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続編 カマルとルアの子育て編
家族じゃなくても。
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「ルア、こちらへ……」
カマルがルアの手を引き寄せる。
月亜は二人が何を話していたのか知らなかったが、エデンが走り去ったことに驚いた。
「何かあったのですか?」
カマルは微笑ましく見送り、エデンが完全にカマルの書斎から離れたのを確認してから口を開いた。
「ルア、シオンのことはエデンに任せて少し話をさせてくれ」
「それはいいですけど……。エデンを書斎に呼び出すなんて、どうしたのです?」
「ああ。この一週間、エデンを見ていて感じたことはあるか?」
カマルは急に真剣な顔つきになって月亜に尋ねた。
「すごく、大人しいと思いました。違和感を感じるくらい……。そう、例えばどんなにシオンが驚かせても、絶対に大きな声なんて出さないですし、歩く時も、足音が全くと言っていいほど無いんです。まるで、自分の存在を消しているかのように……」
「そうだね。私もそれが気になっていたんだ。初めは気を遣っているのかと思っていた。でもあれは違う。ダリエ城で培った彼の技と言っていいだろう」
「なぜ、気配を消すような技術を……」
カマルはダリエ国王様や、ナタン、獅から聞いた内容を月亜に伝えた。
エデンは誰にも自分の本音を喋れずにいた。それを言うと、大人を困らせると思っていたから……。
「エデンは自分がケンカの原因にならないように、配慮していたのだと思うのだ」
「そんな……自分の家なのに……」
「あの子は子供とは思えないほど察しがいい。それだけ大人の顔色を観察している」
「それで、話をしに彼をここに?」
カマルは「そうだ」と言った。
「エデンにオーディン家のみんなを『家族だと思え』なんて言っても、多分心を開いてはくれないだろうと思ったんだ。だから彼にちょっとした役割を与えてみた」
「それは、どんな?」
カマルは「それは私とエデンだけの秘密にしたのだ」と笑った。
「そんなのズルイです。俺にも教えてください」
「私はエデンと仲間になったからな。それはルアにも教えられない」
「じゃあ俺もエデンの仲間になって、何か秘密を作ります!」
「まあ、そう不貞腐れるな。もう少しエデンの様子を見よう」
「そうですね。なんか……笑っててもどこか寂しそうで心配になります」
月亜はやはりディセロア王国に帰りたいだろうか……と呟いたが、そうではないとカマルが言った。
「ディセロア王国で、ずっと寂しい想いをしていたんだ。ここでは沢山名前を呼んであげようじゃないか」
月亜がカマルの言葉に頷くと、カマルは月亜の腰に腕を回す。
「せっかくエデンが気を利かせてくれたんだ。もう少し二人きりでいてもいいかな?」
エデンがどんな気を使ったのか月亜には分からなかったが、公務中にキスをしてもらえるなんて、今日は何だかいい日だと思う月亜だった。
カマルがルアの手を引き寄せる。
月亜は二人が何を話していたのか知らなかったが、エデンが走り去ったことに驚いた。
「何かあったのですか?」
カマルは微笑ましく見送り、エデンが完全にカマルの書斎から離れたのを確認してから口を開いた。
「ルア、シオンのことはエデンに任せて少し話をさせてくれ」
「それはいいですけど……。エデンを書斎に呼び出すなんて、どうしたのです?」
「ああ。この一週間、エデンを見ていて感じたことはあるか?」
カマルは急に真剣な顔つきになって月亜に尋ねた。
「すごく、大人しいと思いました。違和感を感じるくらい……。そう、例えばどんなにシオンが驚かせても、絶対に大きな声なんて出さないですし、歩く時も、足音が全くと言っていいほど無いんです。まるで、自分の存在を消しているかのように……」
「そうだね。私もそれが気になっていたんだ。初めは気を遣っているのかと思っていた。でもあれは違う。ダリエ城で培った彼の技と言っていいだろう」
「なぜ、気配を消すような技術を……」
カマルはダリエ国王様や、ナタン、獅から聞いた内容を月亜に伝えた。
エデンは誰にも自分の本音を喋れずにいた。それを言うと、大人を困らせると思っていたから……。
「エデンは自分がケンカの原因にならないように、配慮していたのだと思うのだ」
「そんな……自分の家なのに……」
「あの子は子供とは思えないほど察しがいい。それだけ大人の顔色を観察している」
「それで、話をしに彼をここに?」
カマルは「そうだ」と言った。
「エデンにオーディン家のみんなを『家族だと思え』なんて言っても、多分心を開いてはくれないだろうと思ったんだ。だから彼にちょっとした役割を与えてみた」
「それは、どんな?」
カマルは「それは私とエデンだけの秘密にしたのだ」と笑った。
「そんなのズルイです。俺にも教えてください」
「私はエデンと仲間になったからな。それはルアにも教えられない」
「じゃあ俺もエデンの仲間になって、何か秘密を作ります!」
「まあ、そう不貞腐れるな。もう少しエデンの様子を見よう」
「そうですね。なんか……笑っててもどこか寂しそうで心配になります」
月亜はやはりディセロア王国に帰りたいだろうか……と呟いたが、そうではないとカマルが言った。
「ディセロア王国で、ずっと寂しい想いをしていたんだ。ここでは沢山名前を呼んであげようじゃないか」
月亜がカマルの言葉に頷くと、カマルは月亜の腰に腕を回す。
「せっかくエデンが気を利かせてくれたんだ。もう少し二人きりでいてもいいかな?」
エデンがどんな気を使ったのか月亜には分からなかったが、公務中にキスをしてもらえるなんて、今日は何だかいい日だと思う月亜だった。
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