【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

荒れ果てた国

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 隣国が見えてくると、月亜とカマルは唖然とする。

 一体、さっきのハワードの話はいつのことだったのだろうか。
 ついさっき起こったように話していたが、召喚獣が暴れたのは、明らかに城だけにとどまっていない。

「カマルさん。これは一体……」
 上空から見下ろす街並みは、ひどく荒れていた。
「ここまでとは……」
 カマルも月亜の隣で言葉を失っている。
 妃殿下は気の強い人だとナタンが話してたが、これでは気が強いなんて言葉では治らない。
 本当に夫婦喧嘩でここまでに発展したのかさえ、疑わしい。

 街の様子を確認しながら城へと向かう。
「住人が一人も見えませんね」
「屋外がそれほど危険だったのだろう」
 確かに、これでは人が住んでいるのかも怪しまれる。

 遠くに見える城も、半壊しているのには驚いた。
 妃殿下には会いたくない。
 そう思ったのは、月亜だけではないだろう。

「ルア、君は街を巡回してくれ。城へは私一人で行く」
 カマルは想像以上の現状を目の当たりにし、もしものために月亜を城から遠ざけた。
 月亜はカマルに従うことにした。
 街の人たちも心配だったし、ここでついて行くとワガママを言っている場合ではないのは一目瞭然だ。

 カマルの龍は上昇し、月亜の龍は下降した。

「召喚獣があちこちに倒れている」
 戦いに敗れた獣が、至る所に見えた。
 瓦礫やガラス辺が散乱し、それに紛れて倒れた召喚獣たちが横たわっている。

「今、助けるからね」
 建物の上空を旋回し、龍の鱗から星を降らせた。
 キラキラと舞い散る光に気づいた住人が、少しずつ顔を覗かせる。
 空に舞う青龍の姿に感嘆の声を漏らし、次々に人が飛び出してきた。

 街が綺麗になっていく。
 まだ僅かにも呼吸を保っていた召喚獣も、息を吹き返した。

「でも、これだけの範囲を一人では、なかなかだ」
 プラテネスほど大きな国ではないとはいえ、広範囲に広がっている崩壊は、大きな龍でもなかなか一人では素早い復旧は困難な状況だ。

 カマルは大丈夫だろうか。
 妃殿下はまだ城にいるのだろうか。
 たった二人の喧嘩から、国が崩壊するまでに発展するなんて。
 月亜の想像の範囲を超えている。

 遠くにカマルの金龍が上昇するのが見えた。
 城の復旧に入ったらしい。

「ダリエ国王様は助かったのか……」

 カマルのほうが片付くまでに、なるべく多くの人と街を助けようと、今度は焼け爛れた森へと向かい飛び出した。
 そこで月亜は一匹の召喚獣を見つける。
 獅だ。
「まさか、妃殿下の?」
 妃殿下が近くにいるのか?
 辺りを見渡しても、それらしい人はいない。
 このままこの召喚獣を助けて大丈夫なのだろうか。
 再び暴れ始めれば、消し墨にするしかない。

 カマルならすぐに適切な判断を下すだろうが、月亜はこんな状況とは無縁の生活を送ってきた。
「どうするべきなんだ……」

 カマルの元に行く時間はない。答えは自分に委ねられていた……。
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