【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

揺れる心情

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 エデンがすっかりオーディン家に馴染んできた。
 半月も過ぎた頃には、一人で城内を歩く姿も見られるようになってきて、ハワードやカマルも喜んでいる。

 そんな中、デュセロア王国からナタンとダリエ国王様が面会に来ると、連絡が入った。

 そろそろ父にも会いたいだろうとも思っていたが、エデンの様子は月亜の想像とは違っていた。
「会いたくない?」
 こっそりと聞くと、エデンは静かに頷いた。
「会わないとだめですか?」
 まだ、心の傷は癒えてはいないようだ。シャツの裾を握り締めて怯えるエデンを見たのは、久しぶりだった。

 しかしナタンとて、前から変わってない訳ではないだろう。
 もし実際会ってみれば、またナタンと一緒に過ごしたいと思うかもしれない。
「俺が一緒にいても?」
「王妃様が、いてくれるのですか?」
「うん。俺は構わないよ。それで、どうしてもエデンくんが嫌だって思ったなら一緒に退室しよう」
 月亜からの提案に、ようやく頷いてくれたエデンであった。

 カマルにはエデンの様子を伝えておこうと思った。
 エデンをシオンの元に行かせると、月亜はカマルの元へと急いだ。

「……そうか。幼少期にトラウマを抱えてしまったのだ。無理もない」
「そうですね……。もし、無理そうならすぐに退室させてもいいですか?」
「構わない。むしろ、そうしてやってくれ。エデンの心が一番大切だ。しかし、ナタンの成長ぶりも少しは見せておかないとな」
「それは分かっています。今日面会に来るからと言って、今日連れて帰るわけでもないんでしょう?」
 もし、ナタンがその気でいるならば、月亜は反対する気でいた。
 今、ようやく精神的に落ち着いてきたエデンだが、安定しているわけではない。
 むしろこのまま良くなるか、また落ち込んでしまうか、今が一番大切な時期のように感じている。
 正直なところ、もう少し先に面会をずらして欲しいと月亜は思った。

 しかしアチラ側にも都合というものがあるので、それは仕方のないことだ。
 なるべくエデンをサポートしてあげようと思った月亜だった。

 エデンが面会の間、シオンは家庭教師に任せておいた。
 それならば、どうにか一人でも過ごせるだろう。
 エデンがオーディン城に馴染むよりも、シオンからのエデン愛は深い。
 前までならすぐに月亜を求めていたのに、今ではエデンさえいれば万事解決なのだ。

「大事なお客様がくるからね」
 と言い聞かせると、驚くほど素直に頷いた。
 エデンと過ごしたこの半月で、シオンが驚くほどに成長している。
 これがエデンの影響以外、何も検討がつかない。

(やっぱり、兄弟っていいな……)
 月亜はしみじみと考えた。

「月亜、そろそろお見えになるから、エデンを連れてきてもらえるかい?」
「はい、承知しました!」
「大丈夫だ。きっとうまく行くよ。誰もエデンを傷つけたりしない」
 カマルの言葉に励まされ、月亜は笑顔で「はい」と返事をした。

 エデンに絶対手を離さないから、安心していいよ。と言うと、「頑張ります」と返ってきた。

 エデンにとっては頑張ることなのか……。
 月亜は少し複雑な気持ちになった。

 
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