【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
50 / 104
続編 カマルとルアの子育て編

ハワードの友人の息子

しおりを挟む
 朝からとても緊張している。
 ハワードの友人が遊びに来ると言うのだ。どうやら、シオンと同年代の孫がいるらしく、孫の話で盛り上がった末、子供を会わせようと言う流れになったそうだ。

「なに、ルアは何もしなくていい。私と友人がただ孫同士を会わせたいだけなんだ。その間、シオンを連れて行くが構わないかい?」
「はい、シオンもお友達が出来れば喜ぶと思います」

 何もしなくていい、とは言われても挨拶もせず……とはいかないだろう。
 自分自身、そんなに人付き合いが得意ではないので、初対面の人は特に緊張する。

(どんな人なんだろう……。隣国の国王だと言っていたが、俺には無関係すぎて想像もできない)

 この世界に来てから、ほとんどオーディン城の中でしか生活をしていない。
 その上、国王としての仕事は全てカマルとハワードが熟している。
 俺はここにきて直ぐ妊娠が分かり、そのまま子育てをしているから、実はハワードやカマルの交友関係もよく知らないのだ。

 生憎、今日カマルは不在である。

 挨拶をして、すぐに部屋を出るべきだろうか? それとも……。
「あぁ!! 分からない!!」
(子供が産まれてから、こんなにもいろんな壁にぶつかるなんて!!)
 自分の不器用さが情けないと、落ち込むことの方が多いように感じる。
 
 子育ては楽しい。
 シオンは何も悪くない。落ち込んでいるのは自分の不甲斐なさだ。

 カマルや猫神のように堂々としていたいのに、何故それができない。

 自分よりも体の龍の方がずっと逞しいと思える。


 さらにピンチは続いた。
 ハワードの友人が、息子を連れてきたのだ。
 将来的には隣国の国王となる人だ。

 カマルがいれば、なんら問題ない。
 しかし不在なのだ。

 ハワードたちが孫を遊ばせている間、月亜はこのナタンという男性をもてなす運びになってしまった。

「ルア、緊張するような間柄じゃないから大丈夫だ。家族ぐるみの付き合いを私が生まれる前からしている。もはや家族のような人たちばかりなんだ。ナタンとは歳も近いし、直ぐに打ち解けられるだろう」

 ハワードは軽々しく言うが、初対面の人といきなり二人きりにされて楽しめるわけがない。

 どうせなら、猫神に会いに行こうか……などと思っていたが、それも叶わなかった。
 重苦しい空気にだけはしたくない。

「では、別室でお茶でも……」
 笑顔が引き攣っていないか不安になりつつも、いくつかある応接室の一室へと案内した。

 ナタンという男性は、口元は笑っているのだが、どうも目が笑っているように見えない。
 心の読み取れない感じが、余計に月亜の不安を煽っていた。

「紅茶は、お好きですか?」
 少し声が震えていたかもしれない。
 ナタンは逞しい体型に似合わない小さな声で「はい」と言った。

(こんな空気がいつまで続くのだろうか……)

 一度深呼吸がしたくて、召使いを探しに部屋をでた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...