【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

シオンの欲しいもの

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 龍に乗って森の上空を散歩した後、猫神の所へと出向いた。
 カマルはこのところ公務が忙しく、いつも月亜とシオンだけで来ていたので久ぶりの再会である。

『久しぶりよの、カマル』
「ああ、お子が産まれたそうだな」
『そうだ、シオンに会わせてやると約束をしておったのだ。今から来るか?』
「いまから? いくぅーー!!」

 
 猫神と白猫の子供は、三匹共真っ白だった。
「ちっちゃーーい! かわいいねぇ!」
 シオンがしゃがんで見入っている。想像よりも小さかったらしく、触るのを戸惑っている様子を見せた。
 それを察した猫神が一匹を抱き上げ、そっとシオンの両掌に乗せた。
「わぁぁぁ!! ちっちゃーい!!」
 羽のようにふわふわの毛が柔らかく、小さな声で「みー」と鳴いている。
 シオンは子猫に釘付けになっていた。
「いち、にぃ、さん……ねこ、さんいるねぇ」
「三匹って数えるんだよ」
「さんびき。いいなぁ」
 何気に言ったシオンの言葉に大人たちが反応する。

『どうした、シオンも兄弟が欲しいのか?』
「きょうだいはナニ?」
『弟か、妹が欲しいか? ということだ』
「しおん、おにいちゃんがほしい!」

 満面の笑みで答えたが、『それはどうかのぅ。神の力でもできぬことはある』と猫神を困らせていた。
 きっと、ナタンの子供と遊んだのが楽しかったのだろう。
 シオンが学校に通うまでは、まだ数年を要する。
 学校に行けば兄のような存在も沢山いるだろうが……。

「じゃあ、おとうとがいい! リュウとトラとゾウさん、しょうかんする!」
 そう言うと、月亜の方を向いた。

「まみぃ、しおんのおとうと、できる?」
「で……!! 産まれるかどうかは……」
 神様じゃないと分からない……と誤魔化そうとして思いとどまった。
 それをいうと猫神に揶揄われるに違いない。
 どう答えるか迷っていると、カマルが隣から口を挟んだ。
「シオンは弟が欲しいのかい?」
「ほしいーー!!」
「そうか……。では今晩、まみぃとダッドで話し合っておこう」
「ほんとうに? いつ、おとうとできる?」
「それは、まだ先になるな。来年か……」

 月亜は真面目に答えるカマルを阻止するのに苦労した。
 これは今晩、離してもらえないかもしれない。
 
 うるうるの瞳で期待しているシオンの顔が忘れられない。
 確かに兄弟はいるに越したことはないだろう。月亜は一人っ子だったから、ずっと兄弟が欲しいと思っていた。
 それに、弟を亡くしているカマルも、シオンに兄弟を作ってあげたいと思っているに違いない。

「あした、おとうとできるかなー」
『そうだのう。パパとママの頑張りにもよるかのぅ』
 猫神がまた要らぬ発言をし始めたので、城に引き返した。
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