【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
54 / 104
続編 カマルとルアの子育て編

攻めるカマル ★Rー18

しおりを挟む
 
 使い道が無くなったかに思われた悠のタオルだけど、 
 実はあれから大活躍している。 

  
 抜いた翌日に何気なくタオルを嗅いでみたら、全く匂いがしなかったのだ。 

『えっ、フェロモンって一晩で香りが飛ぶの?!』

 ってメチャクチャ焦っちゃったんだけど、さらに翌日、ダメ元で匂いを嗅いでみたら、かすかに香りが嗅ぎ取れたんだよな。
 あの時はまじで安心した。 
 もちろんβとして生きたいなら、このまま香りを感知出来ないほうがいいに決まっている。
 でも悠の匂い自体は好きなんだよなぁ。 
 Ωは嫌だけど、嗅ぎたくなるこの気持ちはどうしたらいいんだ?

 
  
 そんな感じでそこから検証を繰り返してみた結果、どうやら体調によって嗅覚に変化があるってことに気がついた。 
 はっきり分かっているのは、悠のフェロモンを取り入れた後に抜くと、Ω値がリセットされるというか、βとして安定するっぽい。
 とにかく悠のフェロモンに身体がまったく反応しなくなる、ってことだけは確かだ。 
 なんでこうなるのかは俺にもよく分かってねーけど、抜くと安定するんだからそういうものなんだろう。 
 抜かなくてもリセットされる時もあるから、ホルモンバランスも関係あったりすんのかな? 

 そういえば前回トイレで抜いた次の日に、近くに悠がいても柔軟剤の香りしか嗅ぎ取れなかった気がする。
 悠も俺からは汗の匂いしか感じとれなかったと言っていたし、多分この考察で間違いないと思う。 
 後は本当に日によってバラバラで、ある程度感じとれる日もあれば、ほとんど感じ取れない日もあったりするし。 
  

 そんな俺の最近の日課は、学校に行く前に悠のタオルの匂いを嗅ぐことからスタートしている。 
 匂いで自分の体調の変化も分かるので、今や俺の立派な健康バロメーター代わりと言ってもいい。 
 毎朝嗅いでいるせいか、最近だとテレビを見ている時やバイトから帰ってきた時にも、何となく匂いを嗅がないと落ち着かなくなってきた。
 癖みたいなものなんだろうけど、手元についつい引き寄せてしまう。 
 タオルに依存しすぎている自覚はあるけど、嗅いでると落ち着くんだから仕方ないじゃん。 
 もちろん匂いがしない日もあるけど、とりあえずあの優しい肌触りを感じたくなってしまうんだ。 
  
  
  
 そんな感じで大事に大事にタオルを使っていたのに。
 ───やられたっ! 
  


 その日バイトから帰ってきた俺はいつも通り、ベッドの上に置いてあるタオルに癒やされようと鼻を近づけて……固まった。 
 わなわなとした怒りが湧いてくる。

(……あいつぅううう!!) 
 
 湧き立つ怒りのまま自室のドアを力任せにバンっと開けると、そのまま居間でテレビを見ている姉ちゃんに詰め寄った。 
 
「姉ちゃんっ! 何で俺のタオルから、洗濯物の匂いがしてんだよ!」 
  
 洗剤の香りしなくなったタオルを、姉ちゃんに向けて突き出してやる。  


(朝に嗅いだ時はちゃんと香ってたのに…!!)


 俺がこんなに腹を立てているってのに、当の姉ちゃんはケロッとした顔をしている。
 お前、どんだけ罪深い事をしたのか分かってないだろっ! 
  
「そりゃそうでしょ。今日有給で休みだったから、朝のうちに洗濯したもん」 
「はぁっ!! 何でベッドの上に置いてたコレが洗濯されてんだよっ!」 
「何でって、あんた最近ちょこちょこテレビ見ながらそれ弄ってたじゃん。枕カバー洗うついでに、一緒に洗っといたの。いいかげん洗わないと汚いんだから、ちゃんと洗濯に出しなさいよね」 

 俺が悪いみたいに言ってんじゃねーよっ!!

「アホ──っ、汚いとか言うな!俺にとっては大事なものなんだぞっ」 
「何怒ってんのよ? 高そうなタオルだったし、心配しなくても傷まないようにちゃんとネットには入れといたけど?」 
「そういう事を言ってるんじゃねぇよっ!!」 
  
 アホッ、姉ちゃんのどアホーー!
 これを嗅がされた時の俺の気持ちなんて、姉ちゃんにはきっと一生理解なんて出来ねーんだっ。
 洗剤の香りに全部消されてしまった消失感ときたら……。
 そう、相棒を失った時はこんな気持になるのかと思うほどの、深い悲しみだったんだぞ!
  
 まさかこんなにも早く相棒を失う日が来るなるなんて、思わねーじゃん。 
 それくらい大事なモノだったっていうのに! 
 俺、明日からどう生きていけば良いのか、もう分かんねぇよっ。 
  
 タオルを握りしめたまま涙ぐむ俺の姿を、姉ちゃんがポカンとした顔で見上げてくるけど、お前なんかもう知らねぇ!

 
 しばらくは口も聞いてやんねぇからなっ!!
 





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

処理中です...