85 / 104
続編 カマルとルアの子育て編
揺れる心情
しおりを挟む
エデンがすっかりオーディン家に馴染んできた。
半月も過ぎた頃には、一人で城内を歩く姿も見られるようになってきて、ハワードやカマルも喜んでいる。
そんな中、デュセロア王国からナタンとダリエ国王様が面会に来ると、連絡が入った。
そろそろ父にも会いたいだろうとも思っていたが、エデンの様子は月亜の想像とは違っていた。
「会いたくない?」
こっそりと聞くと、エデンは静かに頷いた。
「会わないとだめですか?」
まだ、心の傷は癒えてはいないようだ。シャツの裾を握り締めて怯えるエデンを見たのは、久しぶりだった。
しかしナタンとて、前から変わってない訳ではないだろう。
もし実際会ってみれば、またナタンと一緒に過ごしたいと思うかもしれない。
「俺が一緒にいても?」
「王妃様が、いてくれるのですか?」
「うん。俺は構わないよ。それで、どうしてもエデンくんが嫌だって思ったなら一緒に退室しよう」
月亜からの提案に、ようやく頷いてくれたエデンであった。
カマルにはエデンの様子を伝えておこうと思った。
エデンをシオンの元に行かせると、月亜はカマルの元へと急いだ。
「……そうか。幼少期にトラウマを抱えてしまったのだ。無理もない」
「そうですね……。もし、無理そうならすぐに退室させてもいいですか?」
「構わない。むしろ、そうしてやってくれ。エデンの心が一番大切だ。しかし、ナタンの成長ぶりも少しは見せておかないとな」
「それは分かっています。今日面会に来るからと言って、今日連れて帰るわけでもないんでしょう?」
もし、ナタンがその気でいるならば、月亜は反対する気でいた。
今、ようやく精神的に落ち着いてきたエデンだが、安定しているわけではない。
むしろこのまま良くなるか、また落ち込んでしまうか、今が一番大切な時期のように感じている。
正直なところ、もう少し先に面会をずらして欲しいと月亜は思った。
しかしアチラ側にも都合というものがあるので、それは仕方のないことだ。
なるべくエデンをサポートしてあげようと思った月亜だった。
エデンが面会の間、シオンは家庭教師に任せておいた。
それならば、どうにか一人でも過ごせるだろう。
エデンがオーディン城に馴染むよりも、シオンからのエデン愛は深い。
前までならすぐに月亜を求めていたのに、今ではエデンさえいれば万事解決なのだ。
「大事なお客様がくるからね」
と言い聞かせると、驚くほど素直に頷いた。
エデンと過ごしたこの半月で、シオンが驚くほどに成長している。
これがエデンの影響以外、何も検討がつかない。
(やっぱり、兄弟っていいな……)
月亜はしみじみと考えた。
「月亜、そろそろお見えになるから、エデンを連れてきてもらえるかい?」
「はい、承知しました!」
「大丈夫だ。きっとうまく行くよ。誰もエデンを傷つけたりしない」
カマルの言葉に励まされ、月亜は笑顔で「はい」と返事をした。
エデンに絶対手を離さないから、安心していいよ。と言うと、「頑張ります」と返ってきた。
エデンにとっては頑張ることなのか……。
月亜は少し複雑な気持ちになった。
半月も過ぎた頃には、一人で城内を歩く姿も見られるようになってきて、ハワードやカマルも喜んでいる。
そんな中、デュセロア王国からナタンとダリエ国王様が面会に来ると、連絡が入った。
そろそろ父にも会いたいだろうとも思っていたが、エデンの様子は月亜の想像とは違っていた。
「会いたくない?」
こっそりと聞くと、エデンは静かに頷いた。
「会わないとだめですか?」
まだ、心の傷は癒えてはいないようだ。シャツの裾を握り締めて怯えるエデンを見たのは、久しぶりだった。
しかしナタンとて、前から変わってない訳ではないだろう。
もし実際会ってみれば、またナタンと一緒に過ごしたいと思うかもしれない。
「俺が一緒にいても?」
「王妃様が、いてくれるのですか?」
「うん。俺は構わないよ。それで、どうしてもエデンくんが嫌だって思ったなら一緒に退室しよう」
月亜からの提案に、ようやく頷いてくれたエデンであった。
カマルにはエデンの様子を伝えておこうと思った。
エデンをシオンの元に行かせると、月亜はカマルの元へと急いだ。
「……そうか。幼少期にトラウマを抱えてしまったのだ。無理もない」
「そうですね……。もし、無理そうならすぐに退室させてもいいですか?」
「構わない。むしろ、そうしてやってくれ。エデンの心が一番大切だ。しかし、ナタンの成長ぶりも少しは見せておかないとな」
「それは分かっています。今日面会に来るからと言って、今日連れて帰るわけでもないんでしょう?」
もし、ナタンがその気でいるならば、月亜は反対する気でいた。
今、ようやく精神的に落ち着いてきたエデンだが、安定しているわけではない。
むしろこのまま良くなるか、また落ち込んでしまうか、今が一番大切な時期のように感じている。
正直なところ、もう少し先に面会をずらして欲しいと月亜は思った。
しかしアチラ側にも都合というものがあるので、それは仕方のないことだ。
なるべくエデンをサポートしてあげようと思った月亜だった。
エデンが面会の間、シオンは家庭教師に任せておいた。
それならば、どうにか一人でも過ごせるだろう。
エデンがオーディン城に馴染むよりも、シオンからのエデン愛は深い。
前までならすぐに月亜を求めていたのに、今ではエデンさえいれば万事解決なのだ。
「大事なお客様がくるからね」
と言い聞かせると、驚くほど素直に頷いた。
エデンと過ごしたこの半月で、シオンが驚くほどに成長している。
これがエデンの影響以外、何も検討がつかない。
(やっぱり、兄弟っていいな……)
月亜はしみじみと考えた。
「月亜、そろそろお見えになるから、エデンを連れてきてもらえるかい?」
「はい、承知しました!」
「大丈夫だ。きっとうまく行くよ。誰もエデンを傷つけたりしない」
カマルの言葉に励まされ、月亜は笑顔で「はい」と返事をした。
エデンに絶対手を離さないから、安心していいよ。と言うと、「頑張ります」と返ってきた。
エデンにとっては頑張ることなのか……。
月亜は少し複雑な気持ちになった。
11
お気に入りに追加
1,249
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる