76 / 104
続編 カマルとルアの子育て編
召喚獣の悲劇
しおりを挟む
プラテネス城でのナタンとカマルの一件で、ナタンはルシーと話し合おうと決意した。
このままでは自分もエデンもいつか壊れてしまう。
それに、父である国王もルシーの本性に気づいていた。
そりゃそうだ。子供が真実を一切口外しないなんてあるはずがない。
ダリエ国王様は陰ながらにエデンを支えてくれていた。
ルシーは国王様が自分ではなくエデンばかりを可愛がるのも気に入らなかった。
優秀なのは自分だ。
ここで一番強いのも自分だ。それならば、もっと重宝されてもいいのではないか。
承認欲求を最大限に貯めていたタイミングだった。ナタンが「もう喧嘩をしたくない、和解したい」と話しかけてきたのが。
ルシーも初めは脅しのつもりで、獅を召喚させた。
それでナタンが謝ればすぐに止めたのかもしれない。
しかしいつもなら震え上がって自分に屈するナタンが「こんなことは何の意味もない」と、止めるよう命令してきたのだ。
怒りを抑えるどころか、逆上したルシーは獅にナタンを襲わせた。
そこへダリエ国王様が割り入った。
思わず仲裁に入ったのは、陰でエデンが見ていたからだ。
ダリエ国王様はナタンにエデンを連れてこの場から離れるよう促した。
もし獅に襲われでもすれば大変だ。
ルシーの熱が冷めるまでは父に任せようと、エデンの安全を優先させたナタンは、獅が入って来れないような場所を探して隠れた。
その間に、ダリエ国王様とルシーの間で話し合いが持たれたが、国王様の前で本性を剥き出しにしたルシーに、もう弁明の余地も残ってはいない。
「ナタンなんかより、私を女王にしろ」
その意見を却下した時、獅に国王様でさえも襲わせた。
ダリエ国王様は自分の獣を召喚しなかった。
召喚獣を戦わせても意味はないと知っていたから。
そして、それは獅も同じであった。
ルシーに「国王を噛み殺せ」と命令された時、そんな指示を聞くわけにはいかないと、軽い怪我だけで済ませた。
それがよりルシーの怒りを買った。
ルシーは何度も獅に国王様を襲わせ、ついにダリエ国王様は深い傷を負ってしまう。
ルシーは声高々に笑い飛ばしたが、獅は戸惑っていた。
主との信頼関係は無に等しい。
それでも自分の主はルシーだ。
自分の意見を聞き入れない国王様に見せつけつかのように、獅を街に放ち、崩壊させるよう命令された。
獅は自分の力をこんなことに使いたくなかった。
召喚獣は本来、助け合うため、より強くなって大切なものを守るために存在している。
だから、どの召喚獣も果敢に戦うのだ。
獅もそうでありたかった。
命令を聞けない召喚獣は主の体から追放されることもある。
ルシーがそれをするとは思えないが、これ以上街や人を襲いたくない獅は、主からの追放を夢見るようになっていった。
このままでは自分もエデンもいつか壊れてしまう。
それに、父である国王もルシーの本性に気づいていた。
そりゃそうだ。子供が真実を一切口外しないなんてあるはずがない。
ダリエ国王様は陰ながらにエデンを支えてくれていた。
ルシーは国王様が自分ではなくエデンばかりを可愛がるのも気に入らなかった。
優秀なのは自分だ。
ここで一番強いのも自分だ。それならば、もっと重宝されてもいいのではないか。
承認欲求を最大限に貯めていたタイミングだった。ナタンが「もう喧嘩をしたくない、和解したい」と話しかけてきたのが。
ルシーも初めは脅しのつもりで、獅を召喚させた。
それでナタンが謝ればすぐに止めたのかもしれない。
しかしいつもなら震え上がって自分に屈するナタンが「こんなことは何の意味もない」と、止めるよう命令してきたのだ。
怒りを抑えるどころか、逆上したルシーは獅にナタンを襲わせた。
そこへダリエ国王様が割り入った。
思わず仲裁に入ったのは、陰でエデンが見ていたからだ。
ダリエ国王様はナタンにエデンを連れてこの場から離れるよう促した。
もし獅に襲われでもすれば大変だ。
ルシーの熱が冷めるまでは父に任せようと、エデンの安全を優先させたナタンは、獅が入って来れないような場所を探して隠れた。
その間に、ダリエ国王様とルシーの間で話し合いが持たれたが、国王様の前で本性を剥き出しにしたルシーに、もう弁明の余地も残ってはいない。
「ナタンなんかより、私を女王にしろ」
その意見を却下した時、獅に国王様でさえも襲わせた。
ダリエ国王様は自分の獣を召喚しなかった。
召喚獣を戦わせても意味はないと知っていたから。
そして、それは獅も同じであった。
ルシーに「国王を噛み殺せ」と命令された時、そんな指示を聞くわけにはいかないと、軽い怪我だけで済ませた。
それがよりルシーの怒りを買った。
ルシーは何度も獅に国王様を襲わせ、ついにダリエ国王様は深い傷を負ってしまう。
ルシーは声高々に笑い飛ばしたが、獅は戸惑っていた。
主との信頼関係は無に等しい。
それでも自分の主はルシーだ。
自分の意見を聞き入れない国王様に見せつけつかのように、獅を街に放ち、崩壊させるよう命令された。
獅は自分の力をこんなことに使いたくなかった。
召喚獣は本来、助け合うため、より強くなって大切なものを守るために存在している。
だから、どの召喚獣も果敢に戦うのだ。
獅もそうでありたかった。
命令を聞けない召喚獣は主の体から追放されることもある。
ルシーがそれをするとは思えないが、これ以上街や人を襲いたくない獅は、主からの追放を夢見るようになっていった。
11
お気に入りに追加
1,249
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです


アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる