55 / 104
続編 カマルとルアの子育て編
シオンは強い!?
しおりを挟む
「うっ……。イタタ……」
月亜は昨日の行為で朝から全身が怠い。
起きあがろうとしても、腰がズンっと重く感じられる。
カマルと仲直りできたのは良かったが、元はといえば、あのナタンという男がいけないのだ。
冷静になって考えれば原因はナタンだと分かるのに、気が滅入っている時は判断が鈍る。
怒っているカマルは少し怖かった。
自分を大切に想ってくれるのは幸せなことだが、今後はカマルに誤解されるような行動は控えようと心に誓った。
カマルも、自分が不在の時にナタンと月亜を二人きりにしないよう、ハワードへ伝えておくと言ってくれた。
「ルアはゆっくり休むといい。今日は私がシオンと出かけてくるとしよう」
「ありがとうございます。パレードのコースを一度連れて行ってもらえませんか? 距離が長いから、練習も兼ねて」
「ああ、そうするとしよう」
本当は月亜も同行したいが、この体では無理だ。
シオンの三歳の誕生日にパレードを執り行なうと決めたのは、ハワードである。
どうしても国民に孫を自慢したいと、権力を最大限に活かすようだ。
実はシオンが生まれてから、毎年この時期になるとパレードをすると言っていた。
それはどうやら、隣国の国王であるダリエ様から感化されているようであった。
ナタンの子が生まれてから、隣国では毎年誕生日パレードをしている。
その話を毎年自慢されるのが悔しいのだろう。
しかし、月亜は目立つのが本当は苦手で、カマルは好きな人を囲いたくなるタイプ。
それでずっとパレードを反対していた。
一番の理由は、シオンの負担が大きいことだ。
パレードとなると、半日は馬車に乗り続けなければいけない。
動きたい盛りの子供に、半日もお行儀よく座っていろなんて可哀想だ。と家族中に反対されていた。
それが宰相であるべメットにまで諭されたものだから、ハワードも渋々了承していたのだった。
「ままーーー!!」
寝室で横になっていると、シオンが飛び込んできた。
悲劇は繰り返されるのか……。自然と腹に力が入る。
どうして子供というのは寝たい時に限って起こしにくるのだろう。
「なぁに? シオン。今日はダッドとお出かけでしょう?」
「ままも、いっしょにいく」
ベッドによじ登ると、腕にしがみ付いてきた。
「ままも一緒に行きたかったんだけどね。今日は体が痛いから寝てるね」
「いたい?」
ハッとした時には遅かった。
「なんで?」
最近のシオンは直ぐになんで? と聞いてくる。納得がいくまで聞いてくるのはいいが、そのうちこっちが答えられなくなるまで「なんで?」は続く。
今まさに「なんで?」のスイッチを押してしまったようだ。
「昨日ね、ちょっと動きすぎて」
「なんで? なにしたの? しおんもできる?」
「シオンは———まだできないなー」
「なんで? しおん、つよいよ!」
両手で力コブを作るポーズをとる。実際にはシオンも月亜に似て華奢だ。
でも毎日カマルやハワードの逞しい身体を見ているからか、自分もムキムキでかっこよくなりたいという想いが強いらしい。
こういう時は大体「かっこいいよ」と伝えると、上機嫌でハワードにも見せに行くのだが、今日は意地でも月亜と一緒にお出かけしたいようだ。
結局、カマルに無理やり連れて行ってもらったのだが、月亜の身体が痛い原因がどうやらカマルにあると、子供でも気づくような口ぶりだったので、月亜は内心ハラハラした。
シオンがそれほどカマルの言うことを聞いていないのが、今回ばかりは救いだった。
いつも通り、シオンはカマルに対して悪者をやっつけるような戦いごっこをしながら連れられて行った。
「くすくす……。あの二人、性格はまるで同じだな」
背中を見送りながら、二人にバレないようにコッソリ笑った。
月亜は昨日の行為で朝から全身が怠い。
起きあがろうとしても、腰がズンっと重く感じられる。
カマルと仲直りできたのは良かったが、元はといえば、あのナタンという男がいけないのだ。
冷静になって考えれば原因はナタンだと分かるのに、気が滅入っている時は判断が鈍る。
怒っているカマルは少し怖かった。
自分を大切に想ってくれるのは幸せなことだが、今後はカマルに誤解されるような行動は控えようと心に誓った。
カマルも、自分が不在の時にナタンと月亜を二人きりにしないよう、ハワードへ伝えておくと言ってくれた。
「ルアはゆっくり休むといい。今日は私がシオンと出かけてくるとしよう」
「ありがとうございます。パレードのコースを一度連れて行ってもらえませんか? 距離が長いから、練習も兼ねて」
「ああ、そうするとしよう」
本当は月亜も同行したいが、この体では無理だ。
シオンの三歳の誕生日にパレードを執り行なうと決めたのは、ハワードである。
どうしても国民に孫を自慢したいと、権力を最大限に活かすようだ。
実はシオンが生まれてから、毎年この時期になるとパレードをすると言っていた。
それはどうやら、隣国の国王であるダリエ様から感化されているようであった。
ナタンの子が生まれてから、隣国では毎年誕生日パレードをしている。
その話を毎年自慢されるのが悔しいのだろう。
しかし、月亜は目立つのが本当は苦手で、カマルは好きな人を囲いたくなるタイプ。
それでずっとパレードを反対していた。
一番の理由は、シオンの負担が大きいことだ。
パレードとなると、半日は馬車に乗り続けなければいけない。
動きたい盛りの子供に、半日もお行儀よく座っていろなんて可哀想だ。と家族中に反対されていた。
それが宰相であるべメットにまで諭されたものだから、ハワードも渋々了承していたのだった。
「ままーーー!!」
寝室で横になっていると、シオンが飛び込んできた。
悲劇は繰り返されるのか……。自然と腹に力が入る。
どうして子供というのは寝たい時に限って起こしにくるのだろう。
「なぁに? シオン。今日はダッドとお出かけでしょう?」
「ままも、いっしょにいく」
ベッドによじ登ると、腕にしがみ付いてきた。
「ままも一緒に行きたかったんだけどね。今日は体が痛いから寝てるね」
「いたい?」
ハッとした時には遅かった。
「なんで?」
最近のシオンは直ぐになんで? と聞いてくる。納得がいくまで聞いてくるのはいいが、そのうちこっちが答えられなくなるまで「なんで?」は続く。
今まさに「なんで?」のスイッチを押してしまったようだ。
「昨日ね、ちょっと動きすぎて」
「なんで? なにしたの? しおんもできる?」
「シオンは———まだできないなー」
「なんで? しおん、つよいよ!」
両手で力コブを作るポーズをとる。実際にはシオンも月亜に似て華奢だ。
でも毎日カマルやハワードの逞しい身体を見ているからか、自分もムキムキでかっこよくなりたいという想いが強いらしい。
こういう時は大体「かっこいいよ」と伝えると、上機嫌でハワードにも見せに行くのだが、今日は意地でも月亜と一緒にお出かけしたいようだ。
結局、カマルに無理やり連れて行ってもらったのだが、月亜の身体が痛い原因がどうやらカマルにあると、子供でも気づくような口ぶりだったので、月亜は内心ハラハラした。
シオンがそれほどカマルの言うことを聞いていないのが、今回ばかりは救いだった。
いつも通り、シオンはカマルに対して悪者をやっつけるような戦いごっこをしながら連れられて行った。
「くすくす……。あの二人、性格はまるで同じだな」
背中を見送りながら、二人にバレないようにコッソリ笑った。
11
お気に入りに追加
1,249
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる