてくれる?」
「すぐに行くのですか?」
「もちろん! 今すぐ出発だ!」
エデンの顔に笑顔が戻った。シオンを呼びに走り去る姿を背後から見守り少しホッとしていた。
「さすがはルアだね」
「あっ、カマルさん」
「あっという間に笑顔になった」
「見てらしたのですか?」
「私が出て行くよりいいかと思ってね。ナタンとは改めて話をしに行こうと思っている」
デュセロア王国の視察も兼ねて……と、近日中に出向くようであった。
きっと、カマルなりにナタンの心配もしているのだろう。
父親同士のことはカマルに任せようと思った。自分の出る幕ではない。
「振り出しに戻ったわけではない。あまり気にしすぎるのもいけないよ、ルア」
「ありがとうございます」
「エデンはルアに一番心を開いている。それはルアがいつも自然体でいてくれるからだ。それを忘れちゃいけない」
それだけ伝えると、カマルはまた公務へと戻っていった。
エデンに元気を与えようとしていた時に、自分がカマルから元気をもらうなんて……。
まだ自分がしてあげられることはあるように思う。
顔がニヤけて仕方ないのをどうにか誤魔化しつつ、エデンとシオンの元へと向かった。
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